石井秀樹氏の住宅の内覧会にお邪魔してきた。写真を見て一目でヤバいやつだと直感した。自然地形を活かし切った秀作だった。

彼とは古い付き合いになる。同じ歳で、作風は全く違うのに昔から建主がかぶったりする。性格もまったく違うけれど、彼の建築にはシンパシーを感じる。

建築界において、空間が素晴らしかったら細かいこと言っちゃいけない的な空気がある。しかし真に素晴らしい建築は、ディテールにも神が宿っている。それがない建築はやっぱりだめなんだと思う。

彼の建築は悪魔的に細かい。付け入る隙を見せない。それは彼の性格そのものでもあり、彼のこれまでの人生経験がそれをさらに強化させてもいるだろう。

そういう神経を持ちえない者にとっては、彼は悪魔に見えるかもしれない。しかしクライアントにとっては唯一無二の存在になることだろう。真の仕事とはそういうものだ。

しかし彼の建築の真骨頂は、その細かさにではなくディテールを際立たせるストーリーにこそある。どうしてそこがそうであるか。それが集まり引き締まった筋肉のように空間構成をつくっている。すぐれた建築に説明はいらない。その無言の対話を楽しませてもらった。

今回も勇気ある素晴らしい仕事だった。案内をどうもありがとう!