表参道のスパイラルにてARTEKのドムスチェア展がはじまり、昨日はオープニングレセプションへと足を運んできた。今回はミナ・ペルホネンの皆川明さんとのコラボ作品も同時に発表され、トークセッションには非常に多くの方が会場に詰めかけていた。
ドムスチェアといえばフィンランドのデザイナー、イルマリ・タピオヴァーラの代表作の一つであるが、日本では一部の愛好家を除いては無名に近い椅子とも言えるかもしれない。正直言って、ぱっと見でもイームズの椅子のような洗練された印象は受けないし、むしろちょっとモサっとした印象すら受ける。好き嫌いがはっきり分かれる椅子とも言えるかもしれない。
けれども私はタピオヴァーラの椅子に強く惹かれる。フィンランドを代表する椅子はアールトではなく、タピオヴァーラではないかと思うほど。この椅子が発するオーラはフィンランドという国そのものという気がする。
いつから「北欧=おしゃれ」という構図になったのだろう。
日本のメディアの取り上げ方によって、日本での北欧の立ち位置はずいぶん変わったような気がする。北欧の中でもとりわけフィンランドに関していえば、おしゃれな国というより、素朴で、ちょっと田舎で、都会的洗練とは真逆にあるような国、というのが私の印象だ。
だから惹かれる。日本で気を張り詰めた生活をしていると、バランスを取るようについフィンランド的なものを求めてしまうのだ。
写真は私の所蔵するドムスチェア。見ての通りひどい程度のものだ。これは2001年にフィンランドから帰国する際に、フィンランド人の友人の工房にあったものをもらい受けたもの。
こんな汚い椅子どうするんだ?と訊かれたけれど、どうしても持って帰りたかった。幸い半分壊れかけていたので、バラバラにして郵便小包で送った。今でも座ることは出来ない。
フィンランドに渡ったとき、とある階段の踊り場に置かれていたのがこの椅子だった。かわいらしい椅子だと思った。当時フィンランドに強く惹かれていたから、この椅子の魅力はフィンランドという国の魅力そのものだと、その時直感的に思った。だからタピオヴァーラの椅子は、私にとって原点のようなものなのだ。
過去にはクライアントの希望もあり、「隅切りの家」という住宅にドムスチェアを入れたこともある。その強い個性は、より強い個性の家の中でこそ輝くとその時しみじみと感じた。
クセのある椅子だけに、私はクライアントにはタピオヴァーラは一切勧めない。前述のような話をしたこともない。それなのに、うちのクライアントはタピオヴァーラを選ぶ確率が高い。相当難易度の高い椅子だと思うのだけれど、クライアントの感性がそれを呑み込むのだろう。そして私のそれともその瞬間につながることになる。
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アルテック ドムス チェア展覧会
“the chair ≠ a chair” (ザ チェア イズ ノット ア チェア)
会期:2016年10月8日(土)-16日(日) 入場無料 会期中無休
時間:11:00~20:00
会場:スパイラルガーデン (スパイラル1F)
http://www.spiral.co.jp/e_schedule/detail_2050.html
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