この春5人目、いよいよ最後のオープンデスクが終了しました。5人目も日大理工の2年生。1年生の時に設計指導を担当していた学生さんです。

彼女は以前からやる気は人一倍あるものの、自分のイメージする世界をうまく表現することができずにいたのですが、この2年生の後期にかけてぐっと実力を付けてきました。まさに伸び盛りの学生さんです。

今回課した課題は、実際の敷地に建つリアルな条件の住宅で、住宅を設計する上で基本的な考え方を学んでもらいたいと出題したものでしたが、彼女はそこにコンクリート打放しの壁を、木造住宅を貫くようにランダムに配置するというアバンギャルドな提案。これには私もびっくり!



その壁は本当に必要なのか?どういう意味があるのか?など、否定と肯定を繰り返しながら対話を重ねましたが、彼女は心折れることなく最後までやりきりました。それがまず感心したこと。そしてこれがまた、結果的になかなか良い空間なのです。これは彼女に一本取られたなと思いました。今回どのオープンデスクの学生にもないアプローチの提案でした。

大学でも、学生が突飛なことをやろうとしているときは、否定と肯定両方の意見をぶつけて反応を待つことにしています。人と違った考えを持つことは悪いことではありませんが、それを人がどう受け入れるか、あるいは拒絶するかを十分に想像した上で提案して欲しいと思うからです。ですが多くの場合はそのやりとりの中で物事のバランスを考え、良くも悪くも考えを変える人がほとんどです。

もちろんそれは協調性や社会性という意味で、仕事をしてゆく上でもとても大切な要素だと思いますが、人を圧倒的な造形で感動させるタイプの建築家にはなれないかもしれません。彼女の持ち味は、おしとやかそうに見える?外見とは裏腹に内に秘めた情熱(パッション)、そしてその頑固さと意志の強さです。そういう意味で芸術の才能のある子だと思います。

これからどんな風に飛躍していくのか、勢い余って崖から落ちないように笑、ハンドルをしっかり握って自分の道を探ってもらいたいと思います。これからがとても楽しみです!



はぁ、それにしてもこの春の怒濤のオープンデスク・ラッシュはすごかった!

すべての学生とは毎晩向き合って遅くまでエスキース(設計指導)をしました。ずいぶん自分の時間を使ったなぁ…。でもとっても楽しかったです。千本ノックをしていたつもりが、こっちがノックを受けていたみたいな。

私にとっては、正直課題とかどうでもいいんですよ。それが上手くできても、できなくても私には関係ありませんから。単位が出るわけでもないし。

毎晩のエスキースを通じて、彼らの悩みとか建築に対する迷いのようなものを聞いてあげると、アウトプットしたことで彼らの中で問題が整理されて昇華(成仏)されます。私の経験を話してあげたり。こういう時間が、かけがえのないものなのだと思います。

これは大学の授業ではできないことなんですよね。限られた時間の中で、全員の指導をしなくてはいけないので。課外授業だからできることです。

彼らは貴重な春休みの一週間を無給で事務所に足を運んだわけです。その間もバイトしていればもう少しお金にもなったはずなのに。それをこういう無駄なことをすると案外いいことあるんだということが分かってくれたら、人生にとって一番大切なことをひとつ学んだかなとも思います。

この春来てくれた5人の学生さんはお疲れさまでした!うちの事務所を選んでくれてありがとう。また別の機会にお会いしましょう!


この春4人目のオープンデスクは男子学生。日大理工の2年生。建築学科の学生にもかかわらず、将来は大工になりたいとのこと。それも図面も描ける「建築家大工」になりたいのだとか。それにしても、大工になりたいなら何もうちに来なくてもと思いつつ、期間中は設計課題をやりたいと言うのでお決まりの設計エスキースをやることに。

しかし、一日費やしてもなかなかプランが描けない。それまでデキの良い女子学生が続いていたこともありますが、それは大学で私が向き合ってきた学生の傾向そのものでもあって、頭でっかちにコンセプトをこねくり回しているから手が動かないというパターン。その点、直感力に優れる女子学生は難しいことを考えないでスイスイと筆が走るんですよね。

彼へのエスキースはずいぶん厳しかったと思います。女子には優しく、男には厳しく?けれどもその甲斐あってか、最後はようやくツボを押さえた案ができました。そして最後はお決まりの所内プレゼン。私の総評の前に、二人のスタッフがゲストクリティークとしてコメントします。

このスタッフの優しいこと!ペコパ並みの人を傷つけないコメントが泣かせます。まぁ、厳しいこと言うのは私の役割ではありますが。こういう機会も、スタッフの勉強にもなっているはず。

現場では、大工志望というのが監督さんの興味を引き、いろいろアドバイスをもらったりもしていました。またいつか、プロ同士として仕事ができるといいですね。それまで修行を積んでください。待ってます!


