スタッフの吉里くんが今月末(つまり今日)を最後に、事務所を離れることになりました。
といっても正確に言うとまだ退社ではなく、仕事のプラットフォームを自宅(分室)に移すというだけで、引続き7月竣工予定の「はねだしテラスの家」の完成までは、弊社監理スタッフとして働いてもらいます。
というわけで、私は来週も現場で彼と顔を合わせますし、正直実感はないのですが、彼のガランとしたデスクを見るとちょっと寂しくなってきますね。
彼はうちの事務所に来てもう3年になるでしょうか。うちに来たときから、すでに仕事のキャリアも実力も申し分なかったので、わざわざ苦労してうちで働かなくていいんじゃないの?という話をしたのを覚えています。
子供までいる彼は、毎朝子供と電車に乗り、途中下車して預けた自転車で託児所に送り、そこから再び出勤するという毎日を送っていました。そして誰よりも早く出勤し、誰よりも早く帰る。彼の描く図面は緻密かつ正確、そして手も早いので「もうできたの?」と驚かされることも多かったです。うちにとっても貴重な戦力でした。
この3年間で彼が担当した住宅は7件。先日竣工した「西荻の家」も彼の担当になります。特に西荻などは”緻密の極み”のような仕事でした。まさに彼には適任の仕事だったような気がします。
前述のように、まだまだ弊社スタッフとしての仕事は続くので、終わりではないのですが、まずは切りが良いところで「お疲れさまでした!」と送り出したいと思います。
うちを離れるスタッフは、他社への転職ではなく、ほとんどが独り立ちしてゆきます。修業時代の終着点としてうちを選んでくれたことは、いつも嬉しくありがたく思っています。彼にも彼なりに考える人生プランがあるようですが、他のOBスタッフ同様、これからも応援してゆきたいと思います。
15. 02 / 23
【西荻の家】オープンハウス終了!
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sekimoto
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> OPENHOUSE
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昨日「西荻の家」のオープンハウスを行い、本日お引渡しまで無事終えることができました。昨日ご来場下さった皆様、ありがとうございました。(今回のオープンハウスはブログにはアップせず、ご案内をお送りした方のみの限定公開とさせて頂きました)
またTさん、ご竣工おめでとうございます!
今日午後のお引越は無事済みましたでしょうか?お疲れさまでした。今日は楽しみにしていた新居のお風呂にゆっくり浸かって下さいね。
今回の家はこれまでの家の中で、ある意味最も贅沢な家かもしれません。
壁は漆喰、天井はレッドシダー、床はチーク、極めつけはダイニングテーブルで、長さ3.2mものチークの無垢テーブルを製作しました。
しかし、それらはけして思いつきでも、湯水のように安易にお金を使った結果でもありません。もちろんそれなりに費用がかかったことは確かですが、それら一つずつ、長い長い時間をかけて議論し、積み重ねていった結果なのです。
今回の家づくりには実に2年を費やしました。設計だけでも約1年以上・・。設計打合せの数は過去最多です。というのもクライアントが当時ご近所に住んでいたこともあり、気になることがあると、メールよりも先に事務所に足を運んで下さっていたからです。
それにしても長かった・・。
Tさんとはどんなに話をしても、底なし沼のように終わりがないのです。いつも楽しそうに打合せに向き合って下さり、議論は次第に洗練し、深く本質に行き当たるまで話が尽きることはありませんでした。
またTさんは、設計中私が最もお酒を一緒に呑んだクライアントでもあります。ご主人と二人で、また時には奥さんも交えて三人で、駅前の居酒屋で語り合いました。私がここまでプライベートでお付き合いしたクライアントというのも珍しいです。
現場に入っても、いろんな”事件”がありました。その都度冷や汗をかきながら現場でクライアントと協議したのも、今となっては良い思い出です。
Tさんはけして感情的にならず、熱心に耳を傾け我々の意見を尊重して下さいました。ご主人の純粋さと、奥様の細やかなお気遣いに、私はいつも癒やされていました。
オープンハウス後恒例の打ち上げでは、すべてが終わり、お互い解放された気分からいつも以上に饒舌に、話にもより賑やかな花が咲きました。
きれい事を言うわけではありませんが、私にとって仕事の最大のモチベーションは、クライアントに喜んでもらうことです。この日のクライアントは本当に嬉しそうで、何度も感謝のお言葉を頂いているうちに、私も熱いものがこみ上げてきました。
良い出会いと濃密なプロセスによって、素晴らしい結果を残せたことに我々も満足しています。Tさん、この家ともども、これからも末永いお付き合いをよろしくお願いします!
