12. 12 / 29

ある新聞記事

author
sekimoto

category
> 社会


昨日スタッフと仕事納めに焼肉をつつきながら、数日前に新聞に載っていたある偽装建築士の話題となった。僕もはじめこの記事を読んだ時は、さすがにびっくりした。

この人はまずある建築士事務所に、自分が一級建築士だと偽って入社した。そこで4年の実務を積み(ただし設計業務ではない)、大学の建築学科を卒業したと偽って一級建築士を受験して、晴れて資格を取得した。

一級建築士試験は、一定の実務経験年数がないと受験ができない。そればかりか、大学の建築学科など所定の建築教育課程を修めていないと、やはり受験資格が得られない。だからうちのスタッフには学歴の壁に回り道をしながら苦労している者もいるし、一方でうちで地道にキャリアを積みながら受験勉強を続けている者もいる。

この人はその二つとも偽装したというのだから、これは偽装というより詐欺というほかない。しかも、勤めているのならその設計内容について第三者のチェックや監督もできるだろうが、この人は独立して自分の事務所まで立ち上げてしまった。建築教育も受けず、前職でも設計業務に関わっていないのにもかかわらずだ。これはハンドルも握ったことがない人が、いきなり公道に飛び出すようなものである。こんなに怖ろしいことはない。

それにしても受験にあたっての学歴のチェックも厳しいはずなのに、どうしてすり抜けてしまったのだろう。謎だ。発覚して本当に良かったと思う。


2012年12月26日朝日新聞