今日はスタッフを連れて、”大人の社会科見学”のため北本へ。創業115年を数え、県内の木材企業さんの中でも老舗企業のひとつでもある木村木材工業さんの加工工場を案内して頂きました。

これまでもプレカット工場など、実際に木を加工している工場には、スタッフを連れてたびたび見学にお邪魔してきました。我々は図面に描きさえすれば、それを現場や工場の人が忠実に作りあげてくれます。

ただこの習慣がついてしまうと、なんでもAIのように人が簡単に作ってくれるのだと勘違いしてしまうかもしれません。しかし何事も、ちゃんと”中のヒト”がいるんです。それを知って欲しいと思います。

ここ最近我々の事務所では、仕上げに使う羽目板などはカタログではなく、木材企業さんなどに直接お願いしてミリ単位で自分たちの好みの形状を作ってもらっています。今後もそのような取り組みを続けてゆくためにも、いったいどんな機械で加工しているのか見てみたいと思っていました。

木村木材工業さん、今回は我々のわがままを聞き入れてくださりありがとうございました!



木村木材工業さんと言えば、ベイツガ材のJAS認定工場として有名です。このJAS認定を取り、そしてそれを維持するってすごく大変なことなんですが、この話はまた別の機会に譲ります。

このベイツガ材は、我々の設計する住宅でも木枠や幅木材などにメインで使っているものなのですが、これを上の写真のような機械でノコを入れると、こんな感じのラフ挽き状態になります。あ、このラフな感じいいな!このまま仕上げに使ってみたい。こういう発見が出来るのも、工場見学の醍醐味です。


そしてこれがモルダーという機械です。
モルダー、モルダーってよく聞くのに見るのは初めてです。ほ~う、こいつがモルダーか。これは魔法の加工機で、この中に木を通すとその先から複雑に溝加工がされた材が出てくるのです。

ここにはいろんな刃物の組み合わせを取り付けられるので、これを応用すると枠のボードしゃくりから小段仕上げ、そして羽目板の面取り寸法からサネ寸法まで、自由自在に設定出来ます。これはすごい。(そして欲しい!)



下の写真はモルダーに取り付ける刃物の一部。こういうのが壁一面にずらーっと並んでいます。よく見ると、25Rとか一般的なアール加工寸法に混じって、25.5Rとか27.7Rなんていうのもあります。

まじめな木村木材工業さんは、たとえ二度と使わないような寸法の刃物でも、注文があれば刃物から作って対応するそうです。誰ですか、こんな微妙なアールを指定する設計者は!(良い子の皆さんは気をつけましょう)



こちらは超仕上げの加工機。超仕上げというのは、いわゆるカンナをかける機械ですね。熟練の大工さんのように、しゅるしゅるっと鰹節のようなきれいなカンナくずが下から出てきます。これには一同歓声!ただ木村さん曰く、もっともっと薄く削ることも出来るそう。

一旦モルダーで加工した材を、この超仕上げでコンマ数ミリの寸法調整をしてゆくのだそうです。気が遠くなる作業です。



一方ではサンダーがけをする機械もありました。サンダーとは要は紙やすりですね。サンダーも超仕上げ(プレーナー仕上げ)も、どちらも見た目はツルツルの仕上げになるので、私はその違いをよく理解していませんでした。

工場の方曰く、サンダー仕上げの方が表面がやや粗く、塗料の乗りが良いそうです。へぇ、良いことを聞きました。



ほかにも木を人工乾燥させるための乾燥機なども見せて頂きました。こちらも実際に見るのは初めてでした。50度ほどの温度で、5~6日ほど乾燥をかけるのだそうです。


工場では住宅の一部分に使われるような小ロットの部材でも、丁寧に思いのほかの工程を踏んで製作しているというのが印象的でした。モルダーに材を突っ込めば、しゅるしゅるっとあっという間に製品が出来るのかなと思っていたのですが、とんでもなかったです。(失礼しました!)

しかも広い工場内に作業している人は数人ほどで、それも拍子抜けしたことでした。また工場というと、すべて機械任せで加工しているような印象もありますが、実際には人間の目で見て、手で触り、職人のこだわりでひとつひとつの材が加工されているのだなと感じました。

これからは現場に入った枠材ひとつにも、思い入れが出来そうです。枠をムダにしちゃだめだぞ!

社屋の方では、木村司社長と昨今のウッドショックを巡っての木材談義に花が咲きました。世界の木材流通の仕組み、アメリカやヨーロッパの動向、そしてこの混乱のゆくえなど、ちょっとこれはお金払っても良いんじゃないかというくらい詳しく教えて頂きました。楽しかった!

スタッフにとっても目から鱗がいくつも落ちる体験になったことと思います。
木村社長、そして掛川さん、ご案内本当にありがとうございました!!