昨日は工学院大学にて、理事を務めるSADI(北欧建築・デザイン協会)の第41回総会が開催されました。リアル総会は実に5年ぶり!久しぶりに会員が一堂に介しての総会となりました。

総会後は、こちらも5年ぶりの開催となる総会記念講演会でした。この日は特別企画として、当協会理事で北欧デザインのレジェンドでもある島崎信さんにご登壇いただき、進行役の多田羅景太さんや私とも掛け合いのトークセッションを繰り広げる予定でしたが、ここでちょっとしたハプニングが、、。

トピックのひとつとして考えていた、島崎さんの生い立ちやこれまでのライフヒストリーについて、島崎さんが事前に膨大なスライドをご用意下さり、その数実に90枚!それを見た瞬間、今日は(セッションではなく)島崎さんの独演会になるであろうことを多田羅さんと静かに察し、覚悟を決めたのでした、、。

その内容は島崎さんの生い立ちから始まり、デンマークへと渡った経緯、そしてケアホルムやモーエンセン、カイフランクといった北欧デザインのレジェンド達と交流など、まさに戦後日本における北欧デザイン文化の萌芽と成熟までを一気に駆け抜ける個人ヒストリーでもあり、これまで数えきれないほどのセミナーをこなしてきたであろう島崎さんをして、その口ではじめて語られる貴重なお話ばかり。

島崎さんは現在92歳とのこと。しかし声には張りがあり、その語り口にも衰えはありません。いつもの早口で話し続ける姿は鬼気迫るものがあり、途中からは進行役の我々ですらも合いの手すら入れることもできませんでした。

驚くのはその記憶力!口から出てくる人物名は澱みなく、それがいつの出来事であったかを、年号から日付までを正確にお話しされる姿には本当に舌を巻きました。

「北欧に渡って楽しいことばかりではなかった。(安易なモノマネをする)日本を馬鹿にされて悔しい思いもたくさんした」と語った時には思わず声を詰まらせる場面も、、。国内で売られる北欧家具のうち、正規ルートではなかったり、本来とは異なる作られ方をした家具にことのほか厳しかった島崎さんの、現在に至る情熱の原点を垣間見たような気もしました。

スライドも最後まで行きつかないまま時間が迫り、断腸の思いで我々が話を引き取ろうとするも、制止を振り払ってなおも語り続ける姿は、我々に「これだけは伝えたい!」という思いに溢れていました。(ちょっと泣きそうになりました)

ご参加くださった皆さまには、当初のトークセッションという企画趣旨を大きく変更しての内容となりまして申し訳ありませんでした。ただ私個人は、こんな幸せはありませんでした。

壇を降りられた島崎さんがゆっくりと杖をついて歩く姿には、魔法が解けたようで一抹の寂しさも覚えました。島崎さんがお元気なうちに、話しきれなかった話の後半を聞ける機会を持てればと願っています。全身全霊でお話くださり、本当にありがとうございました!