2007年に自邸を建てた際、リビングに畳の家具を入れました。
けして広くはないリビングを広く使う工夫として、当時友人の家具デザイナー・野木村敦史さんにお願いして、座ることのできるような可変の収納家具を作って頂いたのでした。
上の写真は、当時とある取材で撮影して頂いたものですが、日常がこんなにオシャレなわけはなく、実際にはそれはもう…という状況(惨状?)で、子供がいるご家庭はどこもそうだと思いますが、我が家とてそれは例外ではありません。
そしてこれが今の状況。
畳の下はこんな風に引き出しになっていて、主に子供のおもちゃ箱になっています。この家具を作ったことは本当に大正解で、さもなくばこの大量のおもちゃはどうなっていたことか…。
そうでなくとも、上の畳奥の一角のように、ここには収まりきれないものが溢れています。一過性のものではあるかもしれませんが、子供はある時期までは自分の部屋ではなく、家族の空間の中に自分の領域を作ろうとします。これは片付けろと言ってもダメなんですね。子供にとって、そこに自分の領域があるということが重要なのでしょう。
それはさておき、この畳家具、少し掟破りな畳の使い方をしています。縁なし畳の小口をそのまま見せているのです。この処理によってデザイン的にもとてもスッキリすると同時に、子供がぶつかっても怪我をすることがありません。手触りも座り心地も良いです。野木村さんによる思慮深いデザインです。
ところが案の定というべきか、竣工してもうすぐ9年になろうかというこの時期、だいぶ畳が痛んできました。
そこで畳替えをすることにしました。
幸い畳床はとてもしっかりしたものを使ってくれていたので、ベースはそのままで、畳表だけを交換すればなんとかなりそうです。ただ野木村さんは静岡の方なので、送るにも一苦労です。そこで、自邸でお世話になった堀尾建設さんに相談することにしました。
畳屋さんも気を利かせて、いろんな畳表を持ってきてくれました。
実にいろんな畳があるんですね。ふだん畳表単体で手に取ることはほとんどないので、とても興味深く勉強になりました。
たとえばこれは「市松表」
い草の根と穂の部位を交互に折り込むことで、このような不思議なパターンが浮かび上がります。当初のこの畳家具に使われていた畳表は、この市松表でした。
次にこれは「目積(めせき)表」
目が詰まった繊細な表情になります。縁なし畳の定番かもしれません。
そしてこれは「琉球表」
いわゆる琉球畳といわれるもので、い草の断面が三角形の形をしていてとても強いのが特徴です(産地は大分だそうです)。表情もゴワゴワしていて、いかにも”南国”な感じが出ています。
今回は強度を持たせたいと思っていたので、この琉球畳にはとても惹かれました。風合いも好みで、空間にも変化が出そうです。ただ、散々迷って決めたのはこちらでした。
いわゆる「和紙表」というやつですね。うちの住宅でも定番としているものです。
琉球表はやはりその「ゴワゴワ感」がネックでした。端部をちゃんときれいに織り込めるか。普通の畳と違って端部が見えるので、ここに固定針を使えないことなどに不安がありました。あとちょっと値段も高かったですね・・。
和紙表はとても強度が強いのが特徴です。強度はい草の3倍くらいあるのではないでしょうか。しかも安価です。
実際この畳家具は、普段はこの上にたくさん物が置かれてしまっていて、表が見えることがあまりないのです…。なので子供が成人するまでは、実用重視でいくことにしました。
ようやく畳が出来上がり、運び込まれてきました。
すっかり見違えるようになりました!端部もこの通り。
今回畳交換に協力して下さいました堀尾建設さんと、その畳屋さんに感謝です。また、相談に乗って下さいました野木村さんもありがとうございました。家具をこうして経年と共に手を入れてゆくと、益々愛着がわいてきますね。
なにより、この畳家具は我が家のトレードマーク!
これからもまだまだ現役でリビングの中心にあり続けることでしょう。
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