最近うちの自宅周辺の建築ラッシュがとまらない.
たとえば上の写真で,一番右端が自宅であるが,その左のオレンジの屋根は半年ほどまえに新築されたアパートで,その左隣は現在工事中の別のオーナーのアパート.その左側はつい先日建替えられたばかりのお宅で,その左はそれと入れ違いではじまったばかりの改装工事のお宅.

はたまた通りの反対側を見てみると(下の写真),真向かいのお宅にも外部足場がかかり外装工事がはじまった.その右隣は最近更地になった敷地.おそらくは数ヶ月のうちには新しい家が建つのだろう.


僕はたった1軒の家であっても,水面に投じられた小石の波紋のように,周囲に及ぼす影響はけして小さくないと思っている.

もちろんタイミング的な問題もあって,たまたまかもしれないし傲慢な考えかもしれないけれど,でも僕は我々の家が建ったことによって既存の街並みにも何らかの影響を与えていると信じたい.

今日もさいたま市で一軒の住宅の引渡しがあった.クライアントのご両親はオープンハウス後の食事の席で,家の前を通る人たちが口々にいろんなコメントを残してゆくのだとおっしゃっていた.

「素敵なお宅ですね」と言われたらクライアントもきっと嬉しい気持ちになるだろうし,そしてその瞬間のために我々の仕事があるとすれば,その時我々の仕事も全うされたのだとも言える.

ただそれ以上に僕が思うのは,そんな”素敵な家”を見た人の心の中にちょっとした変化が生まれてくれたらもっと嬉しいということ.うちもあんな家に住みたいなあとか,痛んだ外壁に手を入れようかとか,庭にきれいな花の咲く木を植えてみようかと思ってもらえるきっかけを与えることができたとしたら,建築家としてこの上ない幸せを感じる.

僕は学生時代から都市計画というのがどうも苦手だった.メガスケールの都市計画図をいくら眺めても,そこに住んでいる人や遊んでいる子どもたちの顔をリアルに想像することができなかったからだ.

でも住宅設計という等身大の世界に身を置いていると,そこに住む人の体温や感情の機微,そして生活の匂いをリアルに感じることができる.やっぱり僕は住宅が好きだし,小石の波紋のように,一軒の家からでも街を変えることはできるのだと信じたい.

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