今年に入ってからずっとくすぶっているこの問題。

一時は住宅への設置義務化は見送られるという報道が出たものの、夏を過ぎた頃から住宅にも義務化の方向で検討、という記事が出回り始めている。つい昨日の朝日新聞にも出ていた。

CO2排出削減などが背景にあるこの問題だけれど、記事などでよく語られる設置義務化のハードル(イニシャルコストや売電単価の低下)ももっともだけれど、設計者目線で言わせてもらうと「そこじゃない」と思う。

建て主さんからのご要望で、屋根にソーラーの検討をした設計者なら誰でもわかると思うけれど、屋根にソーラーパネルを載せてメリットが出る住宅はおもいのほか少ない。

郊外のゆったりした敷地に南面の平屋でも建てれば話は別だけれど、都内の狭小地で斜線制限を逃げながらいじましい形の屋根を架けた場合、ソーラーパネルなんて何枚も載らない。

しかも、パネルには規格寸法があるので、屋根はそれなりにあるようでも、微妙な寸法足らずで余白だらけの非効率な設置計画になることもしばしばだ。良識ある設計者なら「今回はやめた方が良いですよ」と進言するところである。

また、敷地の南側に隣家の迫るような敷地条件であれば、我々はあえて建物を南面せず、北向きに建ててハイサイドから光を取り込むような住宅の提案をすることもある。そんな場合、北向きの屋根にもパネルは義務化されるのだろうか。

また屋根は傾斜屋根ばかりだと思ってもらっても困る。木造でもフラットルーフの提案をすることも多い。フラットルーフでもソーラーは載せられるけれど、割高だし、パラペットからの離隔を考えるとやはり何枚も載せられない。都市部の住宅に無理に載せる設備ではないことはすぐにわかる。

またフラットルーフを活かして、屋上緑化をしたり、ルーフテラスを設けるというケースもある。そんな住宅でも、パネルは一律に義務化されるのだろうか。

CO2削減はいいことだ。しかし高校の校則じゃあるまいし、住まい手や設計者の考え、敷地の特性などを一切無視して、一律に”義務化”するというのは国民をばかにしている。そして建築なめんな、て思う。