流山市で進む住宅の現場では、私が最も信頼を置く板金職人、新井勇司さんによる板金外壁が間もなく完成します。間もなく現場を去る新井さんには、この機会に現場で板金納まりについていろいろと解説して頂きました。

実のところ、板金納まりは図面指示をするのが極めて難しい部位のひとつになります。匠の大工にその仕口をいちいち図面指示できないのと似ています。何がベストかというのは、頭で考えるが先に手が動くというのが職人だからです。職人ではない我々にはそのノウハウはありません。

こういう場合、設計者が伝えられるのは「こうしたい」というイメージの提示と、「こうすれば」という具体的な手段の提示までです。

前者がなければ話になりませんが、現場で正確に仕事をして頂くためには、後者の「こうすれば」の提示も不可欠だったりもします。ただ板金の場合、その後者の伝達が極めて難しいのです。

今回も新井さんはイメージ通りにばっちり決めてくれたのですが、その技術についてあらためて解説をしてもらうと、ちょっと気が遠くなるような繊細さと気遣いの連続でした。

頭では理解しましたが、それを別の板金屋さんに説明したら、絶対に「そんなことできないよ!」って言われるんだろうなと思います。それは職人の技術や経験、そして知恵や感性に依存するもののような気がします。

我々は図面を描く仕事です。
図面をろくすっぽ描かない設計者を私は軽蔑します。しかし図面を描けばできるというのもまた、設計者の思い上がりなのです。世の中には図面には描けない世界がある。図面に描いたからといって、誰にでもできるわけじゃない。これもまた現場の真実です。

「この人しかいない」
設計者もそう思ってもらわないと仕事を頂けないのと同じように、職人の世界もそうであって欲しいと思います。私が尊敬する職人というのは、そういう職人です。