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sekimoto

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> 思うこと



以前、新潟の建具屋さんのことを書きました。

先日現場に行くと、建具が吊り込まれた後でした。でも見た瞬間「あ、違う」と思いました。違うといっても間違っているという意味ではありません。明らかに仕事の質が違うと思ったのです。

うちの建具はいつも同じようなデザインです。もうここ何年も大きな変化はなしです。現状でとてもうまくいっているので、大きく変える必要はないと思っているからです。

ところが小さな変更は毎回のように行っています。それはきっと、よほどのリオタウォッチャーでも気づかないくらいの微差の部分です。現場の建具屋さんによっても変えます。打合わせをしていて、製作にあたっての積極的な提案を出してくれれば、それで進めてもらうことも少なくありません。

それでうまくいかなかったら元に戻します。うまくいけば、バージョンがまたひとつ進みます。Ver.3.5くらいから、3.6に進んだり、あるいは3.51くらいのときもあります。


そうすると、どんどん完成度が上がってゆくのです。完成度はある日突然上がるものではありません。たまに突然変異のように進化することもありますが、毎回ではありません。

自分で言うのはおこがましいかもしれませんが、リオタデザインはすでにそれなりの完成度を手に入れてしまいました。それでも進化することをやめません。進化するためには、毎回辛抱強く同じ事を繰り返すことが何より大切だと私は思っています。


リオタデザインの住宅には派手さはありません。そこにあるのは、あたりまえの住宅です。ある人には退屈かもしれません。革新はありません。あるのはただ日常です。

話を冒頭にもどしますと、そんないつもと変わらぬ建具を見て、私は「あ、違う」と思いました。これはとても珍しいことなのです。私は、卓越した技術を持つ者だけが越えられる一線を見たような気がしました。

そしてこう思いました。これなんだと。
我々が目指してゆきたい仕事とは、こういうことなのです。それは日常の中にしか見いだせないものです。

いつもと変わらぬシナベニヤの建具に、私はとても勇気をもらったような気がします。