15. 03 / 05

置いてきぼり

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sekimoto

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> 生活


去年のちょうど今頃、津田ホールで建築家の内藤廣さんの講演会があった。人気の高い講演会で、スタッフ全員で申し込んだところ一人だけ抽選に外れた者がいた。新人の山口くんだった。彼とは現場で別れて、彼以外の全員で講演会に出かけた。

そして今年も津田ホールで内藤廣さんの講演会があった。今年も抽選らしい。山口くんが現場帰りに漏らす。「いよいよ来週ですね」なにが?「講演会の当選がわかるの」そうか、彼は今年こそは置いてきぼりを食らうまいと思っているのだ。

翌週当選が届いた。私と、山口くんに。他のスタッフはどうやら去年行ったから今年は応募しなかったらしい。そうか、だから山口くんにもくじ運が回ってきたのかもしれない。

今日はちょうど彼と現場に行く日。今年は現場終わりにも別れることなく、そのあとハシゴして一緒に講演会に出かけた。山口くんと二人で講演会。なんだか風邪ひいてお留守番していた可哀想な末っ子を連れて、一緒に映画館に来たような気分だ。

そういえば20年ほど前、僕が山口くんくらいの時、建築会館に内藤廣さんの講演会を聴きに行ったことがあった。所長に講演会があるから早めに上がらせてもらいたいと言ったら、過去にそんなスタッフはいなかったのか、ちょっと嫌な顔をされた。そんなことを思い出した。20年越しで、まだ私は内藤廣さんの講演会に通っているのだな。隣にスタッフを連れて。