グッドデザイン賞ってなんだろう?というのがずっとあった。製品カタログなどを見ていると、写真の脇に”ドヤ”という感じで印字されているGマーク。中にはぱっと見にはどこがどうグッドデザインなんだろう?というものも結構ある。

最近では特定の個人の依頼を受けて建てられた住宅とか、ある種のシステムや取組みのようなはっきりした形が定義できないものまでその審査対象は広がっているようだ。

一方で食品によく付与されるモンドセレクションというものもある。お菓子に「モンドセレクション金賞受賞」などと書かれていると、その国連本部みたいなメダルのイメージと相まって、まるで「カンヌで金獅子賞取りました」的な威厳すら感じる。食べてみると普通においしい。国際的なおいしさかどうかは別として。

仕組みは両者ともよく似ている。特定の団体に一定の安くはない費用を支払って審査をしてもらうということだ。両者ともお金がかかる賞だとよく言われる。そしてその受賞率の高さから、”お金で買う賞”なんていう揶揄もよくされる。

応募している企業にとってGマークは、自社で開発した製品にデザインの専門家のお墨付きがもらえるというメリットがある。ひとたびGマークがつけば、消費者としてもないよりもあったほうが選びやすくなる。

もちろんそれは売り上げにもつながるものだから、企業にとってこの賞のメリットは非常に大きいと想像できる。その対価として多少お金がかかったとしても、それは必要経費といえる。制度としては極めて商業的だ。

逆にそういう印象があるだけに、正直私はあまりグッドデザイン賞に良い印象を持っていなかった。自分とは縁のない賞だとも思っていた。



ところが今年、知人から招待チケットをもらってその展示会に足を運んでみたところ、その考えが大きく覆されるのを感じた。どう覆されたかというと、出展されている製品群のデザインの質の高さにである。実際に足を運び、受賞作に目を通してそのレベルの高さに驚かされた。

それはまさに日本のものづくりの熱量がすべてここに集まっているかのような感覚だった。制度を憎んでデザインを憎まず。それらの製品デザインに正面から向き合ってきたまじめで誠実なデザイナー達の顔が思い浮かぶような、そんなピュアなデザインをいくつも見ることができた。


グッドデザイン賞と言えば、今や誰でも知っている日本一有名なデザイン賞と言える。

もちろん建築でもデザインでも、グッドデザイン賞に限らず多くのコンテスト等があり、国際的にも有名な賞や権威ある賞もある。しかしベタだけど、グッドデザイン賞は日本一有名なデザイン賞であることには違いない。

わかりやすいということは共感の総量が大きいということだ。一部の人にしか分からない価値よりも、誰でも共有できる価値の方が社会的には尊いと私は思う。

建築でもデザインでも、その専門性が高くなればなるほど、一部の専門家にしか分からないような価値軸というものが出てくる。しかし、デザインが市民権を持つためには、子供からお年寄りまでが理屈抜きで楽しめるものや、理解できるものでなくてはならない。

いかんせん商業色が強いだけに、色眼鏡で見られることの多いGマークだけれど、ものづくりに関わる企業の努力や社会貢献を普遍的な価値軸に乗せる取り組みとしては、もう少し評価されても良いように思う。

受賞された皆さま、おめでとうございます。