このたび、建築専門誌『建築知識』さんの同行取材でプレカット工事に行ってきました。現在、ちょうどとある現場の密着取材を受けているのですが、その流れで「プレカットは果たして工場でどう刻まれるのか?」という話になり今回の取材となりました。

エクスナレッジ社の誇るデコボコ・・もとい名コンビ、西山&峯山さん(以下N&M)、機会を作って下さりどうもありがとうございます。

行き先はポラテック板東工場。泣く子も黙る日本最大の、というか世界最大のプレカット工場です。もう行く前からわくわくが止まりません。

さて、住宅の現場では上棟前に必ず木組みのプレカット打合せがあります。

今どき手刻みの現場はほとんどなく、上棟と言えばプレカットが常識となって久しくなりました。プレカットとは昔は大工さんがシコシコとノミで削っていた仕口を機械加工で済ませる技術のことです。「ルーターをぐるぐるっと回して仕口を作るんでしょ?」とイメージとしては設計者は皆理解していると思いますが、実際に工場でその様子を見た人はどれほどいるでしょうか?

ということで行ってきました。
では特別に、そのプロセスをここでご紹介したいと思います!


ああ~っと!ここでN&Mよりストップがかかってしまいました。
なになに?「続きが知りたかったら、3月売りの建築知識4月号を買って下さい」って?ケチ。ちょっとくらいいいのにねぇ?

でも、ここで逆らうとN&Mに干されてしまいますので、大人しく従うことにします。でも特別にお許しを得て1枚だけ。


プレカット工場の中にも大工がいるって知ってました?

機械では対応できない細かい仕口や細工は、結局は人の手で刻まれることになります。よくプレカット打合せで出る「じゃあ、そこは手刻みで」という合言葉は、私は長らく「現場で対応する」の意味だと思っていたのですが、プレカット工場の中に手刻みの専門工がいたとは知りませんでした。

でもそれって、ちょっと痛快ですよね。結局は手刻み、と聞くと人はなぜか安心するものです。でも今回の工場見学でプレカットの見方がずいぶん変わりました。これはもう人智の結集というか、それは近未来の物づくりの風景を見ているようであり、大変刺激を受けました。おそらくそう遠くない未来には、手刻みでしかできない領域は相当狭くなっていることだけは確かです。そのくらいスゴいんですから。

機械でできるものは機械で、できないものは手刻みで。
顧客の要望は確実に形にしてみせる。

「できないなんて言わせない」とキッパリと言い放った品質技術課長のお言葉が実に心強く、カッコ良かったです。(そして頭の中ではNHK「プロフェッショナル」のテーマ)

他にもずっとプレカット業者の方に聞いてみたかったことを、根掘り葉掘り質問させて頂き、収穫も多く大満足の一日となりました。

詳しくは3月売りの「建築知識(エクスナレッジ)」4月号にて。こちらには、我々リオタデザイン設計による3月竣工予定のFP(S邸)の実施図面解説と、実際の現場プロセスも図解入りで掲載される予定です。(こちらのプレカットもポラテックさんです)

最後に、快くご対応くださいましたポラテックの畑中さま、下山さま、ポラスの青柳さま、どうもありがとうございました!N&Mさん、現場取材も引続きよろしくお願いします。

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sekimoto

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我々が描く設計図面とは別に、現場が図面を再作図する「施工図」というものが存在することを知ったのは、大学を出て設計事務所に入ってからだ。当時私は、入所後いきなり大手ゼネコンの現場監理担当者となった。

設計事務所が描いた図面のとおりに現場が施工するものと思っていた私は、それって二度手間じゃないの?とも思ったけれど、どうやら設計事務所が描いただけの図面では、技術的検証が不十分であるということらしい。

その施工図を我々がチェックし、承認する。だから必ずしも彼らの都合の良い施工にはならないのだけれど、現場監理はこの施工図確認と承認が肝であり、これを誤って承認してしまうと、何を施工されても文句は言えなくなるという恐ろしさもこの時知った。

そして独立した。現場には施工図をまず出させて、それを承認するのが監理である、と叩き込まれていた私は、零細の工務店に対してもそれを要求した。しかし彼らから返ってきたのは、「施工図ってなんですか?」というつれない返事だった。

どうやらゼネコンと住宅の現場では文化が違うらしい。住宅では設計事務所が描いた図面を、そのまま大工さんが施工する。つまり住宅の世界では施工図は設計事務所が描くらしい、ということをそこで学んだ。

そうなるとうかうかしていられない。いい加減な図面を描いても、誰もその後始末はしてくれないわけだから、大工さんが釘一本、棚一枚施工するまでのイメージを膨らませながら住宅の図面は描かなくてはならない。我々の「図面至上主義」の原点はここにある。

しかし、それでも優秀な現場監督は、住宅であってもキチッとした施工図を自ら起こす。

私は前述のような現実があったとしても、原則として全ての現場は施工図を起こすべきだと思っている。なぜなら、図面が頭に入るからだ。自分で反芻して図面を再作図してみると、設計者の意図や職人さんの段取り、搬入方法や施工手順など様々な問題があぶり出されてくる。

数学の問題を後ろの解答集を見てわかったつもりになっていても、いざ自分で解こうとすると頭がまっしろになってしまうことがある。台本を下読みして、稽古場で何度もリハーサルを繰り返す。これが現場における施工図の意味だと私は考える。

