14. 02 / 04
小川の家
author
sekimoto
category
> 仕事
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48

リフォームの相談に乗って欲しい.大学時代の友人からそう連絡があった.
大学を卒業して,彼に最後に会ったのがいつだったかは覚えていないけれど,少なくとも15年以上ぶりくらいにはなっていたかもしれない.彼は都内の郊外に中古の住宅を買い,自分たちでリフォームしながら暮らしていた.その手作り感溢れるリフォーム工事の痕跡といい,暮らしぶりといい,彼自身建築に携わった仕事をしているとはいえ,なかなかのものだった.
さて旧友からの頼みではあったけれど,どうしたものかと腕を組んだ.ご多分に漏れず予算は限られていて,とても全面リフォームとはいかなそうだ.結局自分たちでは手に負えない浴室のリフォームのみに限定する,ということにはなったものの,仕事として請けてしまうと,うちもけして安くない設計料を頂かなくてはならなくなる.
最初は簡単なスケッチを描くから,それで業者にやってもらってはどうか?とも話していたのだけれど,乗りかかった船ということで,結局我々の方でしっかり図面を引き,監理までやって引渡す流れとなった.
シンプルな納まりだけれど,それでもしっかり打合せをして現場にも足を運んだ.最後にきれいになった姿を見るのはやっぱり気持ちが良い.大学の同級生(建築学科の同窓)の家を設計させてもらうのは,これで3件目になる.卒業して久しいのに,それでも私のことを思い出してもらえるというのはやはり嬉しいものだ.
正直,駆け出しの頃はこういう仕事が多かったのだけれど,今ではこういう仕事はできなくなってしまった.あまりに忙しくなってしまったことと,設計料がかなり割高になってしまうので,我々も後ろめたい気持ちになってしまう(今回は完全にお友達価格です笑).
今回は担当につけた新人の山口くんにとっても,良い経験になったかもしれない.私にとっても,ささやかながらちょっと初心に返ったようなお仕事だった.


Before(施工前写真)



