先日のブログに書いたとおり、今週は長岡造形大学から横山美羽さんがオープンデスクとしてやってきていました。
いつものように課題を出題し、毎日エスキースをしたり、スタッフと一緒に食事に出かけたり、セミナーに参加したりの怒濤の一週間でしたが、楽しく研修をしてもらえたようでなによりでした。
さすが美大の学生さんだけあって、手を動かすのは苦ではないようで、毎日黙々とデスクに向かってはたくさんのスケッチをエスキース帳に残していました。この学生で特徴的だったのは、スケッチを描きながらちゃんとスタディ模型も作ること!うちのオープンデスクでは、プランニングに夢中になるあまり、屋根や建物全体の造形検討が疎かになってしまう学生がほとんど。
ちゃんと鉛筆を走らせながら、片方では空間ボリュームの検討を進めたおかげで、屋根に特徴のあるユニークな住宅ができあがりました。もう少し磨けばもっと光る案になることと思います。
感受性が高く、助言を素直に受け止めながら日々進化を続ける姿が印象的でした。地方学生だったため、一週間ホテルに泊まっての参加となりましたが、終了後は岡山の実家に帰るとのこと。久しぶりの実家でのんびりしてください。一週間お疲れさまでした!!
Arupの構造家であり長岡造形大学でも教える大学同期の友人、与那嶺が彼のゼミ生を連れて事務所までやってきました。長岡にこもっていては建築の刺激がないだろうと、彼の計らいで毎年東京方面にゼミ旅行を企画しているそうです。うちへは一昨年に続いて今回で二度目の来所。
皆とても礼儀正しくて良い学生さん。うちの自邸を案内して、近くの定食屋さんでランチをご一緒しました。私からは著書をプレゼント(サイン入り)。うち一人は来週からうちの事務所のオープンデスクにやってきます。こちらも楽しみです!
この日はこの後、組織事務所見学に行ったそうです。顔の広い彼ならではネットワーク、学生さんも幸せですね。
昨年の夏、うちの事務所にオープンデスクに来ていた学生からメールが届いた。オープンデスクを終えて取り組んだ大学後期の設計課題ではじめての教室選出、そしてその中で更に1位に選ばれたとのこと。そのメッセージを嬉しく読んだ。
オープンデスクというのは建築業界の言葉で、いわゆるインターンのことだ。大学生が夏休みや春休みなどの長期休み中に、設計事務所などに無償の研修を願い出る制度のことを指す。
ただこれが業界では良いように使われることもあって、設計事務所の中には「オープンデスク募集」などと堂々とサイトに書いているところもある。オープンデスクは募集するものではなく願い出るものだ。つまり、業界的には、「タダ働きしてくれる都合の良い労働力」の隠語となっている側面もあるように思う。
私の考えとしては、事務所の戦力となる働きをしてもらうのであれば、対価としてお金を払いたいと思う。しかしわずかな期間やってくる学生に、責任の発生する仕事など触らせられるはずもなく、結局うちでは毎回私が設計課題を出し、それをほぼ毎日設計指導をするという、タダ働きならぬ、タダ建築講座を開講することになる。
私も設計塾やセミナーに呼ばれば、ちょっとしたお金を頂く身分であるにもかかわらず、学生さんには大盤振る舞い。毎日数時間の設計指導に、現場への帯同や解説、その他私の行く先々に連れて行ってはお金もすべて私が払うのだから、うちに来る学生はずいぶん恵まれていると思う。大学の設計指導なら週に一度、一人あたり10分程度というのが相場だ。
けれど学生の方も、勇気を出して設計事務所にアプローチし、バイトも休んで無償の研修を申し出るのだからそれなりの覚悟はいる。私としてはその覚悟に応えたいと思う。
うちの元スタッフ砂庭さんも、うちのオープンデスク生の一人だった。彼女もオープンデスク後の設計課題は、常に最優秀賞が取れるまでになったという。また現スタッフの佐藤くんも元うちのオープンデスク生だ。大学をはなれて取り組むオープンデスクは、時にその人の人生を決めることもあるということかもしれない。
オープンデスクの良さは、建築のリアルに触れられるということに他ならない。大学で学ぶ建築は、良くも悪くもフィクションだ。そこに住まう人の人物像も、時にはその設計条件ですらも、都合よく自分で変えることができる。構造なんて考えなくても、模型やCGならなんでもありの世界となる。ところが現実は違う。それが社会であり、我々が生きる世の中だ。
そこを知ると、無責任な線は描けなくなる。その建築を使う人は自分ではない誰かなのだと考えれば、そこに思いやりや共感、愛着や愛情が生まれる。そしてそれが線に乗ったときにはじめて良い建築が生まれる。物事の本質はあっけないほどシンプルで、凡庸な日常の中にこそあるのだ。
去年の夏に来た学生は、わずか一週間の中でその糸口を掴んだのだろう。
おめでとう!前途ある未来にエールを送ります。
オープンデスクというのは建築業界の言葉で、いわゆるインターンのことだ。大学生が夏休みや春休みなどの長期休み中に、設計事務所などに無償の研修を願い出る制度のことを指す。
ただこれが業界では良いように使われることもあって、設計事務所の中には「オープンデスク募集」などと堂々とサイトに書いているところもある。オープンデスクは募集するものではなく願い出るものだ。つまり、業界的には、「タダ働きしてくれる都合の良い労働力」の隠語となっている側面もあるように思う。
