少し日が経ってしまいましたが、先週木曜日(14日)に宇都宮で間もなく竣工する「パーゴラテラスの家」の造園ワークショップがありました。
今回の宇都宮の造園は、造園家の荻野寿也さんにお願いしています。荻野さんは今国内で最も人気と実力を兼ね備えた造園家の一人です。いつかご一緒したいと願っていましたが、今回ようやくお手合わせ頂けることとなりました。
今回は荻野さんも遠隔地でいらっしゃることから、ワークショップ形式として我々の事務所スタッフを含めたボランティアメンバーを募り、一日で造園作業をまとめることになりました。
我々としても荻野さんの造園手法を間近で見ることができ、またその前段階からのやりとりを通して、そのお仕事の奥深さを学ぶことができたのは大変有意義な機会でした。建て主のKさんのご理解に心より感謝致します。
そして結果として本当に素晴らしい造園となりました。こんな造園は見たことがありません。荻野さんのお仕事に心から感謝致します。
今回荻野さんのお仕事から学んだことは多かったのですが、特に印象深かったのは細部へのこだわりについてです。
荻野さんといえば、美しい樹形の木を生け花のように配置してゆく大胆な手法が印象強いのですが、ただ木を植えておしまいではなく、「あたかも昔からそうであったかのように」岩と岩のあいだや傾斜面に苔(それも特殊な発注によるもの)を張り付けたり、花一輪に至るまで細心の注意を払っておられました。
また砂利の色味も吟味し、わざわざ粒径の異なるものを別途持参して、均質にならないように配置されていたのも印象的でした。
またこれは後から聞いた話ですが、前日入りして現地状況を確認し、当日我々が到着する直前まではピリピリして近寄りがたいほどだったそうです。荻野さんご自身も、はたして今回の仕事がうまく行くか心配で前日は眠れなかったとのこと。
今回は、テラスにあけた穴から木を通すという曲芸的な造園がありました。それを提案されたのも荻野さんだったのですが、それがうまくいくか、どんなに準備やシミュレーションを重ねても本番までは心配でたまらない、、。あの百戦錬磨の荻野さんですらです。
幸い我々が到着する直前に木が無事イメージ通りにテラスを貫通したようで、私が見た荻野さんはもういつもの荻野さんに戻っていましたが。
私はその心の持ちようにとても共感すると共に、心から嬉しく思いました。それはおこがましくも、我々の仕事に賭ける思いと全く同じだからです。
我々も計画では最初の着想は大胆に、しかし現場では詳細まで気を抜くことはありません。時にそれは人からマニアックだとも言われることがあります。そんなものはもしかしたら写真に写らないし、見学者も、また建て主さんですらも気付かないようなこだわりかもしれません。
でもそこがとても大事なのです。
手が触れ、またあるときにふと視線がそこを捉えたとき、美しく整っている状態であれば建て主さんは我々がそこまで神経を巡らし、配慮したことに喜んでくれることでしょう。一流の宿に泊まると我々はそれを感じることができます。人が自分のために精一杯の仕事をしてくれたということを感じて頂くということが、私は本当のおもてなしなのだと思います。
そして、我々も我々が思う万全の状態にして建て主に自分たちの仕事を引き渡すことがゴールですし、その姿が見えるその時までは緊張感が抜けることはありません。私がもしかしたら、スタッフや現場から恐れられることがあったとしたら、おそらくはその緊張感のためだと思います。
普段はおおらかで、関西弁で周囲を笑いで包み混む荻野さんも、仕事になったら豹変する。カミソリのようにピリピリする。あたりまえのことですが、そのくらい今回の仕事に賭けて下さったのだと感じられたことが、なにより私が嬉しかったことなのです。
現場もあと残りわずかです!
我々が考える到達点まで、もう一踏ん張り。現場の皆さんがんばりましょう。
※ブログで告知しました今週末のオープンハウスは予約制となっております。ご希望の方は弊社までご連絡下さい。
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