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sekimoto

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現在、県下でリノベーションの現場が進んでいます。

「縁側の家」と名付けていますが、築50年を越える住宅の瓦屋根だけを残し、間仕切りや外壁、窓などをすべてそっくり新しく更新するというフルリノベーションの計画です。

うちはリノベーションの仕事はあまり多くないのですが、社会的にはリノベーションの需要は今後も増えてゆくだろうと言われています。そして新築は頭打ちだとも。ただ、リノベーションは新築に比べて工事費が安く上がると思っている方もいますが、必ずしもそうとは限りません。

たとえば今回の案件では、構造が現在の耐震基準に合っていないので、あらゆる方法で構造補強を行っています。新築なら配筋検査など、基礎工事からしっかりと我々が設計監理できますが、既存の住宅の構造がどのくらいしっかり作られているかというのは、ぱっと見ただけでは我々でもわかりません。

要はなんだかんだで、そっくりきれいに、性能もしっかりした住宅に改修をしようと思ったら、ほぼ新築並みの費用がかかると思っておいた方が良いと思います。


な~んだ、そんなお金かかるなら壊して建て替えてしまおう。

そう考える方もいらっしゃるかもしれませんね。でも腹をくくって既存の住宅を活かした改修をしようと考えると、リノベーションはとっても奥が深くて、もしかすると新築で建てる以上の魅力ある空間にできる可能性もあります。

私はそれを「縁側の家」の現場に足を運ぶ度に思います。なんだか不思議な空間だなあと。自分で設計したのだけれど、自分の設計ではないような。

新築の計画だと白紙からのスタートなので、いかようにもプランが作れます。屋根の架け方だって自由です。ところが、既存の改修だといろんな制約が邪魔をして、思い通りにやらせてくれません。これはとってもストレスなんですが、結果的にいつもの”手癖”から離れて、ある意味不合理な、ある意味とっても豊かな空間が生まれることになります。

例えばこの「縁側の家」では、文字通り縁側がリビングやダイニングのまわりをぐるぐるっと取り巻いています。通常の設計なら、床面積を無駄に食うこうした廊下状の空間は排除される傾向にあるのですが、既存の住宅の骨格に忠実に解いていった結果として、”無駄な縁側”という豊かさを獲得したとも言えると思います。

リビングの天井も3mくらいあって、部屋のつながりもイレギュラー。自分の中のプランニングのセオリーが破られて、なんだかとっても新鮮です。

現場はまだまだここからが踏ん張りどころ。
進捗と完成がますます楽しみです!