現在大手メディアが報じない社会問題とも言うべき問題が、建築業界を覆っている。その一つが職人さんの人手不足の問題。これは本当に深刻で、大工はもとより左官や鳶、ほぼすべての職種が足りていないという現状がある。
私の知る工務店の方は「仕事はあるし、見積もりを出せば取ることもできる。しかし職人がいないから請けることができない」という深刻な悩みを抱えている。この流れが進むと、本当に地域の工務店にとっては死活問題となるし、家づくりは益々職人がいなくてもできる工法へのシフトが進むだろう。建具もお風呂もキッチンも、すべて既製品のユニットを入れればできあがるという具合に。
これはそういうものを望まない建て主にとっても死活問題になるはずだ。そして何より、地域の工務店は大手ハウスメーカーとの違いを打ち出すことが難しくなってくる。これは工務店にとっては大きな危機である。
では我々はどうか。もちろん、我々にとっても上記の問題は大きな脅威であることは間違いないけれど、我々はそれと同じくらい大きな問題に直面している。現在、住宅の省エネルギー基準を見直す動きがある。
http://lowenergy.jsbc.or.jp/top/resource/house_slide1.pdf
非住宅や、住宅でも大規模な集合住宅などでは既にこれは義務化となっている。そして最後の砦となる、300m2未満の小規模住宅でも、2020年までに義務化されることになっている。
しかしこれを聞いても、一般の方はピンとこないかもしれない。
でもそれって省エネになるんでしょ?断熱性能が高まるってことでしょ?良いことじゃないの?
はい、ある意味良いことです。
でも私から言わせれば、我々がテリトリーとする首都圏地区に関しては今のままで十分なんです。現在も「次世代省エネルギー基準」というのがあって、うちの事務所でも”ほぼ”これに準拠して断熱性能を決めています。
これを守るととても暖かい家になります。入居したお施主さん、皆さん暖かい暖かいと言ってくれます。日中は陽だまりのようになります。でも冷え込む日には多少不満もあるでしょう。冬でも半袖で過ごせる北欧住宅とまではいきません。これが私が思う「十分」の意味です。
でも”ほぼ”と書きました。それはそれを守らないところがあるという意味です。例えば製作で木製建具を作ることがあります。テラスに全開放するような大型建具って憧れますよね。でも気密は良くないです。
あるいは玄関扉と言えば、やっぱり木ですよね。味わい深くて愛おしい家の顔になります。でも断熱等級はないです。モヘヤやその他で気密は取りますが、木は反るので徹底はできません。だから隙間風は勘弁してね、と言います。いいじゃないですか。時にちょっとした隙間風なんかより人の暮らしを豊かにしてくれることはあるはずなんです。
ところがこれ以上の断熱・気密の動きに社会が傾くと、こういったことすらできなくなる恐れがあるのです。
家を包む表皮の性能が問題になりますので、建築家住宅によくあるような、大きなガラスのファサードなんかも制約を受けるでしょうね。窓は小さく小さく、なるべく熱を逃がさないように作らなくてはならなくなります。
今ハウスメーカーなどが言っているゼロエネルギーハウスなんていうのは、その最たるものです。サランラップか魔法瓶の中で暮らすようなものです。私は反対です。そんな家、息苦しいと思います。
私は思うのです。省エネは社会全体の動きとしては必然だと思います。断熱・気密、大いに結構だと思います。でも強制はしないで頂きたい。私が設計する家だって、相当断熱と気密にはこだわってますが、前述のように意識的に徹底はしないようにしています。それは人間が持つ本質的な”ゆるさ”を家もまた併せ持つべきだと思うからです。
またそれは本来、建て主が選択すべきものです。お上が決める問題じゃありません。非住宅や、住宅でも集合住宅のように不特定多数の方が使うような建築は、高い基準でその性能は決められるべきかもしれません。しかし特定される個人の方が、個人資産で建てる家には、その自由は許されても良いのではないでしょうか。
誤解のないように言うと、断熱性能なんてなくても良いと言っているのではありません。その逆です。そうではなくて、それを勝手な解釈で押しつけないでくれと言いたいのです。いいじゃないですか、建て主が開放的な生活を望まれるのであれば。
煙草と同じです。禁煙のお店が増えて肩身が狭くなるのは仕方ないと思いますが、だからといって法律で禁止すべきではないと思うのです。(※ちなみに、改正法で木製建具が一律に禁止されるということではありません。誤解のないように。ただベクトルは益々時代と逆行してゆくということに危機感を感じるのです)
職人不足は工務店を殺す。
やみくもな法規制は設計事務所を殺す。
我々から自由な家づくりを奪わないで欲しいと思います。
