さて「タニタプロジェクト」と称したこのブログのシリーズも、ついにPart3に突入です。

2013年に竣工した「しだれ桜の家」にもくさり樋を設けていたのですが、先の「竹林の家」同様ダイヤクロス型のくさり樋を設けていたため、雨が降る度に飛沫が飛び散り、玄関扉やポーチをびしょ濡れにするという問題が起こっていました。


当時はくさり樋といえば、純和風のものか、モダンなものだと今回使用したダイヤクロス型などが主流で、雨がちゃんと落ちるかなんて考えるまでもなく大丈夫だろうと考えていたのですが、甘かったですね。

こちらを先月発売となったタニタハウジングウェアの新型くさり樋ensuiに交換したい、ということで、本プロジェクトは「既存の半丸たて樋に取り付いた既存くさり樋を、ensuiに交換するためにはどうしたら良いか?」を考える試みとなります。


すでに「竹林の家」の交換事例は先に書かせて頂きました。今回も同じように軒樋ごと交換するという方法もあるのですが、一般事例に置き換えれば、職人さんの手間を考えると、おそらくはパーツの材料費以上に割高な工事費になるに違いありません。

今回はこちらを視野に入れ、軒樋はそのままで既存のラッパを交換するだけで簡単にくさり樋が交換ができるよう、専用のラッパ型アタッチメントを特注で作って頂きました。

はたして、これを使えば素人でも簡単に付け替えができるはず。今回それを実証すべく、我々リオタデザイン(私+スタッフ)だけで付け替え作業に向かいました。


まずこれが、既存のダイヤ型くさり樋です。

ご覧のように根元に通常のラッパを使用しているため、ここで水が広がってしまい、くさり樋にうまく水が集まってくれません。


そこで取り出したのがこちら(ジャジャーン!)

タニタハウジングウェアの担当者(岡田&関口ペア)にお願いして作って頂いた特注アタッチメントです。これ、何が違うかというと



左が通常のラッパ、右側が今回特注のラッパになるのですが、ご覧の通り、落とし口の部分がキュッとすぼまっているのがわかると思います。

お茶を飲むとき、普通は口をすぼめて呑みますよね。口を開いて呑んだら口の端からこぼれてしまいます。つまりこの現象を改善したアタッチメントということになります。


早速交換しました。
ラッパは上部の板を折り曲げて軒樋に引っかけてあるだけなので、工具を使わずとも簡単に付け替えができました。交換に要した時間はわずか20~30分ほどでしょうか。

クライアントにも、もう終わったんですか?と驚かれてしまいました。



外から見ても、最初からそうだったんじゃないかというくらい馴染んでいます。製品コンセプトである「建物と寄り添うデザイン」という思想が、ここでも有効に生きていると感じました。

きっと我々の過去の住宅と同様に、既存のくさり樋の不具合で困っている設計者や建て主さんはたくさんいらっしゃると思うんですよね。あるいは、現在はたて樋を付けているけれど、鬱陶しいから軽やかなくさり樋に替えたいという方もいらっしゃるかもしれません。

現在の軒樋を交換しないでラッパだけで交換できるようになれば、助かる方や喜ぶ方もきっと多くいることでしょう。

で、もうひとつ気づきました。


こちらは先日新築で取り付けた事例なのですが、新築時は軒樋に開ける穴を調整できるのでこのアタッチメントを使わなくても、ダイレクトに取り付けることが可能です。

でも写真のように、近くでよく見ると軒樋の穴位置によっては、板金の”バリ”が見えてしまい少し気になるかもしれません。(担当者曰く、半丸軒樋に直接取り付ける場合は、”バリ”が見えないよう穴を開ける位置にコツがあるそうですが)


その点このくさり樋用のラッパを使うと、この部分が見えないばかりか、形もスッキリさせられるという利点があるような気がします。


ここまで書いてきてなんなのですが、このくさり樋用のラッパアタッチメントは今回特別に作って頂いたもので、まだ製品化はしていないそうです。

担当者としても、今回のような事例用として近い将来にはラインナップに加えたいとのことでしたが、私としては是非前向きに検討して頂きたいと思っています。

同じ思いの方がもしいらっしゃいましたら、設計者の声として是非届けて頂けたらと思います笑。きっとメーカーの開発を後押しするのは、そういう声の集積だと思いますので。

ともあれ、今回も多大なご協力を頂きましたタニタハウジングウェアの岡田さん、関口さんには、この場をお借りして深く御礼申し上げます。

またクライアントのMさん、長らくご不便をおかけしました!
こちらもしばし様子を見てお使い頂けたらと思います。