14. 09 / 02

建築という幻想

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sekimoto

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> 思うこと


正しい人になりたいと思う.完璧になりたい.そういう幻想がある.
もしかしたら,建築をやっている人はそういう幻想を持つ人が多いのではないか.

私は言うまでもなく不完全な人間だ.でも私は建築に理想を求める.私の頭の中では建築は完璧であり続ける.それを図面という手段で表現しようと試みる.

ところが,ひとたびそれが現場に入るとそれはどんどん崩れる.完璧だと思っていた図面は,実は穴だらけだったという事実を突きつけられる.

設計が完璧でないのだから,施工が完璧であるわけがない.観念の中の建築は,素材とのせめぎ合いに敗れ,人間の不注意に泣かされ,怠慢に怒り,時に努力や熱意に救われながらも,満身創痍で胴体着陸を試みる.

それはもはや理想郷ではなく,あるのは現実のみ.建築は聖から俗に変わる.神様は人間になる.私が建築の最後に見る光景はいつもそうだ.

でも建築は神殿ではない.それが住宅であれば埃一つ落とさず,物音一つ立てずには暮らせないのだ.だから建築は俗なくらいでちょうど良い.わかっている.わかっているのだけれど・・.

私はそこに聖なるものを作りたいという幻想から逃れられない.理想主義者の考える理想郷.それが建築なのかもしれない.そう考えると,なんと業深い仕事であろうかと思う.