とうとうエンブレムが白紙になってしまった。
この件を巡っては先にも書いたし、今もなお言いたいことはいろいろあるけれど、今はただ佐野氏からの声明を読み、同じ創作に関わる身として、またスタッフや家族を持つ身として、そして人として、私は佐野氏に心から同情する。
今朝の朝日新聞における加島卓氏(東海大准教授)のコメントに、すごくストンと落ちるものがあったのでご紹介したい。
「(前略)専門家によるデザインで満足するより、ゆるキャラのように、隙のあるデザインを応援しながら育てて楽しむのがネットの発達した今の市民参加型社会」
実は昨日もスタッフに話していた。こうなったら、もう「ゆるキャラ」しかないのではないかと。
加島氏の言うように、今の社会は確実に「市民参加型社会」になっていると思う。かつては、「デザインや建築のことは一般の人はわからないだろうから、専門家が決めてそれを発表すればいい」というのが通例だった。今回もそれを踏襲している。いわば「大本営発表型社会」である。
しかしどうだろうか。ここまで情報を同時に共有できる世の中になると、情報が得られない”ブラックボックス”である状態が、社会的不安や不快感を引き起こしてしまう。
安保法案だってそうだ。主権は国民にあるはずなのに、決定はブラックボックス(国会)の中にある。「というわけで決まりました」という大本営発表をそのまま受け入れられる時代ではないということを、政治家も気づいていない。
そして、それは建築やデザインだって同じなのだ。
お笑いのチャンピオンを決める番組で、会場の審査員とは別に”お茶の間審査員”と称して、視聴者が自由に面白かったと思える芸人に票を入れることができるシステムがある。地デジならではの双方向の情報共有化がなせる業であるが、いわばそれである。
会場の審査員は”専門家”であるので、一般の人ではわからない細かい技術的なことを審査すれば良い。もちろんそこには、審査員から見た「面白い/つまらない」という指標もあるだろうが、審査員が笑っていなくたって、お茶の間が笑っていればそこにはお笑いは成立しているのだ。
今回社会が言っているのはそういうことなんだと思う。
それが美しいかどうか、優れた案かどうか、使いたい!と思えるかどうか、そんなの使う人が決めれば良い。専門家から見て、少々デザイン的に詰めが甘かったり、展開性に欠けていたりしても、みんなで決めたものであればそれでいいんじゃないか。
それが「ゆるキャラの時代」なのだ。
この時代、くまモンやふなっしーを越える”エンブレム”はあるだろうか。お茶の間の誰からも愛され、テレビにも引っ張りだこのアイコン。展開性という意味では、今回のエンブレムを越える展開性である。なんてったって、足が生えて歩いているのだから!しかもふなっしーはしゃべるのだ。
あれがデザインだって?冗談じゃない!
まあまあ、そう怒らないで。
じゃあ、佐野氏の後にどんなエンブレムがイイと思う?ザハの後にどんな競技場があると思う?その案出した人、超バッシングされると思うけどわかってる?耐えられる?そんな勇気ある?
我々の住宅設計も同じなのだ。昔のように、寒くても暑くてもいいから安藤忠雄先生の家に住みたい!という時代ではない。
たとえ、そのことで多少デザインが丸くなることがあったとしても、設計のコンセプトが多少ぶれることがあったとしても、みんなで決めたことがこの時代には相応しいアイコンなのだ。
なにあの窓?笑、とか、この屋根おもしろーい笑、という具合に、末尾に「笑」が付くようなもの。「笑」は共感のサインである。優れた建築やデザインは今や総”ゆるキャラ化”していると言っても過言ではない。証拠に、佐野氏がブレイクした代表作にはauのLISMOもあるのだ。
で、ここからは私の提言。
新しいエンブレムは公募で選ぶらしい。であるならば、膨大に集まった応募案を1次選考でふるいにかけ、100作前後をネットに公開すべきである。
そこには自由に市民がコメントを書き込んだり「いいね!」したりして、人気を見える化したら良い。でもネット上では意見が偏るし、操作も入るからそれは審査には加点しない。ただ世論として共有すれば良い。
次の二次選考では専門の審査員が自分の意見と世論との間でバランスを取り、5作品程度を最終選考に残す。この時点では「2ちゃんねる審査員」が徹底して類似案がないかをググって検証する。
最後の5作品から1作品を選ぶ過程は、テレビで生中継である。もちろん会場の人や、お茶の間審査員も投票できる。実況は松岡修造だろう。デザイナーが思いの丈をプレゼンし、いよいよCMをはさんで発表!
発表は、そうだな、東京オリンピック開催を「TOKYO 2020」と書いた札で表現した、あの外国人が良いだろう。抱き合って喜ぶ滝川クリステル。
絵が浮かぶようだ。
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