
先週引き渡したばかりの「西荻の家」に、完成したばかりの表札を取り付けるためにお邪魔してきた。うちにはオリジナルの表札デザインがあって、ほとんどの場合こちらで製作させて頂くことが多い。
無事取付も終わり、そのまま失礼させて頂いた・・はずもなく、あたかもそっちが目的であったかのように、大きなダイニングテーブルを囲んでTさんご夫婦との歓談が始まった。
お茶の後に出されたコーヒーカップは、カイ・フランクのTEEMAだった。
カイ・フランク。フィンランドデザインの良心と呼ばれ、私が最も敬愛して止まないデザイナーの一人。私にとってカイ・フランクはフィンランドデザインそのものであるし、TEEMAは私にとって特別な意味を持つデザインでもある。
TEEMAの持つ慎ましさが好きだ。巨匠と呼ばれるデザイナーがデザインしているというのに、全然威張ってない。せめてお名前だけでも、という言葉を背中でおきざりにするような佇まい。機能的で無駄がない。ここにはデザインに必要なすべてがある。
私は”ドヤ”のあるデザインが好きではない。そんなのは血気盛んな学生が学校の課題でやればいい。デザインというのは、使う人と共にあり、人に寄り添うものであるべきだ。
では主張がないものが良いのかといえばそうではない。口数は少なくとも確かな存在感を放つもの。そこにあるだけで空間の秩序が結ばれ、人の暮らしを豊かに、より高い次元へと導いてくれるもの。
カイ・フランクのデザインにはそれがある。
Tさんは竣工した住宅で使うカップにカイ・フランクを選んでくれたのだなあ。そう思ったらとても感慨深かった。そんな話をしたらTさんが一言。
「でも最初にお会いしたとき、カイ・フランクみたいな家がいいんだって、関本さん言ってましたよね?」
ええっ言いました?そんなこと。
・・・言ったかもしれない。忘れてたけど。
そうか。カイ・フランクみたいな家になったんだ。
カイ・フランクが似合う家になってくれて、本当に良かった。