そんな中で、私は施工図能力ナンバーワンなんじゃないかと思っているのが、エークラフトの伊藤さん。過去には吉祥寺のmoiや、crann、SLIDEなどの内装施工をお願いしているのだけれど、この方にお願いするとそれはそれは丁寧な施工図が上がってくる。

惚れ惚れするのは、それがすべて手描きで、私のような手描き設計事務所出身者であっても唸らされてしまう美しさなのである。箱をどこで分節して、どこに配線・配管を通すのかについても、実に念入りに検討されている。

これはスタッフにも教育効果は抜群で、高いレベルの仕事というものはどういうものなのか、という基準を植え付けるには最適の教材になっている。我々もここまで描いて現場を唸らせたい、といつも思う。

15. 01 / 19

モデルさん

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sekimoto

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先週末は湘南台の家の取材がありました。この日も、ののちゃんは大活躍!喜んで被写体を買って出てくれました。髪飾りにもこだわりを見せ、現場はモデル待ち状態。

しかし来月売りの表紙が、自分でないことを知ったらどう思うでしょうか?


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sekimoto

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新しい計画の敷地に行ってきました.
クライアントよりご連絡があり,地名を聞いた瞬間「ハテ,聞いたことあるゾ」と思い,地図を見た瞬間「あっ!」となりました.私の母校,県立大宮高校がある場所だったからです.

敷地も母校の目と鼻の先.こうなるとおのずとテンションも上がるというものです.母校に錦を飾らなくては!勝手に「凱旋プロジェクト」と名付けることにしました.


氷川参道から左に折れると,校門まで一直線に延びる道があります.当時の通学ルートです.曲がった瞬間「懐かしい!」となるかと思いきや「???」.あまりに変わりすぎていて,私の当時の記憶の断片と何一つ重なるものがありません.

私の知るこの道はもう少し素朴な,古い住宅が建ち並ぶ通りだったような気がします.それが軒並み建て替わり,三階建ての住宅やRC造のマンションが建っているところもありました.すぐ近くにはさいたま新都心の高層ビル群.また通りのあちこちで更地化した土地や,工事中の住宅もありました.急速に代替わりの波が押し寄せているようです.


そんな時間の流れの中で,母校の校舎と校門だけは変わっていませんでした.今でも校門まで高校の入学発表を見に来た日を思い出すことができます.その佇まいは変わっていなくて,私はほっとしましたが,在校生や教職員の方はきっと老朽化に建て替えを望んでいるかもしれません.

校門前には石井商店.いわゆる駄菓子屋さんなのですが,こちらは通称「石デパ」と呼ばれて,お昼時,部活帰りには大宮高生の胃袋を満たしてくれる貴重な存在でした.こちらはモダンなRC造に建て替わっていました.その資本は,大宮校生が日々投下したあのお小遣いであったことだけは確かです.


本来なら不法侵入でしょうが,あけすけに開いている校門に一礼して,少し中にも失礼させて頂きました.目の前には立看板.

「祝全国大会出場・弓道部」
うそでしょ!?あの弱小クラブが?(失礼)

何を隠そう私は弓道部でした.私が県の新人戦で優勝を逃した時にはちょっとした騒ぎになったくらい,賞や上位大会とは無縁ののどかなクラブでした.
いや違うな.私の時も確かに強豪だったかもしれない.もしかしたら私が出たのも全国大会だったかもしれない,とにわかに都合の良い記憶の改変が起こっていますがなにか.

図々しくも,ずんずん敷地の奥に進むとありました.弓道場が.懐かしいなあ!
立派に建て替わっていて感激しました.そうそう,私の時もこんな立派な弓道場でね,とはならない.実にみすぼらしい小屋であったことだけは確かです.

母校に錦を.
凱旋プロジェクトに,今から意欲を燃やしています!

15. 01 / 06

てぬぐい

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sekimoto

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年が明けると建設会社の方達が,入れ替わり立ち替わりご挨拶にやってくる.ほとんどが玄関先で社名入りのタオルを手渡し,頭を下げたらすぐに帰って行く.

今日は私の不在中に,都内で集合住宅を施工して下さっている中堅ゼネコンの辰(しん)さんがご挨拶に見えたらしい.アトリエ事務所の仕事をどこよりも多くこなしておられる辰さんの,新年のご挨拶はさすがに洒落ていた.

建築家・永山祐子さんのデザインしたオリジナル手ぬぐい.ちゃんと「SHIN」の文字も入っている.建築的アイコンである階段をデザインモチーフにしながらも,日本の伝統美を表現している.よくできたデザインだ.

ところがよく見ると,パターン全体が真ん中でくびれて意味深な模様が入っている.ハテ,これはどういう意味なんだろう?と眺めていたら後ろで奥さんが「富士山じゃない?」と一言.あぁ,そうか!デザインにもう一ひねり.さすが永山さんである.

いたく感心したので,これをスタッフがわかるかどうか試してみることにした.

「ねえUくん,このパターンの意味わかる?」
「あ,それさっき辰さんが富士山だって言ってました」
「・・・」

あのねえ,そこ絶対言っちゃいけないとこだよね?
わかっていても一応首かしげなくちゃいけないとこだよね?
ねえ?ねえ?

証拠にそのあと
「ねえYくん,わかる?」
「さっき,Uさんの聞こえちゃいました」

もう台無し