観音崎に建つ戦没船員の碑まで。吉村順三さんによる設計だが、担当に当たられたのは当時吉村さんのもとで助手を務めておられた益子義弘さん。竣工は1971年なので私が生まれた年になる。

以前から興味を持っていたところ、住宅建築4月号に益子さんが寄稿された記事をきっかけに、背中を押されるように足を運んだ。

時間が止まったようだった。記事の写真で見る碑は汚れひとつなく、海風に洗われる場所に50年以上も建っているとはとても信じがたかったのだけれど、実際に足を運んで納得した。考え抜かれたディテールと素材の選択。この場所にこの碑のために込められた無数の設計上の配慮と思いの集積を感じた。

特に白磁タイルの扱いはこれまで見たことのない繊細さで、野暮な解説は避けるけれどとにかく衝撃的だった。これが50年超の風雨に耐える素材の扱い方なのだとあたらめて感じ入った。

三角形の折り紙を軽く折り曲げただけのような造形でありながら、視覚的な調整が随所になされ、どの角度から見ても同じ見え方がない。何より海景へとつながる動線の導き方が絶妙で、飽きることなく何度も上がったり下がったりしながらそのシークエンスを体感に刻んだ。

先の大戦では軍艦のみならず、非武装の民間の商船が敵国に狙われ沈められた。その数7200隻、6万人が犠牲になったという。今は平和なその海を臨むこの場所に、その犠牲者や遺族に寄り添う静かで懐の深い碑のあり方にただ心を打たれた。小春日和、心安らぐ良い休日になった。