author
sekimoto

category
> 北欧
> 社会



先月末にSADI北欧建築・デザイン協会の総会があり、川上玲子さんの後を引継ぎ、このたび第6代目となるSADIの新会長に就任しました。

■2025年度 北欧建築・デザイン協会役員
https://sadi.jp/sadi_admission.html#YAKUIN

SADIは今年で創立43年目を数える、国内有数の北欧団体です。北欧5カ国を網羅し、北欧の建築のみならずデザインを愛好する会員を擁する団体は当協会が唯一です。

私がSADIに入会したのは、およそ20年ほど前のこと。そんなに昔だと思っていませんでしたが、気づけばあっというまでした。川上信二さんより企画委員会を託され、これまで企画委員長を12年ほど務めました。

これまで企画してきた講演会やイベントは数えきれません。私はいつも司会進行役で、質問が出なければ司会者自ら質問をしたり、いま思えば司会というよりモデレーターのような立ち位置でした。その後いろんな場で司会やモデレーターを務めたり頼まれたりするようになりましたが、すべてはこのSADIで鍛えられたものです。

コロナ禍でSADIの活動が下火になり、そのタイミングでJIAの活動が忙しくなっていきましたが、住宅部会では広報、会計、部会長。支部広報委員会ではBulletin編集長に副委員長と、広報、会計、編集、会の代表という様々な立場を経験できたことはとても大きく、会の運営に必要なすべてをこの5年間で学んだと言っても過言ではないかもしれません。すべてはこのためにあったのだと思えます。

新体制のテーマは、「フラットでひらかれたSADI」です。

私の理想とする北欧社会のように、ヒエラルキーを持たず、年齢性別によらず、個人尊重の立場から誰でも参加できるガラス張りの運営に努めてまいります。会員の皆さま、どうかよろしくお願いします。そして北欧建築そして北欧デザインを愛好するすべての方は、どうか一緒に活動して参りましょう!

SADI北欧建築・デザイン協会
https://sadi.jp/

今年3月に日本橋高島屋で開催されていた『北欧のあかり展』はその後大阪に巡回し、この6月からは九州での巡回展がはじまっています。

■ 北欧のあかり展|九州(福岡)展
6月14日(土)~7月27日(日) 
会場:九州産業大学美術館
概要詳細は >>こちら より

以前ブログでもお知らせしましたように、展示に使われているユハ・レイヴィスカの照明器具4点はグッドシェパード教会モデルを含めて私の所蔵品を出展させて頂いています。

そんな折、企画監修をされている小泉隆さんより九州展の様子について写真が送られてきました。九州展は小泉隆さんが教鞭を執られている九州産業大学での開催ということもあり、会場設営なども教え子の学生さんなどと行われたようです。

その中でレイヴィスカの照明コーナーについては、研究室の4年生を中心にグッドシェパード教会の光の効果を再現すべく、特別にインスタレーションを製作されたとのこと!小泉さんから送られてきた資料の一部をご紹介させて頂きます。








[空間デザイン・制作:木山翔太]

素晴らしいですね!思わず感動してしまいました。

2.8mの天井高を持つ会場に、どうやってこの壁を自立させるかということから難問だったようで、学生さんが知恵を絞りに絞って、この林立するスリット壁を製作されたようです。

レイヴィスカの教会建築は、祭壇の林立した壁から光を間接的に取り込むことで幻想的な空間をつくり出しているのが特徴になっています。1984年のミュールマキ教会では控えめでモノトーンな採光手法だったものが、1992年のマンニスト教会では壁の裏側に色を着彩するという方法で壁の反射光に彩りを採り入れています。

晩年の傑作とも呼べる2002年のグッドシェパード教会に至っては、このスリットにプリズムのようなガラスを埋込み、マンニスト教会で試みた彩りのある反射光とあわせて、時間帯によって刻々と変化する光の”あそび”を最大限に表現した空間になっています。

今回はそれを再現したインスタレーションのようです。実際にレイヴィスカも、今回のように様々な色を壁の裏に取り付けては光の効果を検証したのかもしれませんね。

展覧会もさることながら、学生さんにとっても素晴らしい光のワークショップになったことと思います。照明器具の出展者としても、レイヴィスカの空間をこよなく愛する者としてもとても嬉しく感じました。

小泉さん、資料をお送り下さりありがとうございました。そして学生の皆様、お疲れさまでした。是非いつかフィンランドでも実際の空間を体験してくださいね!




