24. 07 / 03

スカスカの図面

author
sekimoto

category
> 仕事
> 思うこと


先日図渡ししたA工務店。しげしげと我々の図面を眺めて「ここまで図面を描いて頂けるのは本当に助かります」とひとこと。過去に仕事をした別の設計事務所の図面はスカスカで、現場に入ってからも変更が多くて本当に苦労したそう。

竣工間近のB工務店。工期通りに高い精度で施工頂けたことに感謝を伝えると、図面のおかげだとして、ここまで描かれている図面は見たことがないとおっしゃっていた。同時並行で進めていた別の設計事務所の現場では、図面がスカスカで情報が全く読み取れなかったという。何かを施工するたびに質疑が山ほど出るので、思うように進められずいつもイライラしていたそうだ。

現在進行中のC工務店。はじめてお付き合いする工務店なのだけれど、我々の図面の精度がヤバいという。他の現場の図面見ます?と言われてうちのスタッフが見せてもらったら、あまりにスカスカの図面でびっくりしたそう。展開図が1/100スケールだったと聞いた時は愕然としてしまった。

知り合いの設計者を紹介したD工務店。あとで聞くと、結局その事務所の仕事は断ってしまったという。理由を聞くと図面が酷かったからとのこと。スカスカで間違いだらけ、各所で整合性がまったく取れていない。このまま請けるとトラブルに巻き込まれると思ったそうだ。

果たして我々が特別なのか?
それとも彼らはたまたま酷い事務所に当たっただけなのか?

この手の話は枚挙にいとまがない。我々の図面は描き過ぎなどと言われることもあるけれど、現場の意見は違う。読み込むのは大変だろうけれど、次にやるべきことが全て描かれた図面なら職人の手が止まらない。結果として工期もスムーズだし、余計な出費もないから現場も合理化できる。

実際に現場がはじまると、我々の現場は質疑がほとんど出ない。定例に出向いても、質疑がないので雑談だけして帰ってくることも多い。ある職人は我々の図面に「バイブル」と書いていた。そのくらい我々の図面は現場からの厚い信頼があって、我々はそれを裏切ってはいけないと思っている。

そういう図面はどうすれば描けるのか?スタッフをどう教育しているのか?とよく聞かれるのだけれど、いつも困る。教育なんてしていない。とにかく当たり前のこと、細かいことを言い続けること、これしかないからだ。

スタッフに仕事を任せて細かいことは言わないのが理想の上司だとしたら、私はきっとかけ離れていると思う。スタッフには申し訳ないけれど、仕事の質は落とせないから、仕事では鬼になるしかないのだ。

これからどんどん職人の数も減って、工務店を下に見て相見積もりなどは取れなくなる(うちはもう長らく相見積もりはやっていませんが)。実際に設計者が工務店を選ぶ時代はすでに終わっていて、選ばれる時代になっている。先のスカスカな図面の事務所に対して、工務店は何と言っているか?「次はもうやりたくありません」これが現実だ。

建て主からだけでなく、我々は工務店からも選ばれる存在にならなければ生き残れなくなる。良い仕事が残せなくなる。最近は切にそう思う。