15. 06 / 16

インタビュー

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sekimoto

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> メディア
> 仕事



先週末取材があった。
取材では必ずクライアントへのインタビューがあり、私との”なれそめ”について聞かれることになる。私はこういう時はつい恥ずかしくなってしまうのだけれど、このクライアントのエピソードはなかなか強烈なのでここでご紹介したい。

家づくりを決心してから、夫婦でどの建築家にお願いするかお互いに候補を挙げようということになった。つまり夫婦内コンペだ。お互い手の内は一切見せず、それぞれ別々のアプローチで好みの建築家をピックアップしていった。

それから半年、お互い3名に絞っていざコンペ。ご主人はパワーポイントを駆使し、奥様は付箋を貼った雑誌の記事を積み上げる。結果、お互い本命と踏んでいた建築家がかぶっていた。それが私だったと。

実は、同じような経緯で私に決めて下さったというケースが過去にもあった。

2010年竣工の「百日紅の家」では、奥様が出産した病院のすぐ近くにあったカフェに通うたび、そのカフェを設計した人のことが気になり私に行き着いた。ご主人はご主人でとある雑誌を見て、この人に頼みたいと思ったそうだ。同時に告白すると二人とも同じだったという。大変光栄なことだ。

ご夫婦というのは、お互い性格が違うように見えて大きな幹の部分を共有しているのだと思わされることが、この仕事をしているとよくある。もちろんこのような”ビンゴ”のケースは、引渡した後のお付き合いを含めて、”第三の夫婦”と思えるほどの抜群の相性を発揮する。お互いにとってこれほど幸せなことはない。

この日のクライアントのエピソードで、もう一つ嬉しいお話があった。

これは私も初耳だったのだけれど、私からプラン提案を受けて、ご夫婦としても一応の”チャレンジ”を試みたそうだ。つまり、トイレをこっちにしてみたらどうか、キッチンをこっち向きにしてみてはどうかと。しかしどれも全くはまらなかった。提案を受けたプランがいかによくできているかを思い知ったそうだ。そしてプロだなあと思ったという。

どうりで、このクライアントはその後一切のプラン変更を口にしなかったわけだ。裏ではそんなこともあったのかと。でもそんな経緯があったとはいえ、最後まで私の考えを尊重して下さったこと、全幅の信頼を置いて下さったことは本当にありがたかった。

脳科学者の茂木健一郎氏によると、人は忘れることによって記憶が思い出に変わるのだという。脳は時間が経ち、小さな出来事やディテールを忘れることにより、その「意味」のみをそこに留めるのだと。

家づくりが過ぎて生活に変わったころ、こうして当時を振り返るお話はとても楽しい。我々の仕事の意味を、私は知ることができるような気がする。

15. 06 / 15

9:11

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sekimoto

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> 思うこと
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私は9月11日生まれであるが、時計を見ると9:11であることがよくある。
1度や2度ではない。

朝気配を感じて、その方向を見るとかなりの確率で9:11である。
昨晩も、風呂から出て時計を見たら9:11であった。

この話を何気なくスタッフにしたら共感していたので、
どうやら私だけではないらしい。

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sekimoto

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> メディア
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現在発売中の「Discover Japan」に「隅切りの家」が掲載されています。

[Discover Japan 7月号]
http://discoverjapan-web.com/new/201507

この雑誌はインテリア誌ではなく、世界に誇れる日本文化の魅力のようなものを発信する媒体のようですが、今回は「家づくりの新常識」という特集にて取り上げて頂きました。

取材では、ほんの1年前にお邪魔した際は生まれて間もなかった赤ちゃんが、もうすっかり”子ども”になっていてびっくりでした。いやはや、我々は相変わらず何も成長のない大人たちです・・。

満開の桜の風景も魅力的ですが、新緑の光景もまた緑のカーテンのようで気持ちが良さそうです。どうか書店でお手に取ってご覧下さい。

15. 06 / 09

レクサス

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sekimoto

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> 思うこと
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その昔、とあるクライアントがいらした。この方は以前からうちのオープンハウスにも顔を出し、北欧つながりのキーワードでも繋がっていた方だった。

