来月4日~12日まで、9日間ほど事務所を空けて北欧の視察旅行に行って参ります。アールトとアスプルンドを巡る旅。仕事に穴を開けてしまうようで気が引けてもいるのですが、留守を守る優秀なスタッフがいるからきっと大丈夫でしょう、、。

私の場合、昔から”旅行は個人旅行に限る”ということで、ほとんど団体旅行には参加したことがないのですが、SADIでもお世話になっている吉村行雄さんが監修されていることや、顔見知りの知人が多く参加すること、また今回あまりに旅程が素晴らしかったこともあり、珍しくツアーに申し込むことにしました。

これで3年連続での北欧行き…。他に行くところないのかと呆れられそうですが、ごめんなさいありません。私にとって北欧は完全に”ホーム”なので、旅行というより里帰りに近いような気がします。現地の空気を吸い込むと、本当に帰ってきたーっという気分になるのです。

今回の渡航先は、過去留学中などにも訪れたことのある建築がほとんどなのですが、当時は貧弱なデジカメしか持っておらず、またフィルムのカメラはフィルムが勿体なくて今のようにバシバシ撮れず、いざという時に資料として使える写真がほとんどないという長年の問題がありました。

それと名建築というものは、文学作品と同じで「昔読んだことがある」というだけでなく、何度も何度も読み返すことで理解が深まり、それまで気づけなかった細部にまで注意を向けることができます。

20世紀を代表するアールトの傑作「マイレア邸」(下の写真)などは留学時代やそれ以前からも通算し、たぶん今回で10回目くらいかもしれません。あらためて「他に行くところないのかよ」と自分にツッコミを入れたくなりますが…。



今回のツアーは、団体が苦手な私の心すらも動かしたくらいで、申し込みが殺到し、今はキャンセル待ち状態なのだそうです。早く申し込んでおいて良かった。

今回の旅程に含まれているアスプルンドの「夏の家」は、見学ができるのは今回これが最後になるかもしれないそうです。アールトの国民年金会館も同様とのこと。他にも個人ではなかなか行けない場所にも行けそうです。

たぶん私も黙っていられないので、現地ではめちゃくちゃ細かいマニアックガイドをしてしまうかもしれません。嫌がられるかもしれないのでなるべく自分を抑えますが、同行する方でもっと説明が聞きたい方がいましたら、遠慮なく私に聞いて下さい。

他にも同行者にはSADIの塚田耕一先生(アスプルンドのスペシャリスト)などレジェンドクラスの方もいらっしゃいます。写真の撮り方は北欧のレジェンド写真家・吉村行雄さんが教えてくれます。北欧がはじめてという方にとっては今年はめちゃくちゃ贅沢で、過去最高のツアーになることは間違いないでしょう。

さて、私はそれまでに仕事を片付けなくちゃ!

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sekimoto

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フィンランド人の友人が日本人と結婚して、昨晩はそんなお祝いをしました。Antti&あきえさんおめでとう!彼がうちの遊びに来たのは2年前くらいでしょうか。今回は日本人の奥さんを連れて。

彼とは留学時代からの付き合いになります。フィンランド人は一見フレンドリーですが、シャイな国民性もありフィンランド人と日本人はそんなに簡単に友達になれません。向こうには1年はいましたが、今でもつながる友人は彼を含めてごくわずかです。

今でもこうして杯を重ねられるのは幸せなことです。
そして、毎日怒濤のイベントが通り過ぎてゆきます…。

「アルヴァ・アアルト展」がようやく9月からはじまります。国内数館を巡回予定です。皮切りは、まずは神奈川県立近代美術館・葉山より。

『アルヴァ・アアルト―もうひとつの自然』
会期:2018年9月15日~11月25日
会場:神奈川県立近代美術館・葉山
https://bijutsutecho.com/news/16283/

