来月の竣工に向けて臨戦体制に入った「しだれ桜の家」の現場。片隅では佐々木棟梁と担当の牛島がなにやらモメている。やれ納まるとか納まらないとか。
この佐々木棟梁に現場に入って頂くのは、これで既に4件目だろうか。もうすっかりおなじみのはずなのに、毎回現場に行くたびに怒られる。怒られなくとも、いつも聞こえよがしに文句を言われる。難しい設計にしやがって。これまでで一番大変だよ!と。
それを聞くと僕はいつも嬉しくなってしまう。性格が悪いかもしれないけれど、現場で職人さんが苦労している姿を見るのはなかなか悪くない。これは建築家のS(サディスト)としての側面。こっちとしてはそれなりの挑戦状を叩きつけたわけだから、それなりにもがいてもらわないと。簡単な現場だなんて言われるのは心外である。
一方で難しい敷地や、お施主さんから無理難題を持ちかけられると、よせばいいのに喜んで受け入れてしまう。これは建築家のM(マゾヒスト)としての側面。
建築は最初のハードルの設定が高ければ高いほど素晴らしいものができる。それが経験的にわかっているから、より困難な道を求めて突き進んでしまうのだろう。困難の先には常に達成感と高揚感が待っている。それはひとつの麻薬のようなものかもしれない。
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