連日の授賞投稿になってしまうのですが、先だってかわごえ都市景観表彰を受けた「越屋根の家」にて、このたび埼玉県環境住宅賞において【埼玉県知事賞】(最高賞)を授賞させて頂きました。

本日はその授賞式があり、授賞プレゼンもさせて頂きました。選評としては、越屋根や深い軒、縁側、土間といった伝統的手法をとりながらも現代の生活に合致させ、高い断熱性能と一次エネルギー消費量で高性能も達成している点などが高く評価されたとのこと。

私としては「環境」の定義を狭義の断熱や省エネ性能に留めず(それは当たり前のこととして)、敷地をとりまく環境や、快適性という住環境をふくめた総合的な環境住宅を目指したつもりだったので、その点を含めてご評価頂けたことがとても嬉しかったことでした。

私の妻は「県知事賞」というワードがフックしたみたいで、珍しく授賞式まで来てくれました。しかし県知事はいらっしゃらず、、こちらは残念でした笑





そして、、実は本日もうひとつ良い知らせがありました。

今年最後まで結果が発表されなかった埼玉建築文化賞の発表が本日あり、同じく「越屋根の家」にて同賞の住宅部門最優秀賞を受賞致しました。

■埼玉建築文化賞|住宅部門最優秀賞
https://www.ksaitama.or.jp/info/info464.pdf

この賞は今年最後の大トリ(レコード大賞?)みたいに思っていたので、授賞できて本当に嬉しいです!

これで「かわごえ景観賞」「埼玉県環境住宅賞」「埼玉建築文化賞」という埼玉県内の公的な主要賞をすべて受賞することができました。

埼玉生まれ、埼玉育ちで事務所も埼玉。県内をホームエリアとして活動している身としては、この「さいたま三賞」の制覇はほんとうに身の余る光栄です!!一年の苦労が年末に報われました。

建て主さま、施工会社の堀尾建設さん、担当スタッフの岩田さん始めスタッフのみなさん、本当にありがとうございました!

23. 01 / 15

我々の価値

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sekimoto

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> 仕事
> 思うこと


年が明けて、滞っていたプロジェクトがひとつ動き始めた。幸先の良い年のはじまり。そんな打合せ終わりの雑談で、その方がうちに設計を依頼しようと思ったきっかけとしてこんなことをおっしゃった。

その方はハウスメーカーにも行ったが、画一的なつくりがテンプレートのようで住みたいと思えなかったそう。次に工務店にも話を聞きに行ったが、こだわりある工務店で、そこでは住宅の性能のことをとても丁寧に説明を受け、断熱性能や気密性能がいかに大切かを力説されたそうだ。

ここまではあり得る話。じゃあそこにしようかしら、と気持ちが傾くのが今どきの流れだろう。ところがその建て主さんは、その説明を聞いて「そんな小数点の性能にこだわるよりも、もっと自分たちらしい家に住みたい」と思って設計事務所で建てることを選んだそうだ。

そんなことあるんだ。これまでその真逆の話をずいぶん聞かされてきたので、この話には本当に涙が出るくらい嬉しかった。我が事務所はそうはいっても、性能をけしておろそかにはしていない。HEAT20でG2グレードの断熱性能は当たり前だし、気密測定をすればC値でもそこそこ良い数字は出せる。

性能重視の時代だからこそ、ホームページにも大きく性能のことをアピールすべきだろうかと迷う気持ちもあるけれど、それはしていない。なぜかというと、それはうちの”売り”ではないからだ。

それをした瞬間に性能値の戦いがはじまる。数字では他社に負けるかもしれない。でも我々の価値はそこではないのだ。そうではない土俵で戦っているのだということをずっと考えてきたけど、工務店勢力に押されてここのところ心が折れそうになっていた。

性能はけして諦めないし手は抜かない。けれども我々の本当の価値はそこではない。

それを理解して下さる方が、うちにご依頼を下さる。
なんと嬉しいことだろう!

今日はビックサイト、建築知識実務セミナーへ久しぶりの登壇。この日は「美しい断熱住宅を提案する方法」というテーマで、It’s Houseの八島社長とのデュアルセミナー。

It’s Houseさんは、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの高断熱企画住宅を売り出すハウスメーカー。イノアックの超高性能断熱材サーマックスを肴に、それぞれの立場から「美しい断熱住宅」を掘り下げました。

建築知識実務セミナーはスポンサードによるセミナーのため、来場者には期待通りの学びを、スポンサーには企業価値を(商品名を連呼することなく)広報するというミッションを同時に背負う、単独セミナーよりずっと高度なオトナのセミナー。

過去には板金や防水、畳に至るまで毎年のように無茶ブリを受けてきましたが、今年はとうとう断熱材トーク!自分が一番苦手なやつ。仕方ないので開き直ってリオタデザインの断熱意識改革の歴史をお話しさせて頂きました。冷や汗を悟られずになんとか終了。

今年も勉強させて頂きました!

