14. 01 / 06

掘る男

author
sekimoto

category
> 旅行



新年あけましておめでとうございます.
今日が仕事始めとなります.本年もどうか変わらぬお付き合いをお願い致します.

昨日宮古島から帰ってきました.昨年のお正月は石垣島に行ったので,二年続けての沖縄旅行です.寒いときに暖かいところに行くというのは,とにかく穏やかに開放的な気分になれます.避暑ならぬ避寒といったところでしょうか.

この時期の宮古島は雨期というか,とにかく晴れることがとても少ない時期です.空はどんよりと,それでも気温は20度くらいあるので寒くはありません.さすがに泳げるような気候ではないので,小さい島の中をドライブしたり,いくつかある海岸や展望台のような場所を巡るような滞在でした.

ちょっと気の毒だったのは子どもで,我々に車で連れ回されながら終始つまらなそうにしています.移動中も景色を眺めるわけでもなく,ずっと手持ちのゲームに没頭しています.土をこねるのは好きだろうと思って,陶芸体験のようなところにも連れて行ったのですが,なんとなくふてくされています.でも正面切ってつまらないと言うでもなく,とにかく無気力なのです.

昔は家族旅行というと,子どもに手がかかって仕方がないものでした.お店では走り回るし,ベッドでは飛び跳ねていたものです.それが今では大人しくホテルでもお店でもゲームばかりしている.ああ,なんだか限界だなあ.子どもにとって,もはや家族旅行は特別楽しいものではないという時期に差しかかってきているのかもしれません.寂しいことですが.

最終日を残した晩,食事をしながら子どもに「明日は何をしたい?」と訊いてみました.その時は「べつに」と答えていましたが,夜寝る前になって,急に思い出したように「明日は海で遊びたい」とはじめて自分の希望を伝えてきました.

それならと次の日はひたすら海で遊ばせることに.とはいっても,海岸には誰もいないし,泳ぐこともできない.そんなところでうちの子は何をしていたかというと,ひたすらに砂を掘っていました.砂を掘って,何かを作っては次の瞬間には壊して,を繰り返しているのでした.あちこちで,もう飽きずに何時間も.

思えばうちの子が外で何時間も遊んでいること自体,久しぶりのような気がします.昔は喜んでついてきたサッカーも,最近では誘っても乗ってきません.そんな風になって久しいのです.それが自然の中で何時間も実に楽しそうに遊んでいる.

そして急に無邪気な声をかけられました.「ねえお父さん,一緒に山つくろう!」
子どもと一緒に砂遊びをするなんて,それこそ何年ぶりでしょうか.なんだか遠い昔に引き戻されたような気分です.

そうか.自然は自由だから楽しいんですね.大人はどうしても型にはまった遊びをしようとします.海ならシュノーケリング,眺めを見るならあの岬,夜はあのお店で,という具合に.子どもにとっては,陶芸教室のお決まりのお題より,何もない砂浜の方が100倍も楽しく創造力をかきたてられる場所なのかもしれません.

かくして,大人にとっては退屈だった何もしない数時間は,子どもにとってはこの旅行で最高に楽しかったひとときとなったのでした.

うちの子は今10歳で4年生です.ちょっと大人びたところのある子どもです.この調子だと親離れは思いのほか早く来るかもしれません.中学生になったら,もう親と一緒にはお正月も過ごさなくなるかもしれません.

お正月の家族旅行も,もしかしたらあと行けても2回くらい?そう考えると愕然とします.子どもの成長を見守りながら,親は少しずつ”その時”が来る覚悟をしないといけないのかもしれませんね.

まあとりあえず,来年はどこ行こうか?
そう考えてこの一年を過ごすこととします.