毎年夏になると学生のオープンデスク生(インターン)がやってきます。
今年は新潟の長岡造形大学の3年生、星成美さんがやってきました。3年前には現スタッフの砂庭さんも山形の芸工大からやってきましたので、私としては北から来る学生には思わず期待してしまいます笑
期間としては約一週間とすこしの間でしたが、前半の数日はまずは恒例の住宅の設計エスキース実習ということで、実際の計画敷地をモデルケースとして、住宅のプランニングをしてもらいました。
1日1プランを模型を含めて作成してもらい、一日の終わりに私がそれを添削してという作業を繰り返します。プランニングはひらめきではなく、果てしない論理の積み重ね、詰め将棋なんだということを理解してもらうのが目的です。
最後にはぎこちなくも?学生らしい個性的な形が立ち上がりました。まだまだつっこみどころはありますが、最後に私が考えた案を見てもらい、実務設計との違いを認識してもらいました。ここまでがLesson1。
次に彼女には別の課題を出しました。今度は制作の課題です
日頃我々ではA4サイズの大きさの模型を製作しています。これを運ぶ際に適当な袋がなく、いつもマチが大きめの菓子袋などで代用していましたが、今年はこの模型専用の手提げ袋をデザイン・制作してもらうことにしました。
しかし、ただの夏の工作課題と侮ることなかれ。要望と機能の整理、それに対応した寸法や素材の選択、その手配や制作期間の設定、ディテール処理など、そのプロセスはまさに建築そのものと言って良いと思います。
ともあれ彼女の悩みながらの制作の日々がはじまりました。
そして彼女が最後に作ってくれたのは合計3つのバッグでした。薄い紙でつくったもの、厚い紙でつくったもの、布でつくったもの。
彼女が最も苦労したのは素材でした。最初紙での制作を想定していたのですが、彼女には東京中のお店を探してもらいましたが、制作に必要な大きな紙がなかなか入手できません。これが思わぬ落とし穴でした。
建築にもそうした問題はつきものです。さて、どう解決するか?
彼女の制作は以下のプロセスを経ました。
タイプ1:適切な厚みを持った紙で作る/ただし大きさが足りない
↓
タイプ2:十分な大きさのある紙で作る/ただし必要な強度が足りない
↓
タイプ3:布で作る
この3つめの布で作るという選択肢に行き着いたのは、今回のファインプレーだったと思います。提出前夜、彼女は徹夜で針を縫ったそうです。ディテール処理もちゃんとしています。
紙袋のとじ方もなかなか可愛い。
こちらは紐付き封筒の応用ですね。
最後にスタッフによる使い勝手のチェック。
模型箱の出し入れもしやすく、上部もちゃんと留められるようになっています。シンプルなデザインはとても難しいのですが、学生らしい感性で、おしゃれで可愛らしいバッグが出来たと思います。
星さん、短い間でしたがお疲れさまでした!
アトリエ事務所の様子や、家づくりの現場がどう進んでいるかなど、なかなか学生には足が運べない場所まで案内させてもらいましたので、それなりに良い経験になったのではないかと思っています。
またこれからの学生生活も充実したものにされて下さい!
私の敬愛するデザイナーに深澤直人さんがいます。彼のデザインに対する思想は、僭越ながら私の建築への向き合い方とも重なる部分が多く、レクチャーなどでもよく深澤氏の「Without Thought」の話を引き合いに使わせて頂いています。
仮に深澤直人さんの名前を知らない人でも、彼のデザインを見たことがない人は少ないと思います。無印良品でよく買い物をするという方なら、無印良品に並んでいる製品の多くは深澤さんによるものですし、その他国内外の数多くの製品のプロダクトデザインを手がけていらっしゃいます。
そんな深澤直人さんの(意外ですが)国内初となる個展が、パナソニック汐留ミュージアムにて開催中です。
AMBIENT[深澤直人がデザインする生活の周囲展]
https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/17/170708/
深澤さんのデザインの特徴は、氏が毎年開催しているワークショップのタイトル「Without Thought」に象徴されるように、”無意識のデザイン”にあります。
私なりに咀嚼するならば、「デザインの本質は人が意識することなく、なにげなく普段の生活の中で行っている仕草や習慣のなかにこそある」といったところでしょうか。
もう少しわかりやすく例えると、雨の中家に帰ってきて傘をたたむとき、そこに傘立てがなかったらどうするでしょうか?おそらく人に尋ねるまでもなく、たたんだ傘を床のタイル目地と壁に斜めに立て掛けることでしょう。
深澤さんはこれが「傘立て」なのだと言います。「壁から15cm離れた7mmのタイル目地は傘立てである」というのが、深澤さんの主張です。
我々は傘立てをデザインしようとして、あるいは傘が立てられるものを求めて、つい玄関に筒型のオブジェクトを置いてしまいがちです。けれども本当にそこに求められていることは、必ずしもそこに筒を置くことではないのです。
深澤さんのデザインは、デザインが”普通”であることの大切さを説きつつも、その普通のディテールを極限まで洗練させてゆくと、けして凡庸ではない佇まいに行き着くことを教えてくれます。
それは我々の住宅設計にも同じことが言えます。住宅にとって大切なのは日常です。普通だけれど、普通を突き抜けた先にあるちょっと特別な日常とでも言いましょうか。
私の身の回りや事務所には、北欧デザインと同じくらい、深澤さんがデザインしたプロダクトがたくさん置かれています。私個人の好みもありますが、デザインは思想であり、共感する思想を常に手元に置いておくことは、ぶれない仕事のベンチマークになると考えています。
志木市で進行中の現場DECOにキッチン家具が入るということで、担当砂庭とオープンデスクを伴って現場へ。今回の家具も新潟の藤沢木工所にお願いしています。
そして今年のオープンデスク生は長岡造形大学の学生さん、ということでチーム新潟をパチリ。しかし写真に入りたがらない砂庭「私は青森ですっ」
そうかじゃあチーム新潟青森JVで!
