19. 05 / 11

街にとけあう

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sekimoto

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> 仕事



今日は昨年竣工したKOTI(I邸)の竣工撮影がありました。
葉の落ちた昨年暮れの姿とは打って変わって、新緑が眩しく輝いていました。また、ちょうど竣工と時期を同じくして生まれた赤ちゃんも、家と同じだけ歳を取って早5ヶ月とのこと。すくすくと育っていました。

KOTIは路地に面して庭を開き、ついでにベンチまで設けた住宅でした。敷地面積はわずか20坪ほどしかないのに、太っ腹にも自分の大切な庭を「どうぞご自由にお使いください」とばかりに街に差し出しているのです。


Iさんはこんな話をしてくれました。

3月頃から庭木に新芽がつき、花が咲き始めると街行く人からも「きれいなお花ね」と声をかけられるようになったそうです。お隣の方には「いつもお庭を楽しませてもらってますよ」と、交流のきっかけにもなったとのこと。

近所の子供たちは敷地境界に植えたヘビイチゴを興味深く覗き込み、路地からは「素敵な家だね」と声が聞こえてくることも。

それを聞いて、設計者として本当に満たされた気持ちになりました。涙が出そうなくらい。まさにそれこそが、我々がこの家に込めた想いそのものであり、住まいをひらくとはどういうことか、Iさんに当時一所懸命ご説明したことだったからです。

こうしてこの家は街の一角に根を下ろし、新緑の芽吹いたこのアオダモのように、その存在感を街に示しているようにも思えました。


家の内部も我々がかけたものと同じくらい、細部にまで愛情を込めて暮らしてくださっている様子が伝わってきました。まさにタイトルに込めたKOTI(フィンランド語で”おうち”)そのもの。丁寧に暮らして下さり、どうもありがとうございます。

この写真は私の撮影によるものですが、新澤一平さんによる渾身の写真も仕上がりをどうかお楽しみに!