15. 05 / 16

ジーザス!

author
sekimoto

category
> 生活


ソフトクリームくださぁい

お昼コンビニのレジに並んでいると、一人のおじいちゃんがレジにやってきた。あぁ、おじいちゃんそこクローズしてるレジだから。こっちに並ばないと!でもおじいちゃんは気づいていない。

ふぁぁ、ソフトクリームくださぁい

「並んで下さい!」
列のできている私のレジの店員はテンパりながら、そう冷たく言い放った。

ふぁぁ、並んでんのかよぉ

そこでおじいちゃんもようやく列に並び始めた。
その後クローズしたレジも開かれ、列が動き始めた。私のお弁当がレンジにかけられると、ようやく隣のレジに先のおじいちゃんが辿り着いた。

ふぁぁ、ソフトクリームくださぁい

「味は何になさいますか?」

若い女性店員がそう尋ねると、おじいちゃんがフリーズしたのがわかった。
味?そう、きっとおじいちゃんはソフトクリームといえばバニラなのに違いなかった。けれども、その若い女性店員は容赦なかった。

「味は何になさいますか?」

気持ちイラッとしている。お姉さん察してあげなよ。バニラだよ、きっと。

隣のレジでちょっとドキドキしながらやりとりを聞いていると、ようやくおじいちゃん何を聞かれているのか理解したようだ。しかし追い詰められてテンパったのか、私の予測を裏切り”ミックス”を頼んだ。たぶん、たまたまその文字と目が合ってしまったのだろう。

しかし、その後も非情なお姉さんの攻撃はやまない。
「カップとコーンどちらになさいますか?」

かっぷとこーん??・・・

「カップとコーンどちらになさいますか?」

明らかにイラッとしてる。
あぁ、お姉さん無理だよ。黙ってコーンでいいんじゃない?おじいちゃん、ソフトクリームが食べたいだけなんだよきっと。

ふぁぁ、どっちでもいいやぁ

なかば投げやりにおじいちゃんがそう答えると、次のひと言が店に響き渡った。

「どっちか決めて下さい!」

えええっ!?
なにこの緊張感。もう店にいる客は全員このやりとりから目が離せない。手に汗握る展開。そして次のおじいちゃんから発せられる言葉を、皆祈るような気持ちで待っている。ほら、おじいちゃん、コーンコーン。全部食べられるやつ。

じゃぁ・・えっと・・全部食べられるやつで

ジーザス!

店中の客の願いが通じた瞬間、ふたたび時間が動き出したっていう、そんなお話。それにしても、おじいちゃんもチャレンジャーだけど、ちょっと可愛いかったなあ。

あのコンビニはもう行くのやめよう。