15. 02 / 20
表紙に登場!
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sekimoto
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> メディア
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エクスナレッジ社よりムック本が発売されました。
>> 「一生使える!住宅の高さ寸法」 /エクスナレッジムック
表紙は「緩斜面の家」これは嬉しいです!
緩斜面の家の写真に、関連寸法がすべて付記されています。
しかも目次ページには「TREEHOUSE」と「FILTER」の写真がそれぞれ使われています。というわけでこのクレジットの並びを肴に、一杯いけそうな気分です。
こちらは過去に「建築知識」という専門誌に掲載された内容をムック化したものなのですが、実例を25件、コラムを2本掲載して頂いています。
◇
それにしても最近のエクスナレッジ、タイトルに必死感があります。
「死んでも」
「死ぬまでに」
「一生使える!」
どんだけ必死なんでしょうか。
泥臭く点を決める岡崎のダイビングヘッドを彷彿とさせます。
嫌いじゃありません。
15. 02 / 19
何もないけれど、すべてがある
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sekimoto
category
> 仕事
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本日、快晴の空のもと「コートテラスの家」が上棟しました。
躯体が見えるなり、思わず声を上げました。本当に美しい躯体です。
上棟した姿を見ると、我が子が誕生したようにいつも感じます。そしてこう思うのです。「やっぱ、うちの子がいちばん可愛いな!」と。ただの親ばかですね。
子どもは生まれたときに全て備わっているといいますが、住宅の上棟にもまたそう思います。上棟には全てが備わっている。これまでの軌跡も、そしてこれからの道程も、すべてここには折り込まれているのです。まだそれが目には見えないというだけで。
だから美しいのだと思います。何もないけれど、すべてがある。
子どもの成長を願いながらも、いつまでも子どもであって欲しいと願う矛盾した親の気持ちを、私はつい上棟した純粋な躯体に重ねてしまうのです。
15. 02 / 16
そこにある危機
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sekimoto
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> 思うこと
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現在大手メディアが報じない社会問題とも言うべき問題が、建築業界を覆っている。その一つが職人さんの人手不足の問題。これは本当に深刻で、大工はもとより左官や鳶、ほぼすべての職種が足りていないという現状がある。
私の知る工務店の方は「仕事はあるし、見積もりを出せば取ることもできる。しかし職人がいないから請けることができない」という深刻な悩みを抱えている。この流れが進むと、本当に地域の工務店にとっては死活問題となるし、家づくりは益々職人がいなくてもできる工法へのシフトが進むだろう。建具もお風呂もキッチンも、すべて既製品のユニットを入れればできあがるという具合に。
これはそういうものを望まない建て主にとっても死活問題になるはずだ。そして何より、地域の工務店は大手ハウスメーカーとの違いを打ち出すことが難しくなってくる。これは工務店にとっては大きな危機である。
では我々はどうか。もちろん、我々にとっても上記の問題は大きな脅威であることは間違いないけれど、我々はそれと同じくらい大きな問題に直面している。現在、住宅の省エネルギー基準を見直す動きがある。
http://lowenergy.jsbc.or.jp/top/resource/house_slide1.pdf
非住宅や、住宅でも大規模な集合住宅などでは既にこれは義務化となっている。そして最後の砦となる、300m2未満の小規模住宅でも、2020年までに義務化されることになっている。
しかしこれを聞いても、一般の方はピンとこないかもしれない。
でもそれって省エネになるんでしょ?断熱性能が高まるってことでしょ?良いことじゃないの?