学生によるリノベサークルDaBoというユニークな団体があります。これは学生主体で建築の改修工事を設計から施工まで行ってしまうというサークルで、実はこの春に5人来ていたオープンデスクの学生のうち、実に4人がこのサークルのメンバーでした。

私が留学していたフィンランドの大学では、学生であっても実際に設計から建設まで関わるというプロジェクトがいくつかあり、実作に飢えている学生達にとってはモチベーションが上がる機会にもなっていました。

フィンランドの建築の考え方は、かの台詞を借りれば「建築は製図室じゃない、現場で起こっているんだ!」とばかりに、先鋭的なコンセプトばかりを口にする人はあまり相手にされませんでした。私がちょっとひねった案を出したら「で、断熱の厚みはいくつなんだ」と返されたのを覚えています。建築は建ってナンボという考えがあるからなのでしょうね。

なので、こういう実作に飢えた学生達が実際に自分たちで設計施工しながら考えるというのは、とても素晴らしい取り組みだと思います。そしてそんな学生に工事を依頼する懐の深~いクライアントにも尊敬の念を禁じ得ませんが…。


そんなDaBoが工具類の購入のためにクラウドファンディングを募っていたので、私も微額ながら協賛させて頂いたのですが、その返礼品が昨日届きました。それがこれ『壁の断熱の計算ブック18』。

これ本当にすごいんです。協賛はもちろん支援の意味もありましたが、これが欲しかったことも理由の一つでした。これは古今東西の18の建築物の壁の構成、断熱材情報などから、実際の熱貫流率(U値)を計算したものです。

この建物のチョイスがすごい。黒川紀章さんの中銀カプセルタワービルからはじまり、安藤忠雄さんの住吉の長屋や、コルビュジェのサヴォア邸など、いわゆる今どきの高気密高断熱ではない建築の実際の熱貫流率をすべて計算しています。

極めつけは茅葺き民家やボーイング旅客機まで!一方ではメンバーが住んでいる自宅の断熱計算もしていて、その比較をしているのもなかなか良かったです。

たとえば安藤さんのコンクリートの住宅は寒いんだろうなとは思っても、それがどのくらいという数値まではわかりませんでした。それがこれを見て、とんでもなく寒いことだけはよくわかりました笑。(ちなみに住吉の長屋のU値は4.01とのこと。リオタデザインが設計する住宅のU値は平均して0.4~0.5くらいです)

ただ計算するだけじゃなくて、その断面なども丁寧に図解されていて、資料を集めるだけでも相当苦労されたと思いますが、非常に貴重な資料になりそうです。

またこういうことを書くと語弊もありそうですが、断熱性能が低い建築であっても、歴史に名を残し、多くの人々に勇気や感動を与えている建築も少なからずあります。建築の価値を計る指標はけして一つではないということもあらためて感じたことです。

DaBoの皆さん、素晴らしい冊子をありがとうございました!永久保存版にします。コロナに負けず、活動がんばってください。



先週土曜日に、神奈川建築士会主催の「感境建築コンペ」のキックオフとなるシンポジウムに、伊礼さん甲斐さんらと登壇させて頂きました。今回は私も伊礼さんらと共に審査員を務めさせて頂きます。

性能だけでは語れない環境(感境=町と家のあいだを考える)について、それぞれの立場から提示された価値観はとても示唆深いものでした。

自立循環型住宅やZEHに代表されるように、住宅はそれ単体で性能やエネルギーが自己完結する方向性に向かっていますが、本当の豊かな環境というのは、完全なシステムに、いかに脆弱で不完全なものを取り込むかではないかというのが、シンポジウムの議論を通じて見えてきたことでした。

この性能の時代にレジスタンスを仕掛けて欲しい。閉鎖系を打ち破る開放系を提案して欲しい、そんな我々からのメッセージです。

「写真一枚だけでもいいよ」by 伊礼さん笑
是非とも幅広い提案をお待ちしております!

神奈川建築士会・感境建築コンペ
http://www.kanagawa-kentikusikai.com/osirase/compe/wordpress/

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