昨日は大学2年生の最終課題「集合住宅」の全体講評会がありました.
今回は講師陣も認めるように,やや難しい敷地でした.三面道路と残る一面も緑道となっているため,どの面にも”ウラ”を作ることができない.居住者間のコミュニティを育みつつ,プライバシーや日照にも配慮し,街にも開くためには?というかなりハードルの高い設問となりました.
そのため,いつもならもう少し考え方のバリエーションが出るところ,比較的いくつかの類型に収斂したような印象です.ただ講評会で票を集めた上位案は,それでもオーソドックスな解決を深く掘り下げることで現実性のある提案まで昇華させたものや,「土間」や「中庭」といった中間領域を魅力的な建築提案にまで引き上げたものなど,講師陣も唸らされるものもありました.
2年生はこの課題が必修最後の課題となり,3年生からは設計コースに進む者と,不動産・構造・環境系に進む者とに別れます.そのためこの後期は学生の温度差もはっきり分かれ,何度も案を作り直して本気で向き合う者もいれば,一方であからさまな”やっつけ”で提出する者もいて,指導する側も困惑する場面も多々ありました.
もっとも設計コースに進むつもりのない者にとっては,設計課題は苦痛なほどに時間と手間が取られるもので,それも仕方がないところかもしれません.そういう学生のやる気に最後まで火がつけられなかったことは,ひとえに私の力不足だと思います.
一方で,最後まであきらめずに案を考え続けた者も少なからずいて,最終的に結果が思うようについてこず,悔しさを浮かべている子もいましたが,その粘りと諦めない気持ちがあれば,きっと遠くない未来に”ご褒美”のような結果を残せる日が来るでしょう.私の過去の教え子たちがそれを証明しているところです.
最後に講評会について.
講評会で厳しい批評にさらされて,中には傷ついている人もいるかもしれません.私もかつては学生で,厳しいコメントに悔しい思いをしたこともありました.ただ批評する立場になってわかったことは,講師陣は皆心を鬼にして批評をしているのだということ.講評会に出てきている時点で素晴らしい案であることは皆わかっているので,あえて褒め言葉は封印しているのです.学年が高くなるにつれて,この傾向は顕著になってゆくでしょう.
野球の野村元監督が選手の育成は「無視・賞賛・非難」であるとおっしゃっていました.「三流は無視する.二流には褒める.一流は非難する」ということのようです.非難される立ち位置に自分が今いるのだということを自覚するべきです.
そして時に”良い”と思っていても”良くない”と言うこともあります.講評の場が同じ意見にまとまりかけていると,あえてバランスを取るために反対意見をぶつけるのです.こういうことは大人社会の中では軋轢を生みますので,日常ではほとんど見ることがありません.
そんな場面を講評会で目にするにつけ,先生方は優しいなあと思うのです.実際中途半端に褒められたり何も言われないよりも,批評をより多く集めた作品の方が最後に受ける評価は大きいという経験則もあります.
来週は今期最後の授業(そして私にとっても大学任期最後の日)となります.
気が抜けて休みたくなる気持ちをぐっとこらえて,皆さん学校には来ましょうね笑
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