『建築の難問』内藤廣、読了。

内藤廣さんは私にとって重要なメンターのひとり。内容は一言で言えば「禅問答集」。文字通り「建築の難問」の数々を投げかけられた内藤さんが、それに真摯に答えるというものなのだけれど、それにしても答えがありそうでないような“禅問答”に、かくも的確に、自身の感覚と乖離せずに答えられる内藤廣さんの頭の中って一体どうなっているのだろう??と、建築思考版シルクドソレイユを見せられているような気分になる。

言説の裏付けとして、さまざまな建築家や思想家の名前、本の一節の引用などが無数に出てくるのだけれど、内藤さんの読書量や教養が我々とは次元の越えたレベルにあることもわかる。

難解な話もあったり文字数もそれなりで、この手の本はかなりの確率で最後まで辿り着かずに私は挫折してしまうことも多いのだけれど、これは内容にも共感することが多く、毎日少しずつページをめくるのが楽しみな本だった。

それにしても内藤さんの東北復興に際し関わった膨大な委員会の数や、建築と土木とを架橋した活動、教鞭など、その守備範囲の広さには本当に舌を巻く。それでいながら、一方で質の高い建築をつくり続けるそのバイタリティは、とても同じ人間とは思えない。

私もいくつかの活動に板挟みになりながら、自身の創作活動との時間の両立が最近の悩みの種になっていたのだけれど、これは次元が違う。なんてちっぽけな悩み。この本の伝えたい意図とは全く違うところに大きな励ましをもらったような気がした。

ありがとうございます。