友人事務所・佐藤布施建築事務所のオープンハウスに行ってきました。たびたびブログにも書いていますが、主宰者のひとり布施木綿子さんは大学の同級生にして、私の大切な友人の一人でもあります。

竣工すれば必ずオープンハウスを行う私とは異なり、彼女達はある時期までほとんどその仕事を見せてはくれませんでした。

「たまには見せてよ」と請う私に、いつも「見せられるようなものではない」なんて謙遜しながら、しかしたまに気まぐれに見せてくれる住宅はどれも素晴らしい出来栄えで、これは私を効果的にヘコませるにはこの上ない手段となっていました。きっと作戦だったのでしょう。

そんな彼女から、珍しく意気込んだ内覧会のお知らせが届きました。

受けるかもしれない批評に保険をかけているのか、いつもは控えめな説明文に対して、今回はどうも自信があるのか、”いいものが出来た”という感触が案内文からも伝わってきます。

しかも・・
聞くところによると、このお施主さんは(なぜか)私のブログのファンで、いつもチェックして下さっているとのこと。これはしかと見届けなくては!と、こちらも意気込んで出かけていったのでした。

(と、これを読んでいるお施主さんはすでにドキドキしていることでしょう。さあ、辛口にいきますよ!?)


いきなりアプローチの洗礼。これはまごう事なき湊さんの仕事ですね。

これもうちのブログではネタの常連となっている造園家の湊さん(ストライカー)ですが、もとはといえば、佐藤布施事務所の造園があまりに素晴らしかったので、10年ほど前に紹介して頂いたという経緯があったのでした。

さすが猛獣使い、もとい湊使いの元締めだけあって、湊さんの使い方が実に上手い!湊さんはうまく手綱を握って予算を確保してあげると、惚れ惚れするような仕事をするのです。この分だと中の庭はさぞかし・・。そんな予感を感じさせるには十分なアプローチです。

早速中に入ってみましょう。


いやもう圧巻の一言でした。

彼女たちが意図した”はなれ”という構成、そして外部と内部を一体に結びつける精緻な外構。吹き抜ける爽やかな風と光にも唸らされました。丁寧な素材使いやディテールワークもまた、それらを魅力的に引き立てています。



庭を挟んで向こうに見えるのは、六角屋根を持つ音楽堂(はなれ)。

敷地に多少余裕があるとはいえ、40坪強の敷地に”はなれ”を計画する。その発想は私にはないかもしれません。しかも左官外壁の母屋に対して、はなれの外壁はレッドシダーのシングル葺き。しかも屋根は六角形!



何一つとして論理的には説明がつかないことばかりなんです。
でもココ、ココが重要なんです!(はいここテストに出まーす)

この大胆さに私はいつも脱帽してしまうのです。
どうしてあっちとこっちがくっついて、こっちとあっちが離れるのか、私にはまったく理解出来ないのですが、結果的に本当に素晴らしい空間になっているのです。これが布施マジックなんだなあ。私にはない異次元の才を感じます。


このキッチン前の仕上げはわかりますか?これはブラックミラーなんだそうです。
キッチンの前にミラー…これも凡人にはわかりませんね?

これは壁に向き合っていても後ろの家族の様子がわかる、そして同時に緑も視界に捉えるという、とっても合理的な理由に基づくものなのだそうです。お兄さん、ここでも一本取られました。(これはパクろう 参考にしよう!)


とまあ、茶化すのはこの辺にしておいて。

いや本当に素晴らしい住宅でした。
私は建築家には、大きく分けて二タイプあると思うんですね。ひとつは理念や概念的なものを規範に作る人(左脳的)、もう一つは五感や触覚的なものを規範に作る人(右脳的)。

私は佐藤布施さん達の仕事は、どちらかというと後者の作り方のように思えます。それがどういうものであるか、それを言葉に置き換えると、光や風、土や緑といったものになるのでしょうが、私には違和感が残ります。彼らの意図や設計は、そんな陳腐な言葉に単純に置き換えられるようなものではないからです。

言語化できない領域こそに、空間の本質は備わるのかもしれませんね。そのくらいこの空間は気持ちが良かった。写真ではその魅力の半分も伝わらないでしょう。そこがまたもどかしいところです。

今日はいいものを見せて頂きました。どうもありがとう!


「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ」
そんな言葉が頭から離れない今日このごろ。家に帰ってブログとしたしむ。