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流儀とぼやき

author
sekimoto

category
> 仕事
> 思うこと


我々のようなアトリエ事務所は比較的閉じた環境で仕事をしているので,他の事務所がどんな風に仕事をしているかを知る機会は,ありそうで実はあまり多くはない.だからそんな機会があると,つい前のめりになっていろいろと”情報交換”をしてしまう.

先日は,実施設計では僕も図面を描くという話をしたら驚かれた.他の事務所では「所長は図面を描かない」らしい.図面どころか,現場もあまり行かないという人や,クライアントとの打合せもスタッフまかせという人もいるらしい.これを最初聞いた時はウソでしょって思った.

うちでは僕もばりばり図面を描くし,現場も行くし,クライアントとも僕が打合せる.スタッフに全面的に任せるのは確認申請くらいかもしれない.ひとつにはスピードや責任の問題もあるけれど,なにより自分の目で見て聞いて,図面を描かないとその空間が肉体化しないような気がするからだ.

だからうちでは何件仕事があっても,動かしている実施設計は常に一つだけ.だから一定のキャパシティを超えると,クライアントを延々とお待たせすることになってしまう.

同業に言わせると,そんな僕のやり方は理想だけれど非現実的で非効率的なやりかただという.反論を試みようとするものの,それでは仕事を廻せないでしょう?と返されると黙ってしまう.実際その通りだから何も言えない.

でもそんな流儀を貫いてきたことによって,これまでクライアントとの間にも大きな問題もなく,隅々まで配慮の行き届いた空間をつくってきたという自負があるのも事実.

だからたぶんこれからも基本的な仕事の進め方は変わらないのだろうけれど,ただ事務所を運営する立場として,もう少し上手いことやらないとしんどいなぁ…とぼやきに近いこともまた考えてしまうのだった.