ギャラリー間で開催されている,建築家内藤廣さんの展覧会にようやく足を運ぶことができました.私は大学時代内藤さんの事務所に面接に行ったことがあるくらい氏の建築を敬愛してやまないのですが,今回の展覧会もとても素晴らしかったです.
内藤廣展 アタマの現場
http://www.toto.co.jp/gallerma/ex140118/index.htm
今回の展覧会は「アタマの現場」と名付けられているように,今回の展覧会のために作られた模型などではなく,内藤事務所にあるスタディ模型や図面の数々を,事務所の内部をそっくり再現してお見せするという趣向のようで,内藤さんのデスクまわりも実物を運び込んで忠実に再現されていました(現に,現在内藤さんの机は事務所にないそうです・・).
私がもっとも感銘を覚えたのは,その図面です.前述のように展覧会のために特別に描かれたものではなく,実施図面が素っ気なく置いてあるだけなのですが,その密度と精度,そして美しさに脱帽しました.私の事務所も比較的図面を詳細に描く方ですが,我々の何十倍も大規模な建築であるにも関わらず,細部に至るまで実によく考えられているのです。
また驚いたのは仕様書で,例えばコンクリート打放し仕上げなら,我々なら図面にその旨の記載と打放し型枠の使用,撥水剤の指定くらいで,あとは現場監督や職人さんと相談しながら進めてゆくというのが通常なのですが,内藤事務所の図面には詳細な型枠の組み方,目違いを防ぐための方法,端部の処理,万が一失敗した際の処置の仕方に至るまで,図解入りですべて記載してありました.(撮影が許可されていたので産業スパイのように大量に撮ってきてしまいました.これ出版してもらえませんかね?)
内藤さんの建築はとてもシンプルで美しく,出来上がった後にはその手の痕跡が見えることはありません.ただ我々にはわかります.こんな涼しく建築が作れるはずがないんです.そのナゾがひとつ明かされました.この綿密に計算され尽くした図面,蓄積されたノウハウ,わかりやすい指示書がそのすべてを物語っていました.やっぱりすごいな,内藤さんは.うちもバリバリ図面描かないと!
年表を見たら,内藤さんは30代の頃は意外にも佳作で,40代から爆発したように大きな仕事を次々手がけていったことがわかりました.私も大いに励まされて会場を後にしたのでした.
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