ある日、この方がとうとう満を持してうちに設計相談にいらした。私は歓迎した。大いに盛り上がった打合せの最後に、しかしクライアントはこう切り出したのだ。実は別の建築家にも声をかけている、と。要はコンペというわけだ。

そのコンペは、結論から言うと負けた。

そのクライアントはとてもウマの合いそうな方だったし、その人の態度はまるで私を本命視しているようでもあった。それを真に受けた私がウブだったのかもしれないが、まるで相思相愛と信じた相手に、確信を持って告白したらフラれたくらいのインパクトで、私は深く落ち込んだ。

その方のその時の断り方もまた、その後の私の心に長く尾を引くことになる。言い換えるならば「一番好きなのはあなただけれど、一緒にはなれない」的な。私ではなく誰に頼んだかは結局聞かなかった。

それから一年ほど経ったある日、ふとこのことを思い出した。

あの時決まっていれば、そろそろ竣工する頃だな。その日、どうしてそんな事を思ったかはわからない。私に未練がなかったといえば嘘になる。しかし思いが引き寄せたというには出来過ぎな話だが、その日私が久しぶりに自分の設計したカフェに行くと、扉を開けて出てきたのはそのクライアント本人だったのだ。

往年のトレンディドラマ「東京ラブストーリー」なら、あのBGMが流れるシーンであろう。衝撃的な再会。なぜ私のカフェに?あいつと幸せになったんじゃなかったのか!?これがドラマなら、まさに雨の中傘もささずに、という状況である。

「あっ関本さん…」
「あの、どうしてここに…」
「あ、あの…もうすぐ完成するんです。もしよかったら…あの、オープンハウス来てくれませんか?」

何を言っておるのだ。まさに別れた女性から「結婚式には来てね」と言われたようなものではないか。

「も、もちろんですとも!案内送って下さいね」

かくして私はノコノコとオープンハウスに出向いて行ったのだ。羨望と祝福の声が飛び交うその場所で、私は作り笑顔を浮かべていた。クライアントもいらした。「ご竣工おめでとうございます!素晴らしい空間ですね」(…幸せになれよ)

しかし私の心を真に乱したのは、実にその後のことであった。

その家は某著名建築家の設計により完成を迎え、数ヶ月後には建築専門誌にも掲載された。大胆かつ斬新な空間構成。大幅に誌面も割かれていた。そのどれもが、当時の私には持ち得なかったものだ。清々しいまでの完敗…。

しかし!
私は見逃さなかった。その写真に写っていたその生活風景を。そこには当時の私が好んで用いていた素材が散りばめられ、我が家と同じデザインの家電があり、私の好んだ北欧デザインや家具が並んでいた。購入元も私と繋がりがある場所からだった。この空間は…私の空間ではないか!

その時に悟ったのである。
「一番好きなのはあなただけれど、一緒にはなれない」という言い回しの真意を。私はその時、みすぼらしい男が、走り去るレクサスの後ろ姿を見送ったような心境であった。そしてこう心に刻んだのである。「今に見てろ、見返してやる!」と。

(「伝説の日本の社長」より)

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今年3月に竣工した川越市 FP(S邸)の写真をアップしました。

https://www.riotadesign.com/works/15_fp/#wttl

小さな中庭とスキップフロアのある住宅ですが、とても丁寧に美しく住みこなして下さっていて、写真のひとつひとつからも、クライアントの空間への愛情のようなものが伝わってきます。撮影にも楽しくお付き合いくださいました。

写真家に撮影をお願いする楽しみは、設計者ですら気づいていない建物の魅力や側面を発見して下さる点にあるように思います。

今回の写真家は新澤一平さん。いつも美しい写真を撮って下さいますが、今回の写真にもはっとさせられました。この建物って、こんな空間だったんですね。私には見せない表情を、この日は特別に新澤さんには見せてくれたようです。

素晴らしい写真をありがとうございました!