ここ二週間ほど、弘世蓉子さんという日大の学生さんがオープンデスクに来ていました。オープンデスクというのはインターンのことで、建築では夏休み期間を使って、建築学科の学生さんが設計事務所などに実務体験にやってきます。

うちは事務所も狭くて、学生さんを受け入れる余地はあまりないのですが、この期間は来客予定が少なかったこともあり、ミーティングデスクを使って模型を作ってもらうことに。それを二週間後に予定していたクライアントとの打合せでお披露目をするところまでを一区切りとすることにしました。

そしてこちらがその完成模型。
志木市内に建つ予定の、『deco』というタイトルの住宅です。




特徴はなんといっても、2階のこの梁架構です。単純に梁を飛ばすと6m超のスパンとなるところを、45度に梁を渡すことでスパンを4.5mに留め、梁成も抑えています。またこの45度に振った梁をあらわしにすることで、この特徴的な天井をこの住宅のハイライトにもしています。模型でも一番の見せ所です。

そして今日がそのクライアントとの打合せ日。彼女にとっては、オープンデスクの最終日です。模型はクライアントには内緒で作っていたので、この日はサプライズとなりました。



奥様も思わず「泣きそう」とこぼして、大変感激して下さいました。これには学生の弘世さんも大いに感じるところがあったようです。

実のところ、私としてはまさにクライアントのこのリアクションや表情を見てもらうことが、このオープンデスクの目的であるとも思っていました。

大学の設計課題では、住宅を設計しても評価をするのは講師である我々であり、それも建築家目線でのクリティックになります。だから大学では先生受けする案が好評価を勝ち取ることになるのです。

ところが、設計で最も大切なことは目の前のクライアントに喜んでもらうことです。自分たちが一生懸命考えて作ったモノやコトが、相手に笑顔で受け入れられるという喜びを越えるものが、物づくりにあるでしょうか。


このオープンデスク期間中は、彼女をあらゆる現場やクライアントとの打合せに連れて行き、私と行動を共にしてもらいました。行く先々でもいろんな話をしましたが、それらをすべて理解したとは思っていませんし、忘れてしまってもいいとも思います。

けれども自分が一生懸命作った模型が、最後にクライアントに喜んで受け入れてもらえたというこの体験だけは、深く胸に留めてもらいたいと思います。
2週間お疲れさまでした!後期もがんばってくださいね。

またクライアントのUさん、本日の急な同席をお許し下さり、またご協力を賜り誠にありがとうございました。