はい、ある意味良いことです。
でも私から言わせれば、我々がテリトリーとする首都圏地区に関しては今のままで十分なんです。現在も「次世代省エネルギー基準」というのがあって、うちの事務所でも”ほぼ”これに準拠して断熱性能を決めています。
これを守るととても暖かい家になります。入居したお施主さん、皆さん暖かい暖かいと言ってくれます。日中は陽だまりのようになります。でも冷え込む日には多少不満もあるでしょう。冬でも半袖で過ごせる北欧住宅とまではいきません。これが私が思う「十分」の意味です。
でも”ほぼ”と書きました。それはそれを守らないところがあるという意味です。例えば製作で木製建具を作ることがあります。テラスに全開放するような大型建具って憧れますよね。でも気密は良くないです。
あるいは玄関扉と言えば、やっぱり木ですよね。味わい深くて愛おしい家の顔になります。でも断熱等級はないです。モヘヤやその他で気密は取りますが、木は反るので徹底はできません。だから隙間風は勘弁してね、と言います。いいじゃないですか。時にちょっとした隙間風なんかより人の暮らしを豊かにしてくれることはあるはずなんです。
ところがこれ以上の断熱・気密の動きに社会が傾くと、こういったことすらできなくなる恐れがあるのです。
家を包む表皮の性能が問題になりますので、建築家住宅によくあるような、大きなガラスのファサードなんかも制約を受けるでしょうね。窓は小さく小さく、なるべく熱を逃がさないように作らなくてはならなくなります。
今ハウスメーカーなどが言っているゼロエネルギーハウスなんていうのは、その最たるものです。サランラップか魔法瓶の中で暮らすようなものです。私は反対です。そんな家、息苦しいと思います。
私は思うのです。省エネは社会全体の動きとしては必然だと思います。断熱・気密、大いに結構だと思います。でも強制はしないで頂きたい。私が設計する家だって、相当断熱と気密にはこだわってますが、前述のように意識的に徹底はしないようにしています。それは人間が持つ本質的な”ゆるさ”を家もまた併せ持つべきだと思うからです。
またそれは本来、建て主が選択すべきものです。お上が決める問題じゃありません。非住宅や、住宅でも集合住宅のように不特定多数の方が使うような建築は、高い基準でその性能は決められるべきかもしれません。しかし特定される個人の方が、個人資産で建てる家には、その自由は許されても良いのではないでしょうか。
誤解のないように言うと、断熱性能なんてなくても良いと言っているのではありません。その逆です。そうではなくて、それを勝手な解釈で押しつけないでくれと言いたいのです。いいじゃないですか、建て主が開放的な生活を望まれるのであれば。
煙草と同じです。禁煙のお店が増えて肩身が狭くなるのは仕方ないと思いますが、だからといって法律で禁止すべきではないと思うのです。(※ちなみに、改正法で木製建具が一律に禁止されるということではありません。誤解のないように。ただベクトルは益々時代と逆行してゆくということに危機感を感じるのです)
職人不足は工務店を殺す。
やみくもな法規制は設計事務所を殺す。
我々から自由な家づくりを奪わないで欲しいと思います。
私の知る工務店の方は「仕事はあるし、見積もりを出せば取ることもできる。しかし職人がいないから請けることができない」という深刻な悩みを抱えている。この流れが進むと、本当に地域の工務店にとっては死活問題となるし、家づくりは益々職人がいなくてもできる工法へのシフトが進むだろう。建具もお風呂もキッチンも、すべて既製品のユニットを入れればできあがるという具合に。
これはそういうものを望まない建て主にとっても死活問題になるはずだ。そして何より、地域の工務店は大手ハウスメーカーとの違いを打ち出すことが難しくなってくる。これは工務店にとっては大きな危機である。
では我々はどうか。もちろん、我々にとっても上記の問題は大きな脅威であることは間違いないけれど、我々はそれと同じくらい大きな問題に直面している。現在、住宅の省エネルギー基準を見直す動きがある。
http://lowenergy.jsbc.or.jp/top/resource/house_slide1.pdf
非住宅や、住宅でも大規模な集合住宅などでは既にこれは義務化となっている。そして最後の砦となる、300m2未満の小規模住宅でも、2020年までに義務化されることになっている。
しかしこれを聞いても、一般の方はピンとこないかもしれない。
でもそれって省エネになるんでしょ?断熱性能が高まるってことでしょ?良いことじゃないの?
