この春5人目、いよいよ最後のオープンデスクが終了しました。5人目も日大理工の2年生。1年生の時に設計指導を担当していた学生さんです。
彼女は以前からやる気は人一倍あるものの、自分のイメージする世界をうまく表現することができずにいたのですが、この2年生の後期にかけてぐっと実力を付けてきました。まさに伸び盛りの学生さんです。
今回課した課題は、実際の敷地に建つリアルな条件の住宅で、住宅を設計する上で基本的な考え方を学んでもらいたいと出題したものでしたが、彼女はそこにコンクリート打放しの壁を、木造住宅を貫くようにランダムに配置するというアバンギャルドな提案。これには私もびっくり!
その壁は本当に必要なのか?どういう意味があるのか?など、否定と肯定を繰り返しながら対話を重ねましたが、彼女は心折れることなく最後までやりきりました。それがまず感心したこと。そしてこれがまた、結果的になかなか良い空間なのです。これは彼女に一本取られたなと思いました。今回どのオープンデスクの学生にもないアプローチの提案でした。
大学でも、学生が突飛なことをやろうとしているときは、否定と肯定両方の意見をぶつけて反応を待つことにしています。人と違った考えを持つことは悪いことではありませんが、それを人がどう受け入れるか、あるいは拒絶するかを十分に想像した上で提案して欲しいと思うからです。ですが多くの場合はそのやりとりの中で物事のバランスを考え、良くも悪くも考えを変える人がほとんどです。
もちろんそれは協調性や社会性という意味で、仕事をしてゆく上でもとても大切な要素だと思いますが、人を圧倒的な造形で感動させるタイプの建築家にはなれないかもしれません。彼女の持ち味は、おしとやかそうに見える?外見とは裏腹に内に秘めた情熱(パッション)、そしてその頑固さと意志の強さです。そういう意味で芸術の才能のある子だと思います。
これからどんな風に飛躍していくのか、勢い余って崖から落ちないように笑、ハンドルをしっかり握って自分の道を探ってもらいたいと思います。これからがとても楽しみです!
◇
はぁ、それにしてもこの春の怒濤のオープンデスク・ラッシュはすごかった!
すべての学生とは毎晩向き合って遅くまでエスキース(設計指導)をしました。ずいぶん自分の時間を使ったなぁ…。でもとっても楽しかったです。千本ノックをしていたつもりが、こっちがノックを受けていたみたいな。
私にとっては、正直課題とかどうでもいいんですよ。それが上手くできても、できなくても私には関係ありませんから。単位が出るわけでもないし。
毎晩のエスキースを通じて、彼らの悩みとか建築に対する迷いのようなものを聞いてあげると、アウトプットしたことで彼らの中で問題が整理されて昇華(成仏)されます。私の経験を話してあげたり。こういう時間が、かけがえのないものなのだと思います。
これは大学の授業ではできないことなんですよね。限られた時間の中で、全員の指導をしなくてはいけないので。課外授業だからできることです。
彼らは貴重な春休みの一週間を無給で事務所に足を運んだわけです。その間もバイトしていればもう少しお金にもなったはずなのに。それをこういう無駄なことをすると案外いいことあるんだということが分かってくれたら、人生にとって一番大切なことをひとつ学んだかなとも思います。
この春来てくれた5人の学生さんはお疲れさまでした!うちの事務所を選んでくれてありがとう。また別の機会にお会いしましょう!
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