グッドシェパード教会(撮影:関本竜太)

25. 03 / 08

Kuplaの話

author
sekimoto

category
> メディア
> 北欧



独立前、ヘルシンキ工科大学(現アールト大学)に留学していた時に関わったプロジェクトがありました。学生を対象とした木造の実施コンペのプロジェクトで、その年のお題はコルケアサーリ動物園の高台に物見の塔をつくるというもの。私も参加しましたが惜しくも佳作どまりで、コンペを獲ったのはヴィッレ・ハラ(Ville Hara)というフィンランド人の学生でした。

その案はラチス状に組んだ木のメッシュのようなシェル構造で物見の塔を作るという大変野心的なもので、当時の私も度肝を抜かれました。Kupla(Bubble)と名付けられたその塔は私もプロジェクトに関わり、その後実現に至りました。すでに20年以上が経つので、最近取り壊されるとか、壊されたとかいう噂を聞きましたが、真偽の程はわかりません。

そんなKuplaが表紙になった本が最近出たようです。

『模型で考える』(彰国社)平瀬有人 編著
https://amzn.asia/d/3RDGKUT

『模型で考える』と題されたその本には、日本では定番のスチレンボードではなく、木や金属や石膏といったナマの素材を使った模型の事例が数多く納められています。そのなかの事例の一つとして、このKuplaの1/20スケールの木の模型が収録されています。


わずか1Pのみの紹介ですが、この模型を見ると当時のことがいろいろと蘇ってきます。私自身もこの模型をプロジェクトメンバーと一緒に作ったからです。

このプロジェクトは、コンペに当選した学生を囲んで、毎週ケーブルファクトリーと呼ばれる工房に集まり、図面を描いたり模型を作ったりして、学生達の手で実現まで導くという日本ではあまり考えられない大胆な教育プログラムでした。

Villeの案があまりに斬新だったため、これをどう実現すれば良いのか皆目見当もつかず、とりあえず模型を作ってみようということになりました。そこで最初に作ったのが、書籍にも納められているこの1/20スケールの模型です。


表皮を覆う木造シェルの部分は薄くスライスした木を、瞬間接着剤を使ってベタベタととにかく張り付けまくったのを覚えています。できあがったのがちょうどクリスマス前のことで、みんなで「できたできた!」と喜び合ったのですが、それはこのスケールだからできたこと。随所に破綻した部分もあり、次はより詳細に、これをもう一廻り大きな1/5スケールで作ってみようということになりました。

こうやってスケールを上げながら、あくまで手仕事で実現性を検証しようというのが学生らしいというか、フィンランドらしいところでもあってとても印象に残っています。

日本なら高度な3D図面を作れば技術力のある建設会社が作ってくれそうな気もしますが、この建設も学生の手で行うという前提があったので、「模型で作れれば実物も作れる」というのは、シンプルですがとても確かな進め方でもありました。




上の写真でうずくまって作業をしているのが当時の私です。奥にいるのは、当時仲が良くて今でも親交のあるフィンランド人の友人Anttiです。その後日本人と結婚して、日本にやってくるときは家族で我が家にも遊びに来てくれます。

こうして巨大な模型ができあがりました!高さはおよそ2m、私の背よりも高いです。手前にあるのが、最初に作った1/20スケールの模型です。


Villeはこのプロジェクトを卒業設計(diploma)として学校に提出して晴れて卒業し、architectの称号も得ました。これはその後EUの卒業設計コンクールでグランプリも獲ったとか。1/5の巨大模型はポンピドーセンターに所蔵されたとVilleからは聞きましたが、ホントですかねぇ、、。

フィンランドは日本と違って、自分一人で設計したものではなくとも、チームをまとめ上げて一つの建築を作りあげる能力も建築家として大切な資質と考えているようで、こういうプロジェクトでも卒業を認めてくれるというのは本当に素晴らしいと思います。


ちなみにVilleはその後、Avanto Architectsという設計事務所を立ちあげ、現在ではフィンランドを代表する建築家のひとりになっています。彼ともフィンランドに行ったときにはよく顔を合わせる仲です。

今では日本でもLoyly(ロウリュ)というサウナ用語が一般化していますが、そんな「Loyly」という名のついた以下のサウナ施設を手がけたのもVilleが率いるAvantoです。たまに日本の番組でも紹介されることがあるので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。


そんな話を語り始めると、まだまだ語り足りない話が山ほどありますが、それはまたの機会に!本の表紙の話からついつい筆が走ってしまいました。

『模型で考える』 書店で見かけたら、ちょっと手に取ってみて下さい!