私の考えとしては、事務所の戦力となる働きをしてもらうのであれば、対価としてお金を払いたいと思う。しかしわずかな期間やってくる学生に、責任の発生する仕事など触らせられるはずもなく、結局うちでは毎回私が設計課題を出し、それをほぼ毎日設計指導をするという、タダ働きならぬ、タダ建築講座を開講することになる。
私も設計塾やセミナーに呼ばれば、ちょっとしたお金を頂く身分であるにもかかわらず、学生さんには大盤振る舞い。毎日数時間の設計指導に、現場への帯同や解説、その他私の行く先々に連れて行ってはお金もすべて私が払うのだから、うちに来る学生はずいぶん恵まれていると思う。大学の設計指導なら週に一度、一人あたり10分程度というのが相場だ。
けれど学生の方も、勇気を出して設計事務所にアプローチし、バイトも休んで無償の研修を申し出るのだからそれなりの覚悟はいる。私としてはその覚悟に応えたいと思う。
うちの元スタッフ砂庭さんも、うちのオープンデスク生の一人だった。彼女もオープンデスク後の設計課題は、常に最優秀賞が取れるまでになったという。また現スタッフの佐藤くんも元うちのオープンデスク生だ。大学をはなれて取り組むオープンデスクは、時にその人の人生を決めることもあるということかもしれない。
オープンデスクの良さは、建築のリアルに触れられるということに他ならない。大学で学ぶ建築は、良くも悪くもフィクションだ。そこに住まう人の人物像も、時にはその設計条件ですらも、都合よく自分で変えることができる。構造なんて考えなくても、模型やCGならなんでもありの世界となる。ところが現実は違う。それが社会であり、我々が生きる世の中だ。
そこを知ると、無責任な線は描けなくなる。その建築を使う人は自分ではない誰かなのだと考えれば、そこに思いやりや共感、愛着や愛情が生まれる。そしてそれが線に乗ったときにはじめて良い建築が生まれる。物事の本質はあっけないほどシンプルで、凡庸な日常の中にこそあるのだ。
去年の夏に来た学生は、わずか一週間の中でその糸口を掴んだのだろう。
おめでとう!前途ある未来にエールを送ります。
この夏三人目、最後のオープンデスクの学生がやってきました。征矢(そや)俊介くん、東京電機大学の二年生です。征矢くんの家は埼玉の桶川市とのこと。何をかくそう、私は桶川市川田谷の出身。とても親近感が湧いてしまいました。
これは4年制大学の建築学科学生あるあるなのですが、頭でっかちに難しいことを考えすぎて、なかなか図面が描けないというのがあります。その点専門学校の学生さんは、シンプルな考えでどんどん筆が進むのですが、征矢くんも案の定、初日はなかなか手が動かず苦労したようです。
まずはそんな凝り固まった思考を解きほぐすところから。住宅はとにかく住まい手の生活を思い浮かべ、それに寄り沿うというのが第一。奇抜な形やコンセプトはいらないのです。
具体的にアドバイスをすると、勘が良いのか次第にどんどんスケッチを書き飛ばすようになっていきました。最後のプレゼンでは、太陽光が差し込むように配置された窓や、生活を具体的にイメージしたような地に足が付いたプランを提案してくれました。短い期間でしたが、実際の住宅の設計というのはどういうものなのか、大学の課題とは少し違った切り口で理解してくれたように思います。
残りの時間で模型まで作ってくれました。なかなか斬新!よく考えて辿り着いた先にある形であれば、説得力を持つことを学んでくれたのではないかと思います。
お疲れさまでした!また見学会など遊びに来て下さいね。
この夏、二人目のオープンデスクは千葉工業大学3年の大河原雄友くん。大河原くんは実は建築学科ではなく、いわゆる土木系の学科に所属している学生さん。それでも建築の設計をやってみたいと、うちのオープンデスクに応募してくれました。
ただ実家が千葉の木更津とのことで、さすがに遠すぎるということで最初はお断りしたのですが、松戸の友人宅に泊まって通うので!との熱意に負けて受け容れさせてもらいました。
土木系学科でも、住宅の設計課題などは経験したそうですが、いわゆる図面の描きかたのような初歩的な指導のみだったようで。「建築をつくるとはどういうことか?」というところに踏みこんだ指導ではなかったようです。
いつものように住宅の設計課題を出したのですが、持参したエスキース帳も一般的なスケッチブックだったため、私が愛用するエスキース帳を一冊渡して「一週間でこれを使い切るくらい描くこと!」と伝えたら、最終日には使い切ることはありませんでしたが、2/3以上はびっしりとエスキースで埋めてくれました。
私は学生にもスタッフにも区別なく厳しいので、さながら1000本ノックのような日々だったかと思いますが、毎日指導を重ねるごとにどんどん線がクリアになっていき、最後には実際に建てられるレベルの素晴らしいプランになりました。高い集中力と吸収力で、日々ぐんぐん実力が伸びていってなかなか教え甲斐がありました。
建築学科で学んでいないことを気にしているようでしたが、雄友くんもこの経験はきっと自信になったことと思います!一週間お疲れさまでした。来週以降は、千葉の建築を見て回るという、もうひとつの”宿題”も是非がんばって下さいね。
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