はい、ある意味良いことです。
でも私から言わせれば、我々がテリトリーとする首都圏地区に関しては今のままで十分なんです。現在も「次世代省エネルギー基準」というのがあって、うちの事務所でも”ほぼ”これに準拠して断熱性能を決めています。
これを守るととても暖かい家になります。入居したお施主さん、皆さん暖かい暖かいと言ってくれます。日中は陽だまりのようになります。でも冷え込む日には多少不満もあるでしょう。冬でも半袖で過ごせる北欧住宅とまではいきません。これが私が思う「十分」の意味です。
でも”ほぼ”と書きました。それはそれを守らないところがあるという意味です。例えば製作で木製建具を作ることがあります。テラスに全開放するような大型建具って憧れますよね。でも気密は良くないです。
あるいは玄関扉と言えば、やっぱり木ですよね。味わい深くて愛おしい家の顔になります。でも断熱等級はないです。モヘヤやその他で気密は取りますが、木は反るので徹底はできません。だから隙間風は勘弁してね、と言います。いいじゃないですか。時にちょっとした隙間風なんかより人の暮らしを豊かにしてくれることはあるはずなんです。
ところがこれ以上の断熱・気密の動きに社会が傾くと、こういったことすらできなくなる恐れがあるのです。
家を包む表皮の性能が問題になりますので、建築家住宅によくあるような、大きなガラスのファサードなんかも制約を受けるでしょうね。窓は小さく小さく、なるべく熱を逃がさないように作らなくてはならなくなります。
今ハウスメーカーなどが言っているゼロエネルギーハウスなんていうのは、その最たるものです。サランラップか魔法瓶の中で暮らすようなものです。私は反対です。そんな家、息苦しいと思います。
私は思うのです。省エネは社会全体の動きとしては必然だと思います。断熱・気密、大いに結構だと思います。でも強制はしないで頂きたい。私が設計する家だって、相当断熱と気密にはこだわってますが、前述のように意識的に徹底はしないようにしています。それは人間が持つ本質的な”ゆるさ”を家もまた併せ持つべきだと思うからです。
またそれは本来、建て主が選択すべきものです。お上が決める問題じゃありません。非住宅や、住宅でも集合住宅のように不特定多数の方が使うような建築は、高い基準でその性能は決められるべきかもしれません。しかし特定される個人の方が、個人資産で建てる家には、その自由は許されても良いのではないでしょうか。
誤解のないように言うと、断熱性能なんてなくても良いと言っているのではありません。その逆です。そうではなくて、それを勝手な解釈で押しつけないでくれと言いたいのです。いいじゃないですか、建て主が開放的な生活を望まれるのであれば。
煙草と同じです。禁煙のお店が増えて肩身が狭くなるのは仕方ないと思いますが、だからといって法律で禁止すべきではないと思うのです。(※ちなみに、改正法で木製建具が一律に禁止されるということではありません。誤解のないように。ただベクトルは益々時代と逆行してゆくということに危機感を感じるのです)
職人不足は工務店を殺す。
やみくもな法規制は設計事務所を殺す。
我々から自由な家づくりを奪わないで欲しいと思います。
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