寒い日が続きますね。低温注意報なんて、これまでそうそう聞かなかった言葉です。冬らしい冬というのも久しぶりですね。

さて、こんなに寒いとそこそこ断熱性能の高い家に住んでいても、どうしても住宅の中の温度ムラは出やすくなります。家中どこでも一定の温度という住宅は、それなりにコストをかけて、相当意識的に設計をしないと難しいのです。

我が家では陽当たりの良いリビングは日中は暖房いらず。ポカポカとまるで天国です。一方の廊下や陽の差さない洗面・脱衣室などは最も寒い部屋となり、ここ数日は朝には10度くらいにはなります(もっとも、これでも断熱少なめの昔の住宅よりはマシでしょうが)。

うちのクライアントからは、基本的には温かいのだけれど、2階にリビングを設けると1階が相対的に寒くなりますので、「1階が寒い」との声もよく頂くことになります。

ということで、既に建ててしまった家でも、一工夫することで家中の末端まで苦痛のない温度まで上げられる方法はないかと、ここ1週間ほど様々な方法を試して自邸で実験していました。今日はその結果をご報告したいと思います。


まず冒頭に書きましたように、我が家は一番奥の洗面所で朝は10度くらいまで下がります。別に耐えられない寒さではありませんが、寒いっちゃ寒い。この温度をベースアップするためには当然追加の熱源が必要です。といっても、あらたに暖房器具を買うことなく、今家の中にあるものを使いたいと思います。

我が家の場合はこちらです。



「太陽光」と「エアコン」
だいたいどの家庭にもありますよね。

まずは太陽光の利用。

太陽光はタダです。素晴らしいですね。こんな熱源は太陽しかありません。我が家は道路側にかなり大きなガラス面があるので、リビングに関して言うと前述のようにとっても温かいです。どのくらい温かいかというと、


これは低温注意報が出ていた今週の某日、午前10時くらいの温度です。

上が室温、下が外の気温です。室内はこの時点では無暖房。太陽が出たら最強な部屋になります。(ちなみによく心配されますが、夏もそんなに暑くないですよ。遮熱ガラスを使っていることもありますが、我が家の7不思議の一つです)

この熱の塊をどう使うか。簡単です。引戸を開けておけば良い笑。熱は水と同じで、温度が高い方から低い方に向かって流れます。


その際に、扉が天井いっぱいまであると天井付近にたまった熱が移動しやすくなります。こうしたのは意図的かって?(あ、あたりまえじゃないですか…)

でもこれだけで家中温かくなるほど甘くはないんですね。我が家の場合、ガラス面積の大きい廊下がありますので、残念ながらここでかなり空気が冷やされてしまいます。そこで廊下の向こう側にも追加熱源が必要になってきます。

そこで出てくるのがエアコンです。
ここでは主寝室のエアコンを使います。温度設定は消費電力を抑えるために仮にこのくらいに設定。


ところで、いまだにエアコンを使うことに罪悪感を感じる人がいます。

そういう方に限って電気カーペットなどをガンガンに使っておられる。おそらくエアコンは家中のどの家電製品よりも群を抜いて省エネだしエコな設備です。

発電所から送られてくる電気の2/3程度は送電ロスによって失われますが、エアコンはヒートポンプの働きでその熱効率を各家庭で3倍くらいに増やしてくれるのです。(誤解のない表現が難しいですが、ざっくり言うとそういうことです)

そしてその使い方ですが、よく電力会社のCMなどで流れる「電気はこまめに消しましょう」という意識があるのだと思いますが、エアコンも寒いと付けて、部屋を出るときや温かくなったらすぐ消してを繰り返す方が多いと思います。ただ、おそらくこれは意外と電気を食います。

エアコンは立上がりにすごく電気を使いますので、設定温度を低くして、なるべく長時間付けておくのが一番効率の良い使い方です。


さて、まだここで終わりではありません。このままだと、部屋からの熱の出口(扉)が小さいので、部屋の末端まで暖かい空気を届けるのがやはり難しくなります。ここで使うのがこちらです。


サーキュレータです。扇風機でもいいです。

これをどこに置くか。正直この調整に苦労しました。空気って正直なんですが、ちょっと気まぐれで、なかなか人間が考えたとおりに動いてくれません。まるで猫のようです。

結論から言うと、我が家の場合、サーキュレータを子ども室方向に向かって吹くことで、廊下をまわってぐるりと空気の循環の流れができることがわかりました。この辺は想像力を豊かにする必要があります。

また温かい空気は天井付近に溜まりますので、サーキュレータの角度も重要になります。私の場合、よくわからなくなってしまったので、上下の首振り運転にしました。

まとめるとこんな感じです。


この効果はてきめんで、室温が10度だった洗面所もエアコンとサーキュレーターを併用することで、約1時間半後には15度くらいまで上がりました。これまでどんなにやっても寒かった洗面所や浴室の温度環境が劇的に改善されました。


廊下も朝は10度くらいだったのですが、やはりこのくらい(下の写真)になります。床は以前は氷のように冷たかったのですが、かろうじて素足で歩けるようになりました。


ここで重要なのは、自分の快適温度は何度くらいなのかを知るということです。家族が長時間滞在するリビングは、寒がりの私は20度でも少し寒く感じ、22度まで上がるとちょうど良いと感じます。これは個人差があると思いますが。

ただ一時的に滞在して顔を洗ったり、洗濯をしたりする空間を常に20度に保つことには個人的には意味がないように思います。ただ私の場合、そんな部屋でも10度だと苦痛を感じ、15度だとストレスがないこともわかってきました。

そのためには温度計を各部屋に置くなどして、現在の室温が何度くらいなのかというのをこまめにチェックすると良いと思います。特に設計者は、感覚を定量化する(数字に置き換える)ということが、性能と感覚を近づける近道なのだなと最近つくづく感じることです。


まとめですが、この実験で検証したかったことは、そこまでの高断熱住宅ではなくても住宅のポテンシャルを引き出す方法はいろいろありますよということ。そしてその工夫を生活しながら考えることは結構楽しいことですよということです。(まるで小学生が夏休みの自由研究をしているかのようです笑)

冒頭に書いた、2階が温かくて1階が寒いという方は、2階のエアコンをガンガン付けるのではなく、1階のエアコンをつけて下から上に向かって温めてゆくイメージを持つと良いと思います。もちろんサーキュレータも必須アイテムですね。

また熱源としてのエアコンはもう少し見直されるべきかもしれません。寒い部屋に一つずつ電気式の小型ヒーターを置いている家庭も多いと思いますが、局所暖房ではなく全体で考えた方が良いですし、省エネにもつながると思います。(ただし、ベースとして一定以上の断熱がされている住宅であるということが前提ですが)

でもその上で、別に寒くても構わないという方(寒さに耐性の高い方)はもちろん無暖房で良いのではないでしょうか。エアコンがいくら省エネだと言っても、付けない方が省エネになることは間違いありませんから笑

でもそうやって我慢して暮らすのは私は嫌だなと思うので、今ある住宅のポテンシャルを引出しながら、最小限のエネルギーで冬を乗り越える方法を考えたいと思います。皆さんも各家庭で工夫してみて下さい!