14. 09 / 20

構造のこと

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sekimoto

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> 仕事



「建築知識」(エクスナレッジ)にて,構造家の山田憲明さんが木構造についての連載を持たれているのですが,今月10月号では山田さんに構造をお願いした「隅切りの家」の構造解説をして頂きました.眼前の桜並木を取りこむ八角形の屋根をした住宅です.

自分が設計した住宅は,通常取材なども自分が窓口になりますし,その解説や構成のコンセプトも意匠設計者自らがスポークスマンとなるものですが,今回は構造家である山田憲明さんがご自身の仕事の解説として記事を書かれており,このような機会は滅多になく,大変興味深く読ませて頂きました.

実のところ,意匠設計者と構造設計者との間でも,もちろん十分なコミュニケーションはなされているのですが,それらはお互いの業務を補い合う関係であり,それぞれの職務の深い部分まで踏み込んで話すことはあまりありません.

それは「こんな風にできますか?」「できますよ」という関係であって,どういう理屈で,どのようにそれを可能にするかというのはそれぞれの職務になるので,それをわざわざわかりやすく解説しあうなどというのは野暮というもの.プロとプロの仕事というのはそういうものです.

でもそれをこんな風に解説されると,そうかぁと,根っこの部分では理解していたつもりでしたが,あらためてそんなことまで考えて下さっていたのだなぁと(当たり前なんですが)嬉しくなりました.

建築の設計では,より専門的な設計技術が必要になるときは,我々だけでは手に負えず,構造や設備などそれぞれの仕事のスペシャリストに仕事をお願いすることがあります.

その関係は,お互いを尊敬し合える関係でなくてはならず,そうした意味で,山田憲明さんは私が最も尊敬し信頼の置けるパートナーの一人です.今後も私の凡庸な頭ではどうにもならないムズカシイ案件の折には,どうかお知恵を貸して頂ければと思います.


ところで学生時代,私は構造が大の苦手でした.

ピンとか固定端とか,はたまた回転とか座屈とか,算数嫌いの子供のように,それらが出てきた瞬間にチンプンカンプン,いつも拒否反応を示していました.全然楽しくない!自分はデザインだけをやっていたいと何度願ったことか.

けれども自分で仕事をするようになってわかりました.机上の空論ではなく,実際にそこに立ち上がった躯体を見れば,この梁なら大丈夫そうだなとか,このはね出し厳しそうだなということが直感として理解できるようになりました.

やじろべえが良い例です.
両側に等しい重りをつければ,やじろべえはフラフラ揺れながらも倒れることはありません.この時の足元のあり方が「ピン」だということです.

でもやじろべえの足元を台座に突き刺して固定してしまえば,片側に少しばかり重い物を乗せても釣り合っているかのように見せることもできます.この時の足元は「固定端」で,いわゆる剛による構造だということです.

そうかあ,建築の構造はやじろべえなんだ!そう考えたら,なんであんなに単位を落としまくっていたのかわからないくらい構造が楽しく,身近なものになりました.

建築の構造は楽しい!今では心からそう思えます.
そして自分に手に負えないときは,山田さんみたいな優秀な構造家がいるのですから,信じてお願いすれば良いのです笑

山田さん,エクスナレッジさん,今回の執筆ならびに掲載ありがとうございました!