住宅業界における2021年の流行語大賞は、間違いなく「ウッドショック」であろう。ウッドショックによって引き起こされた木材全般の高騰と物流の混乱は、我々が関わるあらゆる現場に大きな影響を及ぼし、今なおその影響を引きずっている。
我々を直撃しているのは、上記をトリガーにした工事費の高騰だ。しかしフェーズはもはやウッドショックですらなく、建築資材全般の高騰であり、いわゆるマテリアルショックと呼ばれる現象が業界全体を覆いつつある。
LIXILは4月からサッシュを1割、トイレを3割、ユニットバスに至っては最大4割の値上げを発表した。安価な断熱材の代表格であったグラスウールは8年ぶりに一律2割の値上げ、また最も価格安定性に優れていたせっこうボードも3割の値上げとなった。鉄材(ガルバリウム鋼板を含む)もまた「スチールショック」という言葉も生まれるくらい、過去例のない値上がりに業界は悲鳴を上げている。
建築資材の一部が2割上がるだけでも、業界的には数年に一度の「事件」である。それなのに3割クラスの値上げなんて考えられない。しかも、こんなニュースがほぼ毎月のように入ってくるのだ。一度値上げを発表したものを、数ヶ月後にまた再値上げをするというケースすらある。コロナどころの騒ぎじゃない。岸田内閣には緊急事態宣言を出してもらいたいくらいである。
結果として(かどうかわからないけれど)、昨年末から今年にかけて出てきた見積りは、ちょっと卒倒しそうな金額が続いている。
過去の単価と比べようにも、そのどれもがベースアップしているので話にならない。各業者も労務費は据え置きにしても資材が高騰しているので、減額交渉をすれば彼らの労務費が削られかねない。一方的に値上げを通達するメーカーが本当に恨めしく思える。
しかしそうはいっても、建て主さんも我々も、それを実際に建てるためにこれまで進めてきた計画である。どうにか頭を捻って工務店さんにも協力を求めてゆくほかない。建て主さんにも、出資出来る上限を見極めて頂く作業にもなるだろう。しかし毎月のように資材が2割上がっても、我々の収入は急には上がらない。そんなねじれ現象が今まさに起こっている。
日本は長らくデフレスパイラルの只中にあった。「安いが正義」とばかりに、あらゆるものが値引きされることはあっても、値上げされることは希であった。工務店との値交渉も我々が優位にあったし、元請けの工務店と下請けの職人との関係もまたそうであった。
これが完全に逆転した。今一番強い立場にあるのは職人ですらなく、その水上の資材を供給するメーカーだ。我々はそのねじれの累積を一方的に押しつけられる弱い立場になった。そして、その先にいるのは言うまでもなく建て主さんである。
建て主受難の時代だと思う。けれど、少しばかり待っていたって物価なんて下がることはない。時代の流れはハイパーインフレに入った。私は資材の次は人だと思う。職人不足で労務費も高騰してゆくに違いない。そうしたら、、もはやもう一般の人は、家なんて建てられなくなる日が来るんじゃないかとすら思う。
雨の中でも傘を差して進むのが正解だと思う。
次の台風がやってくる前に…。
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