昨日駆け足で日本橋高島屋の「北欧のあかり展」へ。今週末に行く予定にしていたものの、近くまで来ていたので居てもたってもいられませんでした。

お目当てはもちろん、今回の展覧会のために提供した所蔵のレイヴィスカランプ。まさに我が子の発表会を見に行く親の心境と申しましょうか。監修の小泉隆さんからは、このレイヴィスカコーナーが大変好評とのこと。恐る恐る見に行きました。

背景に大きくプリントしたグッドシェパード教会の写真をバックに、本物の照明器具が浮かび上がるような幻想的な演出に感激しました。

JL341はこの間までうちの食卓に下がっていたものですが、この日のために磨きました。コードも自分で付け替えました。ヨカッタヨカッタ!レイヴィスカをこよなく愛する者として、こんな形で皆さんに見てもらえる日が来るとは。ルイスポールセンの照明は見たことがあっても、レイヴィスカの照明は初めて見る人もきっと多いのではないかと思います。出口の協力者クレジットには一人だけ個人、、ちょっと恥ずかしい。

遠藤悦郎さんによる映像もとっても素晴らしくて、グッとくるものがありました。もちろんほかの照明の展示も、照明だけでなく家具や建築と関連づけて展示してあったり、ビンテージから現代まで、北欧から日本まで、幅広い視点で実にバランスの良い展示構成だと思います。

出口で販売している図録もよくまとまっていると思います。展覧会は24日まで。是非足をお運び下さい!





日本橋高島屋にて、北欧照明の展覧会「北欧のあかり展」が3月5日(水)よりはじまります。

展覧会には、私が個人的に所蔵するフィンランドの建築家、ユハ・レイヴィスカによるオリジナル照明器具4点を出展させて頂いております。

また、フィンランド在住のデザイナーの友人、遠藤悦郎さんによるレイヴィスカの教会を撮影した美しい動画も会場で流される予定とのこと。こちらも私も楽しみにしています!

事前に会場構成を図面で拝見したのですが、九州産業大学の小泉隆氏が監修しているだけあって、百貨店の展覧会とは思えないほどの規模とクオリティでの開催で、私の出展以外にも数多くの北欧の名作照明が揃い、大変見応えのある展覧会になりそうです。

この機会に北欧の美しい照明の魅力に触れて頂きたく、是非会場まで足をお運び下さい!


ヒュッゲな暮らしをデザイン
『北欧のあかり展』


日本橋高島屋 S.C.本館8階ホール
2025年3月5日(水)~3月24日(月)
入場時間:10:30~19:00(19:30 閉場)
※最終日3月24日(月)は17:30まで(18:00閉場)

■詳細はこちらより
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/hokuou_akari/



うちの事務所にお越し下さったことのある方でしたら、ミーティングテーブルの上に下がっていたこちらの照明をご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。

これは実はレイヴィスカ設計によるグッドシェパード教会(2002)のためにデザインされたオリジナルモデルになります(非売品)。どうしてそれを私が持っているかの詳細は割愛しますが、とある経緯で入手し、それを見て一目でレイヴィスカによる照明であるとはわかったものの、それがどの建物のモデルなのか(レイヴィスカは設計した建物ごとにオリジナルの照明をデザインします)が長年わかりませんでした。

それが2018年にフィンランドに行った際にこれまで訪れたことのなかったグッドシェパード教会に立ち寄り、それが事務所の照明と同モデルであることにはじめて気づきました。ずっと生き別れになっていた兄弟に再会したような気分でした。



レイヴィスカをこよなく愛する私が長年気づけなかったのは、私が持っている作品集には収録されていない比較的新しい教会のモデルだったからでした。

レイヴィスカの建築は私にフィンランドに渡ることを決意させた建築です。それほど私はレイヴィスカの建築が自分の建築の原点であるとすら思っています。そんなレイヴィスカの照明を事務所に下げて毎日眺めることのできる幸せを思わずにはいられません。

それ以外にも我が家のダイニングには、レイヴィスカのJL341が下がっています。


こちらはヘルシンキのアルテック本店に行けば購入することができますが、日本国内では手に入らない照明です。私が設計する住宅のいくつかには、これを下げているので見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。

これも本当に美しい照明で、日々の食卓を彩ってくれています。
それ以外には、以下の照明器具を出展しています。

▲ JL2

▲ JL340

いずれも現在では日本国内では手に入りません。うちJL340は過去唯一国内で販売されたレイヴィスカランプで、当時はヤマギワが扱っていました。

会場にはそんな国内では(我が家以外では?)ほとんど見ることのできないレイヴィスカランプの数々も展示されていますので、是非この機会にご覧頂けると嬉しいです。

東京展のあとは、大阪、そのあとは九州に巡回するそうです。うちの事務所に戻ってくるのはまだまだ先になりそうです。(寂しい・・)