私はコーディネーター役の和田菜穂子さんらと共に、AALTO120メンバーとして約1年ほど前から、今年のアールト展につなげるための活動を続けて参りました。

昨年10月OZONEでの藤本壮介さん、12月のARTEK+IMA、2月の堀部安嗣さんをお招きしてのアールト関連講演シリーズは、すべてこの展覧会を成功させるためにありました。「最近アールトがアツいよね!」とお感じの方がいらっしゃいましたら、我々の活動も少しは功を奏したかもしれません。

多くのご苦労はほとんど和田さんが担っておられますので、私が言うべきことはありませんが、彼女をサポートしながら思うことは、アルヴァ・アールトという世界的建築家の国内巡回展といえども、実質的に中心となって動かしているのはごく数名の献身的な人たちであり、それらはほぼボランティアに近いものだということです。

しかしそれらの方々の、熱い思いや愛情によって世の中は動いているのだということも今回強く感じていることです。和田さんご苦労様です。最後まで走り抜けましょう!

まだ明らかにできませんが、9月のオープニングセミナーには、意外なあの人にもご登壇頂く予定です。皆さん、あっと驚くと思いますよ。どうかお楽しみに!

18. 06 / 10

自由な自然

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sekimoto

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昨日のSADIでの総会講演会、齋藤暖生先生による北欧の「万人権」のお話はとっても良かった。まさに我々が北欧に惹かれる根に触れるお話だったと思う。

北欧では国ごとの違いはあるにせよ、自然はみんなのものという意識があり、私有地であっても勝手に分け入って、ベリーやキノコを自由に摘むことができる。そしてそれが法によっても守られている。

日本では土地を買えば、その上にあるものは土地所有者のものだ。それがたとえ風に運ばれてきて咲いた一輪のタンポポであっても。

北欧には土地を持たない人の権利、貧しい人を守る保障がある。スウェーデンでは人口の3%が国土の50%を所有しているという。日本人のような感覚を持てば、国民の97%は自然を享受する権利の過半が奪われることになる。

実は日本も同じ構造の上にある。我々が自由に享受できる自然なんて、ごくわずかにしか存在しないということに気づかなくてはならない。

写真は軽井沢での一コマだ。よく見て欲しい。敷地の境界に沿って植えられた不自然な木の列を。

自然を享受しようと避暑地に足を運びながらも、自ら敷地を囲んで閉ざすというこの構造は、軽井沢にすらもはや自由な自然は存在しないということを意味している。そしてそれは首都圏の住宅地に見る光景そのままだとも思う。

アールトはディテール。
ディテールにこそ、アールト建築のエッセンスは宿っていると思います。

建築の実現の前には必ず技術の壁があり、これを乗り越えてはじめて建築は世に誕生するわけですが、問題解決のために「芸術」と「技術」との交点に存在するもの、それこそがディテールです。

アールトらが設立したartekの社名が示すように、「芸術(Art)と技術(Technology)の融合」は、そのままアールトの建築世界そのものを表現しています。

そんなことで昨年、多くのアールト、北欧建築に関わる著書をお持ちの九州産業大学の小泉隆さんに、SADIでアールトをディテールで切る講演をして欲しいと打診をしましたら、「ちょうど3月にアールトをディテールで切る本を出すんですよ」とのこと。なんと!

小泉さんの著書はすでに発売されています。是非お手に取って頂きたいのですが、アールトのハンドルコレクションを含め、実に丹念にディテール採取をされ、的確な解説を寄せて下さっています。そして思いました。やはりアールトはディテールなんだと。

そんなことで、SADIとして私の肝いりで企画を進めてきました小泉隆さんの、書籍と同名タイトルのSADI講演会が今週金曜日(3月23日)にあります。アールトってよくわからない、という方はまずは視点をディテールに移すことをお勧めします。

(もちろん、ディテールには文字通りの”細部”という意味もありますが、全体構成を司るのもディテールであるということは付け加えておきます)


SADI|小泉隆講演会
「アルヴァ・アールトの建築|エレメント&ディテール」

3月23日(金)19:00~
新宿・工学院大学中層棟8階ファカルティクラブ
※詳細はこちらより
https://sadiinfo.exblog.jp/28077872/

※事前申し込みはいりません。
※満席が予想されますので、お早めのご来場をお勧めします。