久しぶりに面白い小説を読みました。

『ノースライト』 横山秀夫 著(新潮社)
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主人公は一級建築士の青瀬。かつては著名建築家アトリエに所属していたものの、バブル崩壊と共に落ちぶれ、今は友人の設計事務所で飯の種としての設計をこなす日々。

そんなある日、とある施主から設計依頼を受ける。要望はひとつ「あなたの住みたい家を建ててください」。願ってもない依頼に青瀬は設計に全力を傾け、そして後にその家は彼の代表作となる。その特徴は、南側を閉ざし北側に大きく開かれた開口部(North Light)にあった。

しかしその家には、ついぞその施主が入居することはなかった。あんなに喜んでいたというのに…。施主はどこに消えたのか?そして住宅に残されたのは一脚の椅子。鍵を握るのは、巨匠建築家ブルーノタウト。その謎を追ううちに、青瀬は意外な事実を知ることになる-


はい、もう読みたくなったでしょう?笑

けしてネタバレではありません。これは物語のほんの序章に過ぎないのです。本題はここから始まってゆきます。

著者は「クライマーズハイ」「半落ち」などで知られる横山秀夫さんです。さすが圧倒的な筆力で引っ張ります。執筆のために相当関連書籍を読み込んだことでしょう。建築好きなら、ブルーノタウトのくだりもたまらないでしょうね。

ただ少しだけ辛口のコメントをするとすれば、建築関係者はちょっとだけストレスかも?微妙に違うんですよね、実情と。建築用語の使い方とか。あ~そういう言い方はしない!とか笑。例えて言うと、刑事ドラマを見ている刑事みたいな。

でも一般の人にはそんなマニアックな領域はどうでも良いでしょうから、普通にぐいぐい引き込まれてしまうことと思います。

作中で主人公の青瀬が、「なぜこれまでタウトを避けてきたのですか?」と訊かれるシーンがあるのですが、う~ん、タウトは私も避けてきたかも。ブルーノタウトのこともちょっとだけ詳しくなる本です。建築関係者も是非ご一読を!