私の知る工務店の方は「仕事はあるし、見積もりを出せば取ることもできる。しかし職人がいないから請けることができない」という深刻な悩みを抱えている。この流れが進むと、本当に地域の工務店にとっては死活問題となるし、家づくりは益々職人がいなくてもできる工法へのシフトが進むだろう。建具もお風呂もキッチンも、すべて既製品のユニットを入れればできあがるという具合に。
これはそういうものを望まない建て主にとっても死活問題になるはずだ。そして何より、地域の工務店は大手ハウスメーカーとの違いを打ち出すことが難しくなってくる。これは工務店にとっては大きな危機である。
では我々はどうか。もちろん、我々にとっても上記の問題は大きな脅威であることは間違いないけれど、我々はそれと同じくらい大きな問題に直面している。現在、住宅の省エネルギー基準を見直す動きがある。
http://lowenergy.jsbc.or.jp/top/resource/house_slide1.pdf
非住宅や、住宅でも大規模な集合住宅などでは既にこれは義務化となっている。そして最後の砦となる、300m2未満の小規模住宅でも、2020年までに義務化されることになっている。
しかしこれを聞いても、一般の方はピンとこないかもしれない。
でもそれって省エネになるんでしょ?断熱性能が高まるってことでしょ?良いことじゃないの?
はい、ある意味良いことです。
でも私から言わせれば、我々がテリトリーとする首都圏地区に関しては今のままで十分なんです。現在も「次世代省エネルギー基準」というのがあって、うちの事務所でも”ほぼ”これに準拠して断熱性能を決めています。
これを守るととても暖かい家になります。入居したお施主さん、皆さん暖かい暖かいと言ってくれます。日中は陽だまりのようになります。でも冷え込む日には多少不満もあるでしょう。冬でも半袖で過ごせる北欧住宅とまではいきません。これが私が思う「十分」の意味です。
でも”ほぼ”と書きました。それはそれを守らないところがあるという意味です。例えば製作で木製建具を作ることがあります。テラスに全開放するような大型建具って憧れますよね。でも気密は良くないです。
あるいは玄関扉と言えば、やっぱり木ですよね。味わい深くて愛おしい家の顔になります。でも断熱等級はないです。モヘヤやその他で気密は取りますが、木は反るので徹底はできません。だから隙間風は勘弁してね、と言います。いいじゃないですか。時にちょっとした隙間風なんかより人の暮らしを豊かにしてくれることはあるはずなんです。
ところがこれ以上の断熱・気密の動きに社会が傾くと、こういったことすらできなくなる恐れがあるのです。
家を包む表皮の性能が問題になりますので、建築家住宅によくあるような、大きなガラスのファサードなんかも制約を受けるでしょうね。窓は小さく小さく、なるべく熱を逃がさないように作らなくてはならなくなります。
今ハウスメーカーなどが言っているゼロエネルギーハウスなんていうのは、その最たるものです。サランラップか魔法瓶の中で暮らすようなものです。私は反対です。そんな家、息苦しいと思います。
私は思うのです。省エネは社会全体の動きとしては必然だと思います。断熱・気密、大いに結構だと思います。でも強制はしないで頂きたい。私が設計する家だって、相当断熱と気密にはこだわってますが、前述のように意識的に徹底はしないようにしています。それは人間が持つ本質的な”ゆるさ”を家もまた併せ持つべきだと思うからです。
またそれは本来、建て主が選択すべきものです。お上が決める問題じゃありません。非住宅や、住宅でも集合住宅のように不特定多数の方が使うような建築は、高い基準でその性能は決められるべきかもしれません。しかし特定される個人の方が、個人資産で建てる家には、その自由は許されても良いのではないでしょうか。
誤解のないように言うと、断熱性能なんてなくても良いと言っているのではありません。その逆です。そうではなくて、それを勝手な解釈で押しつけないでくれと言いたいのです。いいじゃないですか、建て主が開放的な生活を望まれるのであれば。
煙草と同じです。禁煙のお店が増えて肩身が狭くなるのは仕方ないと思いますが、だからといって法律で禁止すべきではないと思うのです。(※ちなみに、改正法で木製建具が一律に禁止されるということではありません。誤解のないように。ただベクトルは益々時代と逆行してゆくということに危機感を感じるのです)
職人不足は工務店を殺す。
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我々から自由な家づくりを奪わないで欲しいと思います。
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