
お盆休みの最終日、渋谷で開催中の建築家・内藤廣さんの展覧会へと足を運んだ。島根で開催していた同展覧会をその為だけに足を運ぶか本気で悩んで結局行けなかったのだけれど、渋谷で開催してもらえて本当にありがたい。
にも関わらず、油断してたら会期があと一週間ちょっと!慌てて事務所を飛び出した。
私が就活に悩んでいた大学4年生の頃、建築界がまだ弾けたバブルの尻尾を引きずっていた中、まったく異質なことをやっていた若い建築家がいて、それが内藤廣さんだった。海の博物館で学会賞を取った直後だったのだけれど、正直アールトをはじめて見た時の印象に近くて、何が良いのか最初はよくわからなかった。
でも筋の通った文章が当時の建築家の中ではとても真っ当に感じて、アポイントを取って九段下の事務所で面接をして頂いた。内藤さんは当時キレッキレで、まわりくどい説明をしていると、遮るように「あーわかった。で?」と結論を促された。あの時は緊張した。
私の持っていったポートフォリオの課題では、流行りに乗った軽やかな屋根には目もくれず(ヤレヤレという顔をされた)、時流に逆らって和紙に鉛筆のドローイングで仕上げた課題には「これはいいな!」と褒めてくれた。ただ当時は学会賞受賞直後で、ひっきりなしに入所希望者が来ていたようで、結局は入所出来ず。この年に入所されたのが田井幹夫さんだった。
それでも、その後いろんな形で内藤さんとはニアミスを繰り返すことになった。SADIでは25周年記念講演会を企画して、内藤さんに特別にアールトを語ってもらった。私が中心になって進めた企画だったけれど、見事に内藤さんは私のことは覚えていなかった。その後もいろんなところで、、この話は長くなるので割愛。
展覧会はとても良かった!勇気がもらえたし、胸熱にもなった。内藤事務所の細部まで表現する美しい図面も好きだ。旅先で近くに作品があれば必ず観に行く。実作で深く引き込まれるのも内藤さんの建築。
ついぞ働くことはなかったけれど、いやそれだからこそ、内藤廣さんの建築は私にとって生涯追い続ける永遠の背中のような存在かもしれない。夏休みの最後にとても良いものを見せてもらった。明日からも頑張ろう!
『建築家・内藤廣 赤鬼と青鬼の場外乱闘 in 渋谷』
https://naito-shibuya2025.shibuyabunka.com/
会期:~8月27日まで
