
毎年夏にオープンデスクの学生がやってきます。私が教える日大ではなく、なぜか最近では他大学、とくに地方大学の学生が多いのはなぜなんでしょう(去年は長岡造形大学から来ました)。今年は山形の東北芸術工科大学(略して芸工大)から2年生の子がやってきました。長利(おさり)咲代子さんといいます。
芸工大といえば、スタッフ砂庭さんの母校でもあります。しかも郷里も同じ青森という。
オープンデスクも今日が初日。挨拶代わりに、学校の課題などをいくつか見せてもらいましたが、とても優秀な学生のようで、とても2年生とは思えないレベルの作品に感心させられました。彼女の資質もあるのでしょうが、芸工大の教育は地に足が付いていて、私が留学したアールト大学の建築教育にもつながるものがあるような気がしています。

こちらは学内の即日設計コンペで、2~3年生の先輩を差し置いて1年生で最優秀賞を取った作品とのこと。
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スタッフ砂庭の例もあり、もはや「芸工大=優秀」というフィルターが私の中で作られつつあります。がんばれ日大!そういえば「路地の家」の建て主さん(グラフィックデザイナー)も、芸工大出身のスタッフは圧倒的に優秀だとおっしゃっていましたっけ。
来週いっぱいまでうちで研修してもらいます。期間中の現場や打合せにも同伴/同席させて頂きますので、関係者の皆さま、どうかよろしくお願い致します。

毎年夏になると学生のオープンデスク生(インターン)がやってきます。
今年は新潟の長岡造形大学の3年生、星成美さんがやってきました。3年前には現スタッフの砂庭さんも山形の芸工大からやってきましたので、私としては北から来る学生には思わず期待してしまいます笑
期間としては約一週間とすこしの間でしたが、前半の数日はまずは恒例の住宅の設計エスキース実習ということで、実際の計画敷地をモデルケースとして、住宅のプランニングをしてもらいました。
1日1プランを模型を含めて作成してもらい、一日の終わりに私がそれを添削してという作業を繰り返します。プランニングはひらめきではなく、果てしない論理の積み重ね、詰め将棋なんだということを理解してもらうのが目的です。
最後にはぎこちなくも?学生らしい個性的な形が立ち上がりました。まだまだつっこみどころはありますが、最後に私が考えた案を見てもらい、実務設計との違いを認識してもらいました。ここまでがLesson1。

次に彼女には別の課題を出しました。今度は制作の課題です
日頃我々ではA4サイズの大きさの模型を製作しています。これを運ぶ際に適当な袋がなく、いつもマチが大きめの菓子袋などで代用していましたが、今年はこの模型専用の手提げ袋をデザイン・制作してもらうことにしました。
しかし、ただの夏の工作課題と侮ることなかれ。要望と機能の整理、それに対応した寸法や素材の選択、その手配や制作期間の設定、ディテール処理など、そのプロセスはまさに建築そのものと言って良いと思います。
ともあれ彼女の悩みながらの制作の日々がはじまりました。

そして彼女が最後に作ってくれたのは合計3つのバッグでした。薄い紙でつくったもの、厚い紙でつくったもの、布でつくったもの。
彼女が最も苦労したのは素材でした。最初紙での制作を想定していたのですが、彼女には東京中のお店を探してもらいましたが、制作に必要な大きな紙がなかなか入手できません。これが思わぬ落とし穴でした。
建築にもそうした問題はつきものです。さて、どう解決するか?

彼女の制作は以下のプロセスを経ました。
タイプ1:適切な厚みを持った紙で作る/ただし大きさが足りない
↓
タイプ2:十分な大きさのある紙で作る/ただし必要な強度が足りない
↓
タイプ3:布で作る
この3つめの布で作るという選択肢に行き着いたのは、今回のファインプレーだったと思います。提出前夜、彼女は徹夜で針を縫ったそうです。ディテール処理もちゃんとしています。

紙袋のとじ方もなかなか可愛い。
こちらは紐付き封筒の応用ですね。

最後にスタッフによる使い勝手のチェック。
模型箱の出し入れもしやすく、上部もちゃんと留められるようになっています。シンプルなデザインはとても難しいのですが、学生らしい感性で、おしゃれで可愛らしいバッグが出来たと思います。




星さん、短い間でしたがお疲れさまでした!
アトリエ事務所の様子や、家づくりの現場がどう進んでいるかなど、なかなか学生には足が運べない場所まで案内させてもらいましたので、それなりに良い経験になったのではないかと思っています。
またこれからの学生生活も充実したものにされて下さい!