17. 08 / 17
伊礼智さんトークイベント@広島
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sekimoto
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> イベント
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建築家の伊礼智さんの新刊「伊礼智の住宅デザインDVDデジタル図面集」の出版と、建築知識ビルダーズ30号記念を兼ねて、全国各地の書店でトークイベントを行うそうです。
私は初回の広島でのイベントに、トークゲストとして登壇させて頂きます。なんといっても広島なので、、東京~埼玉の方は参加するわけにもいかないと思いますが、もし広島方面の方で、伊礼さん目当てでついでにリオタの話でも聞いてやるかという方は是非いらして下さい!(広島はやっぱりお好み焼きかなぁ)
詳細情報はこちらより
http://www.xknowledge.co.jp/kenchi/event/flyer_a4.pdf
私は初回の広島でのイベントに、トークゲストとして登壇させて頂きます。なんといっても広島なので、、東京~埼玉の方は参加するわけにもいかないと思いますが、もし広島方面の方で、伊礼さん目当てでついでにリオタの話でも聞いてやるかという方は是非いらして下さい!(広島はやっぱりお好み焼きかなぁ)
詳細情報はこちらより
http://www.xknowledge.co.jp/kenchi/event/flyer_a4.pdf
今回のフィンランド渡航の目的は、ヘルシンキのアールト展を見に行くことと併せ、かつて巡ったアールト建築をもう一度尋ねて、あらためて写真(アーカイブ)を残したいということがあった。
留学時代は使っていたデジカメも貧弱で、高画質なデジカメは高価で手が出せなかった。画像のサイズはわずか640ピクセル。そのため、レクチャーなどにも良い写真が使えず、また出版社から素材提供を求められても提供することができなかった。
そのかわり、当時一眼レフではよく写真を撮っていた。しかもポジフィルムで。ポジで撮るというのは、当時ヘルシンキで親交のあった写真家の根津修平君の影響だったように思う。
ポジフィルムはネガと違って通常プリントをしたりしないので、現像したフィルムはろくに確認もせずにスリーブのまま保管していた。確認しようにも、当時はライトボックスすら持っていなかったのだ。
そのため滞在中いろいろ撮った記憶はあっても何を撮ったかは覚えておらず、撮ったとしても大した量ではないと思っていた。データ化されていないので全体像も把握できず、そのまま引き出しの奥に仕舞われたままだった。なんともお粗末な話だ。
それを今回の旅行後にふと思い出し、ゴソゴソと引き出してみるとすごいお宝写真が詰まっていたことに気づきびっくりした。その数実に800枚近く!そんなに撮っていたんだ。
しかも現在では内部撮影が禁止されてしまったマイレア邸の内部写真や、中にはマイレア邸の屋根の上に上がって撮ったものも。今では絶対に許されないカットである。確かこの時は取材のコーディネーターを務めていて、特別に許可されたときの一枚だったと思う。
そして、ロシア領にありまだ改修半ばで廃墟化していたヴィープリ図書館の写真も出てきた。これも当時決死の覚悟で国境を渡り訪れたものだ。今は改修も終わりきれいになったようだが、当時の荒廃したヴィープリ図書館の面影を伝える貴重な資料だ。
そしてパイミオサナトリウム。今では結核療養所としての機能は終え、児童福祉財団のリハビリ病院になっているそうなので、この現役の医師たちが食堂を利用しているこの光景はもう二度と見ることはできない。
パイミオは当時付属の寄宿舎に泊まって模型の修復作業をしたのも良い思い出だ。
ほかにも行ったことすら忘れていた地方のアールト建築や、レイヴィスカなど他の建築家による地方の建築、そして若かりし時代の我々のポートレートなど。これだけの資料画像があれば、今後当面は困らないと思う。
早速これらはデータ化して、活用できるようにしたい。
これまでその存在に気づかなかった自分にもびっくりだけれど、逆に中途半端なデジカメで残しているよりも、はるかに再現性の高いスライドフィルムで記録を残していた当時の自分を褒めてあげたいと思う。
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