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梅雨に入る前に撮影して頂いた,昨年竣工した住宅の写真(2題)を以下の作品ページにアップしました.それぞれ別々の写真家にお願いしていますが,それぞれの個性と住宅の特徴がよく表れた写真となっています.どうか写真から実際の空間を思い浮かべてみてください.


〇白岡の家/S邸 (2012年9月竣工) 撮影:後関勝也
https://www.riotadesign.com/works/12_shiraoka/



〇DONUT/K邸 (2012年12月竣工) 撮影:新澤一平
https://www.riotadesign.com/works/12_donut/



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いきなり梱包にくるまれた荷物が届いた.愛媛に事務所を構えるうちの元スタッフ二宮からだった.中からは小さな椅子があらわれ,同封された手紙にはこう書かれていた.

「大変遅くなりましたが,事務所開設10周年のお祝いです.この椅子は松村正恒さんが日土小学校の図書室のために設計したものです.なかなか精度が上がらず今までかかってしまいました.ようやく完成しましたので第一号をお贈りします」

すぐに電話して久しぶりに二宮と話をした.そういえば,去年うちの10周年イベントをやった際,彼からは贈りたいものがあるのだけれど,間に合わないからもう少し待って欲しいと言っていた.もう忘れかけていたのだけれど,このことだったのか.

日土小学校は愛媛県八幡浜市に建つ古い木造の小学校.築57年.建築的かつ文化的な価値を認められDOCOMOMO20選や,昨年はワールドモニュメント財団よりノール・モダニズム賞なども受賞した.今では愛媛が世界に誇る建築遺産のひとつとなっている.

二宮はこの小学校の出身だ.彼はここで少年期を過ごし,今またこの近くで事務所を構えている.彼の大学の卒業設計も日土小学校がテーマだったし,地元出身の建築家として保存活動にも尽力した.彼の母校に寄せる愛着は並大抵のものではない.

彼はこの椅子を製作するにあたって,まず当時のオリジナルの図面を入手し,知人の突板職人(家具職人ではない)に頼んで,長いこと試作を繰り返していたらしい.なかなか精度が上がらず(そりゃそうだ,突板職人だもの)何度もやり直しを指示して,ようやく当時のオリジナルに近いものができたという.

実際に日土小学校の図書室にも,建設当時のこの椅子が残っている.ところが彼に言わせると,後ろ脚の形状など,この時点で既に松村氏のデザインより改変されてしまっているのだという.彼はそれを忠実にオリジナル図面に基づき,釘の打ち方ひとつに至るまでこだわって当初のデザインを再現した.

二宮に自分の椅子もあるのかと訊くと,試作段階のものは何脚かあるが,完成形といえるものはこれしかない.ようやくそれができたので贈ったのだという.だからおそらく世界に一脚.泣かせる男である.



△当時の椅子が残る日土小学校の図書室.こちらの椅子は背もたれにつながる後ろ脚が直線になっている.松村正恒氏のオリジナル図面では,ここは「く」の字型に曲がっているのだそう.

13. 05 / 31

シンジラレナイ

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数ある職業の中でも,最も自分に遠い仕事だと思います.

ちなみにこの建物のガラス張りエレベーターでは,階数表示部分から一切目を離さないようにして利用しています.
昨日,去年竣工した住宅の撮影があり,撮影の合間にお施主さんといろいろお話しをさせて頂いたのだけれど,その際にこんなお話しを頂いた.

「敷地を見に来て頂いたのはそう何度もなかったのに,できあがった住宅はプライバシーに配慮されており,絶妙に敷地にはまっていてびっくりした.実際の生活も要望に適っていた.プロにこういうことを言うのは失礼かもしれないけれど,プロだなあと思った」

もちろんとても嬉しく,こそばゆい気持ちではあったけれど,言われてみると我々も意識してそうした部分もあったけれど,意識せずに”たまたま”そうなった部分もあったような気がする.

これは不思議な感覚で,言われると自分でもどうしてそうしたんだろうと設計に説明がつかない部分も多い.でももしかしたら意識してそうした部分よりも,”たまたま”そうなったという部分が,実は設計において最も肝要な部分なのだとも言えるかもしれない.

意識してそうした,という部分は左脳(論理)的思考でそうしたということだ.実際に目で見て,話を聞いて,図面上で確かめてそうしたという部分.言葉で説明できる部分だとも言える.これは基礎を身につければ誰でも出来るし,建築専門誌で建築家が試みている説明もこれにあたる.大学で学生に教えているのもそういうことだ.

でも”たまたま”そうなった部分というのは,自分ではコントロールできない部分だ.だからこれは教育もできないし,説明もできない.意識ではなく無意識で,左脳ではなく右脳(直感)で選択していた部分があったからなのだろう.

そして実は,それこそが建築の本質なのかもしれないとも思う.
限られた情報量をわかりやすく説明したり,それをさばくときには論理的思考は非常に有効だけれど,大量の相矛盾する要素を同時に成立させるためには論理なんてこれっぽっちも役に立たない.時には論理をすっとばして,ショートカットで本質を結びつけるという直感的思考が重要になる場面が出てくる.

言語化されない部分が大切,というのはお施主さんからのご要望もそうで,膨大な要望書を作って頂くよりも,むしろ一切考えないで無防備に向き合ってくれた方が,その方の本質をつかまえることができる.それも何度も会う必要はなく,最初に会ったときが一番大切で,第一印象にその方の全てが表れるといつも思う.

とはいえ,私の自分でもコントロールできない直感的思考を,頭をぱかっと開いて人にお見せするわけにもいかないので,自分なりにそれをわかりやすい言葉に置き換えて,目の前のお施主さんに語って聞かせているわけだけれど.でもやっぱり言葉は遠い.時に誤解を招くこともある.

とにかく伝えたいことはひとつで,
「大丈夫ですよ.結果的にすべてうまくいきます.安心してお任せ下さいね」
ということなんです.

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矩計(かなばかり)図は楽しい.矩計図とは断面詳細図のこと.
今では多くの図面をスタッフに譲り渡すようになってきたけれど,これだけは譲れない.複雑に絡み合った要素をひとつひとつ整理しながら,ボタンをぱちんぱちんと填めていく.あぁー気持ちいい!!地に足が着く感覚というのはまさにこういう状態を言うのだろう.

「矩計図って楽しいよね!」と思わずスタッフに問いかけるもびみょーな反応.「すみません,共感できませんでした」とぽつり.ウッシー頼むよ!