建設受難の時代がやってきた.
肌で異変を感じ始めたのは,一昨年ごろからだ.とある現場で型枠大工がいないという問題で,工期が延びて先行きが見えないということがあった.
これまでのキャリアで,型枠大工がいないなどあり得ないことで,何かの間違いだろうと思ったのだけれど,実際調べると深刻で,同様の問題があちこちで起こっていた.型枠大工がいないとコンクリートが打てない.住宅でも基礎が打てなければ話にならない.
型枠大工の不足は今もなお深刻だ.でもそれだけではない.今建築業界はあらゆる職人が危機的に不足している.住宅の現場では心臓を担う大工さんもいない.内装業者も不足している.設備業者も手薄になっている.
原因の背景にあるのは,短期的には消費増税による駆け込みももちろんあるのだけれど,構造的に高齢化した職人がどんどん廃業し,若い職人が育っていなかったり,東北の復興に取られてしまっているという事情もあるようだ.
加えて,今資材がガンガン値上がりしている.そして不足もしている.
合板や断熱材がないといった震災直後のような状況に加えて,耳を疑うのは柱や土台に使う桧や杉も不足しているということ.かつて,日本の建築の歴史において,木造の柱や土台がないなどということがあっただろうか.もちろん,これも短期的には消費増税による駆け込みもあるけれど,日本の林業の衰退,そして投機目的で意図的に木材を買い占めたり出し惜しんでいるという,嘆かわしい背景もその構造にはあると言われている.
うちの事務所で現在進んでいる現場もまた,深刻な工程遅延に悩まされている.この流れを読み切れていなかった工務店にも非はあるだろうが,話はそう単純ではない.
先日聴きに行ったとある建築家の講演会でも,設計は終わっているのに,職人がいなくて未だに着工することすらできない住宅があるとおっしゃっていた.金額の問題ではなく,今本当に大工さんがいないのだ.あぁ同じ問題だと思った.
先日見た報道では,安藤忠雄さん設計による小中学校も,同様の背景から,着工はおろか見積りの入札すら入らず,業者が辞退してしまう事態が続いているという.もちろん安藤さんだけではなく,現在全国的にこの問題は広がっている.
[安藤忠雄さん設計の校舎、入札不成立3度の事情]
2014年1月29日 YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140129-OYT1T00551.htm
先に消費増税の影響と書いたが,では4月以降は解消されるのかと問われたら,私は楽観できないと思う.なぜなら来年10月には消費税が再び上がる可能性もあるし,東京オリンピックも決まった.2020年に向けて,都内では数年後から空前の建設ラッシュがはじまるのが目に見えているからだ.
今設計のご相談に見えている方には,数年前まではかろうじて可能だった厳しい予算帯の住宅も,今は悲観的なお伝えの仕方をせざるを得ない状況にある.資材に加えて職人の労務費も高騰し,どこを見渡しても楽観できる要素がないのだ.
それでも,「いつが建て時か?」と問われれば「今しかない」となる.
理由は前述の通りである.我々もとにかく目の前の仕事に全力投球するほかないのだ.
景気が上向きになったからといって浮かれているのはごく一部の人たちだ.現場はそれどころではない.本来の「ものづくり」の本質とはかけ離れた場所で起こっている現在の社会状況と,それがしばらく続くであろう見通しに,私はつい暗い気持ちになってしまうのだった.
肌で異変を感じ始めたのは,一昨年ごろからだ.とある現場で型枠大工がいないという問題で,工期が延びて先行きが見えないということがあった.
これまでのキャリアで,型枠大工がいないなどあり得ないことで,何かの間違いだろうと思ったのだけれど,実際調べると深刻で,同様の問題があちこちで起こっていた.型枠大工がいないとコンクリートが打てない.住宅でも基礎が打てなければ話にならない.
型枠大工の不足は今もなお深刻だ.でもそれだけではない.今建築業界はあらゆる職人が危機的に不足している.住宅の現場では心臓を担う大工さんもいない.内装業者も不足している.設備業者も手薄になっている.
原因の背景にあるのは,短期的には消費増税による駆け込みももちろんあるのだけれど,構造的に高齢化した職人がどんどん廃業し,若い職人が育っていなかったり,東北の復興に取られてしまっているという事情もあるようだ.
加えて,今資材がガンガン値上がりしている.そして不足もしている.
合板や断熱材がないといった震災直後のような状況に加えて,耳を疑うのは柱や土台に使う桧や杉も不足しているということ.かつて,日本の建築の歴史において,木造の柱や土台がないなどということがあっただろうか.もちろん,これも短期的には消費増税による駆け込みもあるけれど,日本の林業の衰退,そして投機目的で意図的に木材を買い占めたり出し惜しんでいるという,嘆かわしい背景もその構造にはあると言われている.
うちの事務所で現在進んでいる現場もまた,深刻な工程遅延に悩まされている.この流れを読み切れていなかった工務店にも非はあるだろうが,話はそう単純ではない.
先日聴きに行ったとある建築家の講演会でも,設計は終わっているのに,職人がいなくて未だに着工することすらできない住宅があるとおっしゃっていた.金額の問題ではなく,今本当に大工さんがいないのだ.あぁ同じ問題だと思った.
先日見た報道では,安藤忠雄さん設計による小中学校も,同様の背景から,着工はおろか見積りの入札すら入らず,業者が辞退してしまう事態が続いているという.もちろん安藤さんだけではなく,現在全国的にこの問題は広がっている.
[安藤忠雄さん設計の校舎、入札不成立3度の事情]
2014年1月29日 YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140129-OYT1T00551.htm
先に消費増税の影響と書いたが,では4月以降は解消されるのかと問われたら,私は楽観できないと思う.なぜなら来年10月には消費税が再び上がる可能性もあるし,東京オリンピックも決まった.2020年に向けて,都内では数年後から空前の建設ラッシュがはじまるのが目に見えているからだ.
今設計のご相談に見えている方には,数年前まではかろうじて可能だった厳しい予算帯の住宅も,今は悲観的なお伝えの仕方をせざるを得ない状況にある.資材に加えて職人の労務費も高騰し,どこを見渡しても楽観できる要素がないのだ.
それでも,「いつが建て時か?」と問われれば「今しかない」となる.
理由は前述の通りである.我々もとにかく目の前の仕事に全力投球するほかないのだ.
景気が上向きになったからといって浮かれているのはごく一部の人たちだ.現場はそれどころではない.本来の「ものづくり」の本質とはかけ離れた場所で起こっている現在の社会状況と,それがしばらく続くであろう見通しに,私はつい暗い気持ちになってしまうのだった.
14. 01 / 28
想いの総量
author
sekimoto
category
> 思うこと
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48

