今日は「隅切りの家」の引渡し,ならびにオープンハウスがありました.

施主のTさんはこれまでのうちのオープンハウスにはほぼすべて見に来て下さっているのですが,これは施主検査の時からおっしゃっているのですが,「オープンハウスに見に来ているみたい.自分たちがここに住めるなんて信じられない」と,いつまでたってもフワフワした気持ちとのことでした.

このT邸設計~施工にあたっては実にいろんなことがありました.もちろんすべての家づくりでいろんなことが起こるわけですが,計画の困難さに比べて,ご本人達の実にのほほんと大らかに構えて下さる心意気や人柄が,我々のすべてを乗り越える原動力になっていたような気がします.その笑顔に我々がどれだけ救われてきたことか.

ただ最後の打ち上げでは,そのたびに家では真っ青になったり,暗くなったりしていたと笑いながら話して下さいました.あとで笑って話せるとはまさにこのことですね.でもそんなことをおくびにも出さずに人に接することが出来るというのは,なかなかできることではありません.

今回もかなりのローコストだったこともあり,仕様はギリギリまで切り詰めていますが,いらした方にコストをお話しすると,皆さん目を丸くして驚かれていました.そうは見えないということなのでしょう.それこそが我々の真骨頂なわけですが,作り手である工務店さんにはずいぶんご苦労をおかけしてしまいました.(技拓工房さん,最後までありがとうございました!)

そしていつも頂く感想に加えて,今回はいらした同業の建築家たちからの評価がとても高かったのも嬉しかったことです.建築的にもある程度やりきることが出来たのかなと手応えを感じたりもしました.今回の限界的なコストの中,構造家の山田憲明さんが示して下さった鮮やかな構造的解決も,我々に夢を見せて下さいました.

このように実に色んな人が,それぞれの立場で,プロ意識をせめぎ合わせながら作ってゆく,それが我々の家づくりです.これからも住まい手だけでなく,通りを歩く人達がふと足を止めてわくわくして下さる,そんな住宅を作ってゆきたいと思います.いらして下さった皆様,誠にありがとうございました.