
昨日は竣工後一年が経過した横浜市の「壇の家」に、一年点検のためにお邪魔させて頂きました。
外部の方は、その住宅を我々のHPの竣工写真などからしか知ることが出来ませんが、実際に暮らされて一年ほどすると、どのように生活が変化してゆくのかなど興味深いことと思います。今回はちょっと、そんな住まいの経年変化を知って頂くためのレポートとさせて頂きます。
壇の家(2021年1月竣工)
https://www.riotadesign.com/works/21_dan/#wttl
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当日は我々の訪問に備えて、建て主のFさんが玄関周りを熱心に掃き掃除をされておられました。
一年点検は我々にとっても設計の「答え合わせ」をする日でもあるのでとても緊張するのですが、建て主さんにとっても、この日は一年間の「暮らしのレポート提出」のようなものかもしれませんね。


アプローチに入れたクリーピングタイムは、アプローチにはみ出してほぼ理想的な伸び方をしていました。裏通り側に植えたクラピアは、一部枯れてしまった部分もあるのですが、逆にFさんのご家族で空いたスペースに次に何を植えるかを楽しんでおられるとのこと。
植栽は手入れが大変と思われる方も多いようですが、実際にはそんなこともありません。こうやって、お庭と向き合う時間が増えるのも幸せなことだと思います。


玄関扉には横一文字にクラックが入ってしまいましたが、木製建具あるあるでもあるので、この辺は大らかに受け流して頂きます笑。
一方の、最もダメージを受けやすい建具の下部はとてもきれいで、まったく劣化を感じさせませんでした。経験上、建具を外壁面よりも少し奥に入れると建具がとても長持ちするのですが、そのような設計上の措置もまた功を奏しているようにも思いました。


ウッドデッキには多少退色が見られましたが、まだこの段階では手入れはしません。あと二年くらいほったらかしにしたくらいがお手入れ時期になると思います。ちなみに、Fさんはデッキの隙間にはさまった落ち葉もピンセットで取り除いているのだとか。すごい!
手摺り上部にまわした木製手摺りもきれいですね。むしろこちらの傷みを心配していたので、安心しました。


続いてお風呂回り。こちらはリオタデザインでは定番の板張り併用の浴室になっていますが、これは竣工検査ですか?というくらい、非常にきれいに使って下さっていました。
木部は傷みが出やすいので、セラミック塗装を木部に施しているのも功を奏しているようにも思います。木はカビるから、と思っているそこのあなた。そんなことないんですよ。
またタイル目地はカビるからと思っているそこのあなた。このカビ一つないタイルを見て下さい。防カビ目地の効果も大きいと思います。

木製建具もこの通り。シミひとつありません。カビを防ぐための設計上の工夫と、セラミック塗装が功を奏しています。
ただ、ここでもうひとつのネタばらしをしなくてはなりません。Fさんご家族の努力を!
毎晩お風呂に入った後は、乾いたタイルで木部をちゃんと拭き取っているそうです。これはうちの建て主の多くの方がやって下さっていることです。
先のような措置を設計側で考えているので、別にそこまでやらなくても大丈夫ですよとはお伝えしているのですが、これが住まいに対する愛情なのでしょう。頭が下がります。

洗面カウンターまわりには、このような隙が出ることは多いです。乾燥すると収縮しますからね。これは木を使う限りは正直防げません、、。
後日シールなどを打って頂こうと思います。

洗濯機の上部には、無印良品のボックスがぴったり納まっています。たまたまだと思いますか?いえ違います。我々が、ちゃんと無印良品の規格で棚を作っているからなのです。
竣工時には誰も気付きませんが、暮らしが進んでゆくとこのような設計上の考え方が伏線回収されてゆきます。生活するということは、つまりこういうことですので。


キッチン回りもとてもきれいに使って下さっていました。背面の飾り棚はLEDを仕込んでいますが、ちょっとお店のような雰囲気で奥様もお気に入りの小物やツールをディスプレイされていました。
こういう棚は必ずしも機能的な棚ではないのかもしれませんが、生活にはこんな気分が”アガる”設えがどこかに必要なのだと思います。ここにもFさんのこだわりや愛着が伝わってくるようです。

こちらは2階の一角に設けた本棚。キチンとされていますね!これはうちの建て主さんの特徴ですが、こうやって本棚に入れる本も、高さを揃えたり分類をして美しく見えるように工夫をされています。
もちろん今回我々が行くから整えた部分もあると思いますが、でもちゃんとわかります。にわかか、そうでないかは。

こちらの一角にも、無印のパインラックがぴったり納まっています。
はい、もうおわかりですね。そうなるように設計しているからです笑


そして2階のハイサイドからはまっすぐに1階まで光の筋が。壇の家は吹抜けがありますが本当に温かくて、2階の廊下もポカポカでした。
断熱や気密性能が高いこともあり、上下階で温度差があまり生まれていないようです。シーリングファンも設けませんでしたが、特に問題はありませんでした。
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ということで、一年点検で訪問したのですが、ほとんど不具合らしい不具合はなく、ほっと安心してずっとFさんとおしゃべりしていたらあっという間に夜になってしまいました笑。暗くなったので、結果として我々の照明計画が適切であったかどうかも、この日検証することができました。




この写真でどのくらい伝わっているかはわからないのですが、実際にはこの数倍くらい良い感じです!
照度について、少し暗いかなと不安に思っていたのですが問題なさそうです。建て主のFさんも、住まいながら様々な照明の使い方を編み出したり工夫したりしているようで、そんなお話を聞くのもとても有意義でした。まさに設計の答え合わせですね。

そんなFさんとの語らいの時間は本当に楽しいものでした。何人かの建て主さんとは、コロナが落ち着いたら呑みましょうねと約束していますが、設計業務を離れて語らう建て主さんとのこうした時間は、何ものにも変えがたいものです。
この日のFさんからは、この家に対する愛着の言葉が止まりませんでした。一年を経過してもまったく飽きないとのこと。そんな”のろけ話”はどれだけ聞かされても良いものですね笑。
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このブログを読んだ方は、自分はそんなきれいに暮らせない、そんなに几帳面に手入れは出来ないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、自分が本当に愛着を持てる家を建てると人は変わるものです。このFさんもまさにそうだったとおっしゃっていました。
家づくりはそんな自分自身を変えるきっかけにもなるし、家族が今後どうありたいかを考え、現にその通りになってゆく過程そのものでもあるのでしょうね。この日も考えさせられることがたくさんありました。
Fさん、ご対応ありがとうございました!