この春三人目のオープンデスクは共立女子大学から。
初日に普段使っているエスキス帳を持参させると、ノート大の小さなスケッチブックを取り出した。だめとは言わないけれど、良いアイデアは良い道具から。ということで、私の愛用するマルマンの新しいCroquis SS2を渡した。

1週間でこれを使い切るようにとハッパをかけると、最後の日にはあとわずか!というところまで迫った。自分で言っておいてなんだけど、私でもなかなかそこまで使わない笑。

オープンデスクの学生たちに課しているのは、いわば建築の千本ノックみたいなこと。彼らは大学では平均して5週間程度でひと課題を仕上げる。最初の1〜2週間はまともな案は期待できず、3〜4週間目くらいから少しは見られる案が出てくる。そして最後はタイムオーバーだ。

我々はそれをやったらアウトである。プロなら3日もあればそれなりの案ができる。しかも細切れの時間を使ってだ。学生でも集中すれば一週間でスケッチブックを一冊使うくらいのスタディはできる。そして想像してみてもらいたい。そのまま4週間も続ければ、どれだけの深いスタディができるか。

エスキースを通じて彼女が選んだキーワードは「まちからのもらいもの」。良いタイトル、そしておおらかな良案だった。彼女には期間中仕事のお手伝いもいくつかお願いしたにもかかわらず、それらを手際良く片付け寸暇を惜しんでスタディに没頭していた姿が印象的だった。真っすぐな性格の良い学生さんだった。

一週間お疲れさまでした!



オープンデスク二人目が終了。先に決まっていた子がインフルになり、代わりに急遽来ることになった専門学校の子だった。とても大人しい子で、最初は緊張しているのか入口もそ~っと入ってくる感じ。課題を出して毎晩エスキスをし、次第に慣れてくると良い質問をしてくるようになった。

この子の優れていたのは、毎日ちゃんとプランを形にする力があったこと。線もとても良い線を描く。毎日ハードルを上げて、最後は模型も含めてなかなか素晴らしい案をまとめ上げた。勘が良くセンスのある子だった。

よく思うのは、我々は音楽を聴いて「これは良い曲だな」と思うことはあっても、良い曲を書くことはできない。良い曲がどういうものかは分かっているのに、それを作ることができないというのは不思議なものだ。それと同じように、建築を見て「これは良い建築だな」と思うことはあっても、良い建築を作ることのできる人はごくわずかだ。それは教えられるものではない。

自分が良いなと思えるものを、すっと作ることができるのは才能なのだと思う。そんな気配を感じる子だった。それに気づいていない感じがまたよかった。このまま進んで欲しいと思う。

今週一週間は、日大理工学部2年生の長谷川理奈さんのオープンデスクでした。現在設計進行中の横浜市の敷地をケーススタディとして、一週間で四案ほど作ってもらいましたが、今日はたまたまその当該の建て主さんとの設計打合せがあったため、建て主さんにはサプライズで学生案をプレゼンしてもらいました。

大学の設計課題では、非常勤の先生(私)からの容赦ないつっこみに晒されるところですが、今日は優しい建て主さんのおかげで温かなお褒めのお言葉を頂くことができました。Fさん、気を遣わせてしまい申し訳ありません笑

その後はそのまま実施設計の打合せにも同席してもらいましたが、建て主さんの高い生活意識や、図面への関心の高さ、会話のキャッチボールから設計がどんどん変わってゆくプロセスなど、大学ではけして経験できない体験に大変勉強になったようです。

今週はたまたま外出や打合せの多い週だったので、連れ回された長谷川さんも得るものが多かったのではないでしょうか。スポンジのように何でも吸収する貪欲さは若さもありますが、その日取ったメモを毎日ノートに清書して記録として残すなど、彼女の意識の高さにも驚かされました。

彼女にはこの一週間が一ヶ月くらいに長い時間に感じられたそうですが、成長のため身長も1センチくらい伸びているかもしれません笑。長谷川さん、一週間お疲れさまでした!