とある更新書類で過去の仕事をまとめていて,それによると過去5年間で23件の仕事(ほとんどが住宅)をしていることがわかった.けれどそのどれもが途方もなく時間と手間をかけた仕事で,当時を思い出すとどれも目眩がしてしまうほどだ.
事務作業だから,床面積とか工事費とかどんどん打ち込んでいかないといけないんだけど,このたった一行だけの記載に,走馬燈のようにいろんなことを思い出してしまう.あんなことやこんなこと.とても一行では書き切ることのできないあんな事件やこんな修羅場の数々….そんなことを考えていたら本当に気持ち悪くなってしまって,人の想いの総量に押しつぶされそうになってしまった.
その時その時は逃げ出したくなるほどの重圧や途方もない作業量だったりしたけれど,過ぎ去ってみればみんな過去の出来事.そして最後に作品だけが残る.一生これを繰り返していくのかと思うと,これまた気が遠くなる思いがする.今大変なあの仕事やこの仕事も,未来にはたった一行で記載されるのだろう.
あぁ,早く未来から今を振り返りたいものだ.
14. 01 / 27
【湘南台の家】二世帯住宅オープンハウス
author
sekimoto
category
> OPENHOUSE
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48

藤沢市で現場進行中の住宅「湘南台の家」がまもなく竣工致します.
オープンハウス(内覧会)を行いますので,ご興味ある方は是非足をお運び下さい.
敷地西側が川に向かって大きく傾斜し,川辺の桜並木と遠景が一望できる敷地に建つ二世帯住宅です.世帯は階によって分けられ,1階の親世帯は近隣や庭とのつながりを大切に,2階の子世帯はプライバシーを守り,開放感のあるつくりとなっています.
親子世帯はそれぞれ行き来が可能で,所々に共有された空間を持ち合うことで,世帯間が交流しながら気兼ねなく住める家としています.西側に大きくせりだしたバルコニーと深い庇からは,高台からの絶景を望むことができます.絶え間ないそよ風を受け止める眺望の家です.
【湘南台の家】
→大雪のため延期します
2月9日(日) 13:00~17:00ごろまで
とします.(2/7 22:00)
場所:神奈川県藤沢市湘南台
小田急線|横浜市営地下鉄ブルーライン
「湘南台駅」西口下車.徒歩で約10分.
見学ご希望の方にはご案内をお送り致します.関本までメール下さい.
riota@riotadesign.com

14. 01 / 23
新種の…
author
sekimoto
category
> 子ども
Warning: Undefined array key 1 in /home/riotadesign/riotadesign.com/public_html/wp-content/themes/rd/blog/cat_sekimoto.html on line 48

お正月に宮古島に行きまして,天気が悪いので家族で焼物体験などをしていたのですが,その時に作ったシーサーが無事焼かれて送られてきました.
負けた.見た瞬間にそう思いました.
左側が私.さすが大人です.上手です.
右側が息子.もう作っていたときはぐちゃぐちゃで,端から見ていて何を作っているのかわかりませんでした.実は目の前には「お手本」が置かれていて,それを良く見ながら作れば初めての人でもそこそこ上手く作れるという代物なのですが(そして私はお手本通り),息子の手では,すでにお手本から遠く離れた”なにか”が生まれはじめていました.お店の人もこれには苦笑い.
あのさぁ,もうちょっとよく見て作ろうよ.助言のつもりで何度か声をかけましたが,本人的には目の前のお手本のように作っていたつもりだったようです.ところが手先が不器用なばかりに,結果的には似ても似つかないものが出来上がりました.
ただ,これが実にイイなあ…と.
でも正直焼き上がってくるまではわかりませんでした.それまでは自分のはなかなか良いものができたと思い込んでいたわけですが,なんというか型にはまっていて退屈で,心に響くものがありません.ところが息子のシーサーは,なんというか見ているだけで心がザワザワしてきます.もはやシーサーですらないわけですが笑,そんな定義のつけられないところで,この新種のトロルは不敵な笑みを浮かべて唸っています.う~ん,負けた.
アートも建築も,なんでもそうだと思いますが,先天的に器用な人は忠実に定義を踏んで,求められている結果を最短距離で出してゆきます.不器用な人はそれを見て敵わない,自分は向いていないと思うことでしょう.けれども,不器用であるが故に型にはまらず(はまれず),結果的に型破りなものを生み出せる(生み出してしまう)力は後者の人にあるような気がします.
息子に「おまえ,才能あるぞ!」と声をかけると,「知ってる」と返されました.
やっぱり生意気だな.

